3年H組

同じ方向に流れる木目を見つめていた。
教室の机は、産毛が立つくらいに冷たい。

遠くで金属音が鳴る。
野球部の掛け声が聞こえて、窓に目をやる。
桜の木が花びらを落としながら揺れていた。

「橘!おい!聞いてるのか!」
狸顔の渡辺先生は5秒も直視すると破顔してしまう。
口の端に唾を溜めながら早口でまくしたててくる。
親指の第一関節をこすり付けるように
眼鏡をくいと上げるのは癖だ。

「半年後の学力テストが勝負だ。
今、基礎の学力をつける時だろう」
わざとらしく息を吐いている。
「このままじゃ無理だな」
少し間をあけて必殺技のように切り出された言葉、
私には貫通しなかった。

「進学は、わかりません」
「なんだって?」

生温い風が教室を通り抜けた。

遠心 / マカロニえんぴつ


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