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SDGs考察集 vol.04 | 2020.05.20

SDGsに関する商品・サービスを勝手に考察するSDGs考察集。
第4回の目次はこちら。

名称の認知率は約3割に
「第3回 
SDGsに関する生活者調査

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先月末、大手広告代理店の電通が、第3回「SDGsに関する生活者調査」の結果を発表。全国10代から70代の男女1400人を対象に実施した調査の中で、「SDGs」という言葉の認知率は全体の29.1%となり、前回から10%以上の上昇に。特に、男性10代では前回の2倍以上となる55.1%、女性20代では31.7%と前回から3.4倍も上昇するなど、若年層における急激な認知の高まりが見らられました。
 

視点「SDGs普及の鍵を握る若年層と彼らへの教育」

自治体や企業を中心に取り組みが求められているSDGsですが、まだ誰しもにとって「当たり前」のものにはなり得ていない状況。身の回りでSDGsの広がりを感じるという人は、日本国内、特に地方では少ないのではないでしょうか。

私たちは物事を捉えるとき、どうしても自分中心になりがち。つい自分自身や、身の回りの状況などをもとに考えをまとめてしまいます。SDGsに対する温度感についても同じようなバイアスがかかり、まだまだ一部の意識の高い層だけが、と思ってしまいますが、意外とそうでもない、というのが今回の調査で現れてきています。先述の通り、10代男性ではすでに半数を上回る認知率となっており、職業別では「学生」が最多の45.1%という結果になったとのこと。記事にある通り、その大きな要因となっているのが「学校での授業」です。

教育に関する記憶は、自分が学校に通っていた当時でストップしてしまいがちですが、当然ながら学習内容は年々アップデートされています。我が子の教科書や宿題を通じて、「へ〜、今はこんなことも学校で習っているのか」と気付かされるように、自分の時代では考えもしなかったことが子どもたちの世代では当たり前になっていることも。SDGsもまさにそのひとつで、今や多くの小学校や中学校で子どもたちは学んでおり、宿題になっていたりもします。SDGsや社会課題について、子どものほうが親よりはるかに詳しい、という状況が生まれているわけですね。

企業の管理職世代が「若年世代に向けたエシカルなブランドやプロモーションが増え始めた気もするが、まだ世の中の潮目は変わっていない」と油断しているうちに、普段の暮らしからは目に見えないところで時代は着実に変化しています。事業のシフトチェンジは急にはできません。世の中の変化を捉え、今すでに動き出せているか、出せていないか。その違いが数年後に大きな差となることは言うまでもありません。


プラごみリサイクルの裏に隠れた真実
「ブラジルのペットボトル"ハック"キャンペーン」

https://ideasforgood.jp/2020/01/27/sticker-hack-supermarkets-brazil/


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プラスチックごみの量が世界で4番目に多いブラジル。一方、回収されたプラスチックのほとんどが国内でリサイクルされていないという事実はあまり知られていませんでした。そこで、リサイクル可能マークのあるペットボトルが並ぶスーパーの売り場を舞台に、ペットボトルリサイクルの裏に隠された真実を広めるためのキャンペーンを実施。次々とボトルに貼られるシールには「50% is not recycled」と書かれており、ペットボトルごみの半分が実はリサイクルされていないことを生活者に認識させるものになっています。
 

視点「意外と知られていない、プラごみリサイクルの裏側」

SDGsやサステナビリティについて語られるときに、何かと取り上げられがちなのが、海洋プラスチックごみ問題や「脱プラ」の取り組み。先述の電通の調査でも、他の社会課題やキーワードに比べ、認知率や共感率、実践率などで軒並み1位となるなど、「脱プラ」への関心の高さが伺える結果となっています。しかし、そのリサイクルについて詳細を知っている方はそう多くはないのではないでしょうか?

普段の生活でもペットボトル(や自治体によってはその他のプラごみも)は「リサイクルごみ」として分別し捨てていることから、集めたごみは国内の施設で洗浄され、溶かすなり細かく砕くなりし、新たなペットボトルや他のプラ製品などの材料として再利用されているのだろう、と思っている方もいるかもしれません。しかし、リサイクルが浸透しているように感じる日本においてもブラジル同様、裏側には多くの課題が隠されています。

ブラジルはプラごみの量が世界第4位とありますが、では日本はというと、年間900万トンで、アメリカに次ぐ世界第2位。国内だけで年間200億本のペットボトルが使われているとも言われています。しかし、そうしたリサイクル資源の多くは、国内で再利用されず、そのままアジアなどの途上国に輸出されていました。この「ごみの輸出」という事実だけでもショッキングなのですが、昨今ではそうした国々から受け入れ拒否が相次ぎ、ごみが行き場をなくしているという信じがたい実状が存在しています。また、リサイクル手法の大部分は、焼却され、エネルギーとして回収するサーマルリサイクルというやり方。つまり他のごみ同様、燃やして処理している。当然、CO2の排出にも繋がりますし、いわゆるリサイクルのイメージからはかけ離れています。

