2年1組

「昨日、裏山にUFOが落ちたらしいぜ!」
北林が大声で走り回っている。
「お前!ウソつくなよ〜」
「昨日見たんだ!じいちゃんが!
 あれは絶対UFOだって!」
「はいはい」

弁当箱の隅に残った米粒を突く。
鶏肉とブロッコリーの炒めものは
昨日の夜より美味しくなかった。
一人だと余計に周りの音がよく聞こえる、
というか、うるさい。
「そこの男子ちょっと静かに」なんていう女の子たちは
何処かで孤独を感じていたのかも。

カーテンがなびいて春風の形をつくる。
今までは感じなかった風の匂いが
とても新鮮で、とても寂しい。
隣にいたヨシコは、もう居ない。

お別れの時も泣けなかった。
いつも頭の中で
ドキュメンタリー映画を撮影している自分がいて、
客観的に自分のことを見ているからなのか、
泣くことが出来ない。
いや、言い訳だと思う。自分には感情がないんだ。
そんなことまで考えてしまう。
あたしは、あたしが、大嫌いだ。

お弁当を片付けて"いつもの場所"に行く。
美術室の奥、準備室。
ここでヨシコと2人、
好きな音楽やラジオを聴いていた。

彫刻刀で無差別に掘られた凸凹した机も
一昔前のアイドルが啓発する
「いじめ防止」のポスターも
何も変わらないのに、全部が違って見えた。

イアフォンを分け合って聴いたのは
明け方3時から放送のラジオ番組。
いつもタイムフリーで聴いていた。

ジャージャー!バーン!
オープニングジングルは口ずさめるほどだ。
「時刻は深夜3時!良い子は寝てるかーい?」
今日も快調にDJが喋り出すが、
教室に反響していた かつての笑い声は無い。

誰と聴くかで、こんなにも違うんだね。

 クリープハイプ 栞


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