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後で効く 冷酒と 彫刻家の独り言

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彫刻家大黒貴之のオピニオンや独り言をまとめています
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2021年1月の記事一覧

女性の感性は素敵ですね。日本文化の根底に流れる「もののあわれ」

僕は毎年元旦5時に起床し、地元神社に参拝します。 日本は「神仏習合」の文化だと言われますよね。 夏は墓参りに行きますし、正月には初詣。 それに12月にはクリスマスもある(笑) 今回はこの「神仏習合文化」を持つ 日本の中から醸成された 「もののあわれ」について考えてみましょう。 漢字からひらがなへ。「ひらがな」を生み出したのは女性だった 日本は、宗教や文字、画、料理に至るまで 中国やヨーロッパなどからやってきた文化を取り入れてきました。 そしてそれらを日本の中で再編集

【しなやかに生きる】勝ちを急ぐときほど勝ちが遠のく-赤ちょうちんの大将のこと-

京都三条。 三条大橋近くの赤く光る赤ちょうちんの大衆居酒屋。 暖簾をくぐって年季の入った店内に入ると 何とも言えないごちゃごちゃ感。 けっして小奇麗だと言えないが なんだか不思議な居心地良さが漂っている。 小さな店の中をグルリと囲むようにカウンターがあって その中の厨房で大将が一人、料理と接客をしている。 「いらっしゃい!」 にこやかな笑顔でぼくを迎えてくれる。 そんな三条大橋の赤ちょうちん。 僕が20代の頃、よくそのお店に連れていってくださった方がいて その

何かを失った時の悲しさはどこからやってくるのか?池田晶子氏の墓石の前にて。

文筆家、池田晶子氏の著書「14歳からの哲学」の中で 「人はなぜ自分の大切な人がいなくなると寂しいのか、悲しいのか」 という問いを立てていた。 彼女によると「それは自分がその人の中に反映されているから」だという。 自分の存在が第三者の中に入り込んでいる。 つまり、自分にとって大切な存在が自分の前から いなくなってしまうことは「自分の一部が無くなってしまう」ことと 同等なのだと彼女はいう。 その事に対して、悲しくなる、或いは寂しくなるのだと。 その対象は人間だけはなく家族

その出来事は時間が経ってからわかるのかもしれない。Cosmos・秩序・無秩序・異熟

それは小さな奇跡でした。Cosmosの背景に咲き広がるピンクの花は群生する野生蘭。4月にこの彫刻を展示した時には、全く姿を見せなかったこの蘭の群れ。夏の終わりになり、緑の茎から一気に咲き誇りました。もし、Cosmosの位置が1mずれていたらこのようなショットではなかったでしょう。周囲の緑と蘭のピンクの花びら。そして白と黒の無彩色で形成されたCosmos。色彩のコントラスト、無機質と有機質なものとの調和、そして、その場面の発生に至るまでの時間や形成された展示空間の偶然に何とも言

私はなぜドイツに向かったのか?

ドイツには2度に渡って約6 年半滞在をした。現地の環境、文化、デザインなどが近江の自然の影響を受けた有機的な彫刻フォルムに上書きされ、私の作品は、論理的、数学的な美を取り入れた表現言語へ昇華された。 「なぜ、ドイツだったのですか?」とよく問われる。一度目の渡独は「アートの伝統的な歴史があるヨーロッパで作家としての自分の実力と運を試してみたかったから」。それに戦後、東西に分裂して、そして再統一されたドイツの歴史背景にもとても興味があった。壁以前と以降の狭間にあるベルリンという