見出し画像

読書メモ:『食の現代社会論』

『フォーラム 人間の食 第2巻 食の現代社会論 科学と人間の狭間から』
伏木 亨編
(公財)味の素食の文化センター企画
農文協 出版
を読み終わりました。

目次の順番通りの章ごとに、簡単に読書メモを記します。
テーマが幅広く、現代のトレンドも取り入れられていたので大変勉強になりました。

なお、以下のページにこの本の紹介があります。とても興味深くわかりやすく紹介していますのでぜひご覧になってください。

読書メモ(目次の順番通りの章ごとに)

序章 科学・食・欲望

この本の構成について説明しています。
第1部「科学で見えた食の姿」は第1章から第4章、第2部「現代の食の姿」は第5章から第8章、第3部の「科学技術と食文化変容」は第9章から第12章までです。
これから読み始める内容を期待させるような文章で綴っています。

カラー企画 人類の生存戦略と料理

「動物」としての人間・・・食べ物の感知する方法をカラーページで知ることが出来ます。
霊長類の視覚の変化の3色型色覚と2色型色覚の見え方の違いをカラー写真で示しています。
当たり前で忘れていましたが、人間と他の動物の感知する方法が違うことを再認識しました。

第1章 生理学・行動学からみた人類の食

「ヒト」と、肉食動物・草食動物・雑食動物・霊長類などを様々な角度から比較しています。
何を「食べてきて」、これから何を「食べようとしているのか」を示しています。

第2章 食文化の形成とヒトの嗅覚・味覚

香りと味について、生物進化史のなかでどう変化していったのかを時間軸で考え、食文化に与えた影響について示しています。

コラム1 食品の味や匂いを測ることで個人嗜好を可視化する

味覚センサーとして株式会社インテリジェントセンサーテクノロジーの味認識装置TS-5000Zを紹介しています。世界中で活用されている装置です。
匂いセンサーとしてパナソニック株式会社と九州大学の共同研究によって開発したものを紹介しています。

第3章 言葉で表される食の感性 -テクスチャー用語を中心に

食品のテクスチャー(≒食感)の用語について示しています。

コラム2 調理と食感の科学

野菜の食感について、硬化、調味料、切り方、おろし方から示しています。

第4章 おいしさという食の文化

「おいしさ」の基準について、現代人のおいしさの変化について示しています。

コラム3 食と感覚 -食材の変化がもたらす変容

食材の変化については、お米は何が変わり続けているのかを示しています。新しい食材の出現についてはブドウを示しています。

第5章 視覚化される味覚 ー「インスタ映え」と「#ハッシュタグ」の言語/情報社会学

視覚と言語による「情報」について示しています。

コラム4 ビッグデータを用いた食行動分析と活用の実態

クックパッド社が保持するレシピ検索データというビッグデータについて述べています。

第6章 料亭にみる現代の食

料亭の主人目線で、料亭の現状と今後について示しています。

第7章 豊食と崩食の間 -甘みのある食

甘みのある食を考えることで、現代の食のプラス面とマイナス面について述べています。

第8章 食の倫理とヴィーガンの問いかけ

ヴィーガンについての説明と、ヴィーガンの先の問いとして培養肉の開発について示しています。

第9章 現代社会がもたらした調理の変容

プロの料理人の調理に焦点を当てて述べています。スチームコンベクションオーブン、エスプーマ、パコジェット、分子ガストロミーについて説明しています。

コラム5 モレキュラー・ガストロノミーがもたらしたもの

モレキュラー・ガストロミー(直訳:分子美食学)とは、調理過程における食材の物理化学的変化を分子レベルで解明し、これまで経験と勘に頼ってきた調理技法や料理技術を形式知化していく学問分野と説明されています。加えて、美食や文化、芸術といった感覚的要素が取り入れられた異分野融合領域であることが、学問分類としては歴史の長い調理科学や食品工学と大きく異なるとのことです。

カラー企画 これからの調理

フランス料理と日本料理の調理器具、最近の調理器具・機械、など現在の調理に関するカラー写真を紹介しています。

第10章 科学で管理される食の光と影

ブラックボックス化している現代の食について、HACCP、賞味期限・消費期限、栄養成分表示について述べています。

コラム6 食品市場の変化と環境認証制度の意義

水産環境認証制度について示しています。

第11章 植物資源循環を目指す次世代型牛肉生産

牛の放牧飼養、牛肉生産の戦略(代謝プログラミング)、マーケティングなど次世代型牛肉生産について示しています。

コラム7 ゲノム編集育種で何が可能になるのか

ゲノム編集、遺伝子組み換え、従来育種(変異源処理)について説明し、ゲノム編集では何が出来て何が出来ないのかを述べています。

第12章 食の生産現場(農業)の変容と持続可能性

作物生産の現場からの問題を解決するために「農学」が必要であり、最近の科学や科学技術とどう向き合うか、そして今後についてを述べています。
川喜田二郎の問題解決モデルが興味深いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?