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日本酒造りを肌で感じた 酒蔵見学@「蔵王酒造」

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2020年2月6日、温泉山荘だいこんの花メンバーで、宮城県白石市にある「蔵王酒造」さんで酒造りの見学をさせていただきました。
「蔵王酒造」さんは創業明治6年。蔵王連峰の伏流水と冬の蔵王颪(ざおうおろし)の寒風という自然の恵みを活かした酒造りを行っています。
2月と言えば寒造りで行われる日本酒の仕込みのまさに繁忙期。新酒の出来上がりを知らせる「杉玉」が飾られる、メチャクチャ忙しい時期ですのに見学を快く受け入れていただき、酒造りの工程に沿って、ものすごく丁寧に教えてくださったので記事にまとめました。

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まずは、米と水について学ぶ。

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酒造りに適したお米を「酒造好適米」と呼ぶそうです。
食用のお米と比べ、酒造りに必要不可欠なデンプン質が多く、逆に雑味のもととなるタンパク質や脂質が少ないものが良いとされます。
このお米をどれぐらい削るか(精米歩合)で日本酒の分類が決まります。
そぅ、純米酒とか純米大吟醸酒とかの分類ですね。
そしてもう一つ、酒造りにおいて欠かせないのが「水」。
水は日本酒の成分の約80%を占めており、どんな水を使うかでお酒の質がガラリと変わるんですって。
硬水であれば、辛口でドライな酒質に、軟水であれば、柔らかく滑らかな酒質に…。
このようなお話をホワイトボードにお米の絵を描きながら丁寧にレクチャーをしていただき、私たちの酒蔵見学はスタートしました。

ものすごく緻密に、米を洗い、吸水させる。

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上の写真は「洗米」と「浸漬(しんせき)」をしている場所です。
重要な工程が幾つも続く日本酒造りにおいて、どのぐらいの水をお米に吸わせるかの「浸漬」はとても大事なポイント。
もともとお米に存在している水分量を計り、洗米中もお米は水を吸い続けるので洗米した後にも水分量を計り、目指すべき水分量との差分を計算したうえで、秒単位で吸水時間を算出しお米を水に浸します。この後に登場する「麹」に使うお米の場合はものすごく気を遣うそうで、わずか10kgずつを「洗米」→「浸漬」し、その都度微調整を行いながらトータルでベストな水分量にするんですって。
お米の種類や精米歩合、その日の天気や水温によって、水の吸い方が異なるから、頭も体も同時に使う、まぁ、それはそれは大変な作業なわけです。

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こちらの写真は、「吸水」後のお米です。
目指すべきジャストな水分量で吸水を終えたとしても、お米の周りに水分がついていた場合、その水分も余計に吸ってしまいます。
水を切らずにこのようにカゴに入れてしまうと水分が下へ下へと流れていくので、上のお米と下(底)のお米では水分量が大きく異なってしまうそう。
そこでもうひとつ大事なのが、いわゆる「脱水」。

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きちんと、丁寧に脱水されてあるので、サラサラです。

酒米を蒸す。

この工程はタイミングが合わず、残念ながら見るとこができませんでした。なので写真もありません。
「洗米」と「浸漬」を終えたお米を「蒸す」ことにより、お米のデンプン質が糊化(こか)することで糖化酵素を活性化させ、麹菌が増殖しやすいようになります。また、加熱殺菌の効果も兼ねているそうです。
良い蒸米は、お米の芯まで良く蒸せており適度に硬くて表面がベタベタしないそうです。ひとつ前の工程「浸漬」で水分量を誤ると、軟らかすぎたり、硬すぎたりしてしまいます。

米麹をつくる。ー製麹(せいきく)

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上の写真2枚は、「米麹」を作るためのお部屋「麹室(こうじむろ)」です。普段の見学では、なかなかこの麹室を見せていただくことはできません。昔から酒造りでは『一麹、二酛(酒母)、三造り』と言われており、この米麹をつくる「製麹(せいきく)」の工程が最も重要視されているそうですから、それはそれは大切で神聖な場所です。
麹菌を培養させる訳ですから、室温や湿度などが管理された空間で、あんまり人の出入りがあってはせっかく整えた環境が変わってしまいますよね。
写真1枚目の平らなところに蒸米を広げ、米麹のもととなる種麹を振りまき麹菌を増殖させます。空間の環境、そして、蒸米自体の品温も管理しながらの作業です。一度に数種類の麹を作ることもあるため、それぞれの麹に合わせた適切な温度調整ができるよう、必要に応じて写真2枚目の木の箱に小分けに入れて細心の注意を払いながら2日間かけて菌を育成させ米麹が出来上がります。

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上の写真が「種麹」。(黄麹菌の胞子)
蒸米の量に対してほんの少しの種麹も、2日間でどんどん増殖していきます。