さらにやっかいなのが、日本ではこの手法がリサイクルの定義に含まれており、国内のリサイクル率が一見高く見えること。プラスチック循環利用協会発表の2019年のデータでは、日本のプラごみ処理の58%がこのサーマルリサイクルで、海外から批難を受けていたりもします。リサイクルのために分別したごみの半分以上が、ただ燃やされているという実態。これらの事実を知りもせず、今日も全国の家庭では、ラベルを剥がし、中を水洗いし、ペットボトルを分別し続けているのです。僕自身、マイボトル普及のプロジェクトに関わるまでは、こうした課題をほとんど知りませんでした。


プラスチックごみ汚染の元凶は日本?
「海洋プラスチックごみ排出国ランキング」

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https://gooddo.jp/magazine/oceans/marine_pollution/plastic_garbage/4442/


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データは2010年時点のものと少し古いものの、海洋プラスチックごみの流出量が多い国と地域の情報は科学誌「Science」によって発表されています。ワースト1位は人口が最も多い中国。その沿岸域からは、2010年時点で年間882万トンのプラスチックごみが管理されずに排出されていると推定されており、世界全体の管理不行き届きプラスチックごみの4分の1に相当します。結果として、中国からは132〜353万トンのプラスチックごみが年間に海に流れ込んでいると推定されています。インドネシア(48〜129万トン)、フィリピン(28〜75万トン)と続く形で、ワースト20位の中に、アジアの国が12ヶ国。この中国、東南アジア、南アジア各国からなる上位勢が海洋へのプラごみ流出の大部分を占めていることがわかります。
 

視点「課題解決は、まず実態を把握することから」

せっかくなので、プラごみの話をもう少し続けます。先ほどは、国内のプラごみリサイクルの裏に隠れた事実の話をしましたが、ひとつ重要な視点が抜けています。プラごみ問題が語られるときにはよく、海上を漂うプラスチックごみや、それらに苦しむ海洋生物、あるいは細かく砕かれ人体への影響も懸念されるマイクロプラスチックなどの写真が出てきますよね。一方、先ほどの事実の中でのポイントは、国内で分別されたプラごみは燃やして処理されている、ということでした。そう、川や海に捨てられているわけではないんです。

もちろん、心ない人たちがポイ捨てし、流れ流れて海に行き着くプラごみも当然ながら存在します。ではその実態はどの程度なのか、ということで示されているのが、ここで取り上げたデータです。プラスチックごみの量が年間900万トンで世界第2位の日本は、海への流出量で見ると30位。量にして2〜6万トン。排出ごみの0.2〜0.7%が海へ流れ出ているという計算になります。善戦していると捉えることもできるかもしれませんが、年間2〜6万トンものごみが海に流れ出ているのもまた事実。さらに恐ろしいのが、アジア諸国が上位を占めていた理由にあります。ごみ処理がちゃんと行われていないのもありますが、そもそもとして、丈夫で軽く、大量生産可能なプラスチックの利用数が多いのがその理由。そうした大きな需要を賄うために、アジア諸国では廃プラスチックを再利用する形で製造を行ってきました。原料から作るよりも安くつくからです。そして、そうした国々にリサイクルという名目で廃プラスチックを大量に輸出していたのが・・・、そう、日本です。自国で排出されたごみを隣国に輸出すれば、確かにリサイクル率は高く見えますし、ごみの海洋流出量も下がります。しかし、目線を国内から国外に移せば、日本から輸入されたごみが再利用され、プラスチック製品となり、それが結果的にごみとして大量に海に流れ出ている。

社会課題というのは、このようにすべてが連鎖し、複雑に絡み合いながら起きており、簡単に解決できるものではありません。一方、こうしていろいろ数字を比較し、実態を探っていくことで、社会課題の新たな側面や実態がつかめてくるのもまた事実。逆に言えば、そのような努力なしに、本質的な課題解決へのアプローチは生まれないということでもあります。国内企業が取り組んでいる、プラ包装をなるべく減らしていくような細かい努力ももちろん大切ですが、ダイエットと同じで、太っている人は努力次第で一気に体重を落とせるものの、もともとスリムな人がさらに痩せるのは難しいもの。インパクトの大きい部分がどこなのかを徹底的に探り、そこにメスを入れていくアプローチこそ、SDGs達成においては必要不可欠なのだと思います。

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