姦淫の妻を愛する
[ホセア書 3:1,2,3]
主は私に言われた。「再び行って、夫に愛されていながら姦通している女を愛しなさい。ちょうど、ほかの神々の方を向いて干しぶどうの菓子を愛しているイスラエルの子らを、主が愛しているように。」
それで私は、銀十五シェケルと、大麦一ホメルと大麦一レテクで彼女を買い取り、
彼女に言った。「これから長く、私のところにとどまりなさい。もう姦淫をしたり、ほかの男と通じたりしてはいけない。私も、あなたにとどまろう。」
聖書 新改訳2017©2017新日本聖書刊行会
文頭のみことばは、ホセア書の一部である。
「主(神)は私に言われた」とある"私"を示すのがホセアだ。
つまり、「神はホセアに言われた」のである。
何をホセアは言われたのか。
それは、
「再び行って、夫に愛されていながら姦通している女を愛しなさい。ちょうど、ほかの神々の方を向いて干しぶどうの菓子を愛しているイスラエルの子らを、主が愛しているように。」
と神から言われた。
今あなたの頭の中に、さまざまな感情が湧いているかもしれない。
まず、神はなんてひどくメチャクチャな命令をしているのか?
そして、干しぶどうの菓子とはなんなんだ?
このみことばの理解には、時代背景を掴むことが鍵となる。
歴史的には、紀元前722年に
ホセア書の舞台である北イスラエル国が、
当時大帝国であったアッシリアに滅ぼされる。
その北イスラエル滅亡を預言したのが、ホセアである。
ホセアの生きた時代は、
ヤロブアム2世の治世化にあったとされる。
ヤロブアムの後にまたたくまに北イスラエルの政治情況が変わり、ついに紀元前722年にアッシリヤによって北イスラエルが滅ぼされてしまうという流れだ。
したがって、ホセアは「北イスラエルのエレミヤ」とも呼ばれている。エレミヤがバビロン帝国による南ユダの滅亡を預言したのと同じように、ホセアはアッシリアにより北イスラエルが滅ぼされることを預言したからだ。
ホセア書に記されている北イスラエルの状況の一つに、かつてアハブ王が妻イゼベルによって導入したバアル崇拝が盛んだったことがある。
つまり、唯一まことの創造主なる神ではなく、作り物の神々を偶像礼拝していた。この偶像を慕っているイスラエルの民を、
神は姦淫の罪を犯している妻だと表現している。
そして、「干しのぶどう菓子」というのは、おそらくそのバアル崇拝に使われていたものだと言われている。つまり、文頭のみことばの意味としては、干しぶどう菓子を愛している、それはバアル崇拝を愛しているといった意味合いだ。
唯一なる聖書の神を信じるホセアにとってはアウェー中のアウェーである。周囲の人間は、唯一なる神を忘れてバアル崇拝やめない。あろうことか自分の妻は姦淫を犯している。
あなたならこの状況、、、耐えられるだろうか?
そんなアウェーな状況の中、さらに彼にとってチャレンジングな要求を神から受ける。
それが「姦淫の女」をめとることだった。
これは衝撃的なことだ。
「信者と不信者に同じくびきを負わせてはならない」と言われた聖なる神が、なぜ神のしもべに姦淫の女をめとるように命じることができるのか、という驚き。
しかし、神のみこころ、思いは確かに存在する。
イスラエルの国がご自分を捨てていることを姦淫の女として描くために、神はホセアに姦淫の妻をめとるという特別な使命を課したのだ。
ホセアは、単に主の命令を守るために彼女をめとったのでない。彼女を自分の妻として愛するという決断と愛情を持って行動に移したのだ。
ホセアは、彼女が自分から離れ、他の男たちを愛した事実を突きつけられ、とてつもない苦しみと嫉み、痛みと悲しみを担ったであろう。
そしてそんな女を赦し、再び愛することを決断した。
今から大切なことを書く。
これこそが、このホセアの辛く苦々しい心の葛藤こそが、神が北イスラエルに対して抱いている辛い思いなのだ。
神がホセアに姦淫の妻をめとるよう命令したのは神のお心をホセアが実体験できるようにするためだ。それによってホセアは神との個人的な交わりを体験を通して深めたであろう。
そしてこの後、ホセアの彼女に対する愛情と決断が見てとれる。姦淫の妻であるゴメルは奴隷市場で売られていた。自分の妻だが代価を払わなければ自分のものにはならない。そうして価格交渉する様子がホセア書には描かれている。
最終的に、ホセアはようやく妻を買い取ることができ、妻を取り戻すのだ。
実はこの物語、罪に売られた私たちの姿を表している。姦淫の妻は私たち人間である。
神から造られたにも関わらず、罪により私たちは堕落し、神を脇においた自己中心的な歩みをした。私たちはもともと神のものだ。対価を支払うというのは的外れなはず。けれども神は私たちを愛してやまないゆえに、ご自分の子イエスの血と命という大きな代価を支払って私たちを買い取ってくださった。ここに愛がある。
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