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こちらが出来上がった「米麹」です。
もう、ここからはお米と呼べませんね。米麹へと名前が変わります。
米麹の役割は、蒸米のデンプン質を糖化するのに必要な酵素を供給することで、つまりは甘みを作ることです。この糖分がアルコール発酵に必要な栄養素となります。

酒母(酛)を覗く、嗅ぐ。

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酒母とは、酒造りに必要な優良な酵母を大量に培養したもので、この酵母が先ほどの麹が作った糖分を分解して、アルコールを作り出します。

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おぉ、ブクブクしている!
清酒の香りはこの酵母によるもので、醪(もろみ:搾る前のお酒)よりもこの酒母の方がより強く香りを感じることができるそう。
試しに容器に近づいて匂いを嗅がせていただくと・・・。

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ブハッ!!
鼻にツーンとくる強烈な日本酒の香りです!
それだけ酵母の活動が活発であるということですね。
また、この容器を酵母でいっぱいにすることで、他の雑菌やばい菌などの有害な菌が入り込まないようにしているそうです。

ワン・ツー・スリー。3段階で醪(もろみ)となる。

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先ほどの出来上がった酒母を大きいタンクに移して、麹・水・蒸米を3段階に分けて加えていきます。
3段階に分ける理由としては、少量ずつ増やしていくことで醪(もろみ)の酸度が薄まらないようにするため。
なぜなら、酒造りにかかわる菌は酸性に強いが、他の菌は酸性に弱いため、雑菌の繁殖を防ぐためには醪(もろみ)の酸度を薄めてはならないのです。

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そうして出来上がったのがこの「醪(もろみ)」。
おぉっ!発酵してブクブク・パチパチしてるー。
4日間かけて追加していき、それぞれ1日目は「初添(はつぞえ)」、2日目は「踊り」(この日は添加せず、薄まった酵母の増殖を促す。)、3日目は「仲添え(なかぞえ)」、4日目は「留添え(とめぞえ)」と呼ばれ、仕込む量を倍々にしていきます。

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4日目の「留添え」を終えると、ここから約20日~30日程度発酵させていきます。

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タンクによってそれぞれ発酵の日数が異なるので、醪(もろみ)の状態も違いますね。

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麹や酒母、醪などは時間とともに変化していくので、毎日分析し、その結果を見ながらそれぞれどのような調整をしていくのかが決まります。

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床板にチョークで書かれていた数字。これも何かの調整の記録なのでしょう。

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醪を搾り清酒にするー上槽(じょうそう)

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こちらの機械は何だかわかりますか?
白い布のようなものがジャバラ状に連なっています。

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実はコレ、醪に圧力をかけ、清酒を搾りだす機械です。片側から醪を注ぎ、このジャバラ状のものが圧縮することで、もう片方から清酒が搾りだされてきます。この時の搾りかすが酒粕です。

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搾りだされた清酒は最終的にこちらのタンクに入ります。
その後はお酒の種類により「火入れ」という工程へと移りますが、今回の見学はここまで。

ちなみに「火入れ」とは…
搾った酒は濾過することで、澱(米の溶け残り)を除去できますが、麹の酵素は少なからず生きたまま清酒に入ります。このままでは瓶詰した後も活動を続けていき酒質を大きく変化させてしまいます。そこで『火入れ』という、清酒を60~65℃くらいに加温する工程を入れることで、酵素の活動を停止させます。通常は貯蔵前と出荷前の2度火入れを行いますが、火入れを行わない酒を『生酒』、火入れを出荷前だけにし、生の状態で貯蔵しておく『生貯蔵酒』などもあります。

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見学を終えて。
米と水、麹菌と酵母から作られる日本酒。
材料で言えばそれだけなんだけど、「蔵王酒造」さんに見学に行って、酒造りを行う蔵人の方々の話を伺い、リアルタイムでその工程を見せていただいたことで、日本酒って『人』が作っているんだよなって改めて感じました。
よくある表現かもしれませんが、情熱や愛情、挑戦や革新などの蔵人の『想い』が一本一本の瓶に詰められています。
これはネットとかで調べた知識とかとは異なり、実際に酒蔵にお邪魔して肌で感じることができたからだと思います。
「蔵王酒造」さん、本当に貴重な経験をさせていただきありがとうございました!
(写真からもお分かりいただけるように、見学の最後は試飲させていただいちゃいました。)

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温泉山荘だいこんの花のダイニング「コの字」では蔵王酒造さんが醸した日本酒をご用意しております。
料理と合わせてお召し上がりいただくことは勿論、今回の見学のエピソードを交えながらお楽しみいただければ幸いです。

【蔵王酒造株式会社】  宮城県白石市東小路120-1
https://www.zaoshuzo.com
感染対策のため、当面の間 酒蔵見学を中止しております。




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