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あの頃の、たましいによろしく

信じている、歌を。
歌に在る、言葉を。
ことばに宿る、魂を。


私は大学生の頃、アナウンサーを目指していた。
とにかくアナウンサーになりたくて、全国の放送局の新卒採用を受けて回る日々。
今思えば「アナウンサー」という称号が欲しかっただけなのかもしれない。
北海道から沖縄まで、募集がある全てにエントリーし面接を受けに行った。

そんなある日、すべての交通費を決済していたクレジットカードが止まる。焦りまくり。
先ず本能的に母親に連絡したのだが、直ぐにはどうすることも出来ないという回答だったと思う。

数日後には別の県での面接が控えている。焦りが極限状態の人間は一瞬だけ勇猛になれる。

「ヒッチハイクしたらええやん!」

世紀の大発明!アインシュタインみたいに舌を出して、持ってる小銭でホワイトボードを買い、「大阪まで」と掲げるも誰も止まってくれない。

そう、ここは仙台。
しかも雨風が強く、どうやら台風が来ているようだ。

黒い太文字で書いた「大阪」はいつの間にか消えていて、ホワイトボードを掲げて立つ変な人になった。

2時間ほど経ち、ようやく捕まえた一台の軽トラ。

「面白そうだから乗せてやる」

その優しさに半泣きになっていると、カーステレオが賑やかに歌う。

ハッピーじゃない〜
ラッキーじゃない〜
強がって笑っているかい〜
色褪せてない日々なんてない
夢の匂いなら少し覚えてる〜

オレやん。
しかも未来のオレやん。
未来のオレが車の中のオレに歌いかけている!

間違いなくハッピーでもラッキーでも無い。
ただ、夢の匂いは少しだけ覚えてる。
その匂いを頼りに今こうして就活してるのだ。

間違いなく、その歌の中にオレがいた。
オレを代弁してくれるロックバンドがいた。
報われないオレにも居場所はあったのだ。
歌に気持ちを重ねて、少し泣いた。

泥水を啜ったことのある人間に「フラワーカンパニーズ」というロックンロールはよく効く。

スペシャ寄席〜フラカン 全開の噺 編〜


こうしてお仕事でご一緒出来るのは運命的なのかもしれないと本気で思っている。


スペシャ寄席
其の四〜フラカン 全開の噺 編〜

場所
東京都北区王子1-11-1
北とぴあ つつじホール

出演
フラワーカンパニーズ
桂雀太
笑福亭笑利
樋口大喜

チケット前売り
6,000円

現在発売中!

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