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SDGs考察集 vol.03 | 2020.05.13

SDGsに関する商品・サービスを勝手に考察するSDGs考察集。
第3回の目次はこちら。

クラシックカーをエコカーにリニューアル
「フォルクスワーゲン 
e-BULLI

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商品サービス概要

今年の3月、フォルクスワーゲンが新シリーズ「e-BULLI」を発表。同社が1966年に生産していたワーゲンバスの意匠を受け継ぎつつも、環境保護の機能性を備えた電気自動車です。走行中の温室効果ガス排出量はゼロ。人気のクラシックカーの見た目をなるべく保ちつつ、中身を最先端の電気自動車に作り替えた新シリーズの発表は大きな話題になりました。
 

視点「新旧のさらなる融合に期待」

懐古主義であるかは別として、ひと昔前のクラシカルなデザインはどの業界でも根強い人気があるもの。僕自身も、ワーゲンバスやビートルなど、古い車体が持つ、丸みのあるトラディショナルなフォルムは大好きで、ビートルの生産が2019年で終了すると知り、打ちひしがれていた中での今回の発表には驚かされました。

質のいいプロダクトを大事に丁寧に使い続けたいという価値観が特に若い世代を中心に広がりを見せていた中で、ネックとなっていたのが環境負荷の問題。古い自動車は燃費が悪く、排気ガスの量も多かったり、年代物の家電製品は消費電力が大きかったりと、使用する過程における環境への影響がマイナス材料でした。そんな中、このようなクラシックと最新技術を融合させ、現代版にアップデートする取り組みは、そうしたプロダクトが好きな人々にとってはひとつの解決策にもなるものです。

一方で、今回の商品自体は、実態としてはあくまで新車。車体の製造過程においては当然ながら環境負荷が発生します。今回の技術を応用し、中古車の中身だけをエコなものに入れ替えるといったリペア・リユースサービスが広がれば、より意味のある取り組みにつながるはず。車だけでなく、家電など、他の製品群でも、こうした「内側のアップデート」のしくみ化が進んでいくとうれしいですね。

SDGsで注目を浴びる静脈産業、そのパイオニア
「会宝産業株式会社」

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商品サービス概要

SDGsについて理解を深めていくと、静脈産業という、あまり聞き慣れない言葉を目にします。静脈と聞くと、医療やバイオテクノロジーを想像しがちですが、そうではなく、ものづくりの活動を体内の血流に置き換えた言葉です。つまり、いわゆるメーカー、モノを製造する産業のことを動脈産業、逆に生み出されたモノを循環させる役割を果たしている会社が静脈産業というわけですね。きれいな血流である動脈と、老廃物が流れる静脈が循環することで体内のエコシステムが成り立っているように、サーキュラー・エコノミーとも言われる循環型社会の実現のためには、静脈産業が欠かせない役割を果たします。
 

視点「静脈産業が就職人気業種上位となる時代へ」

先ほど取り上げた自動車業界でいうと、トヨタや日産、フォルクスワーゲンといった、いわゆる自動車メーカーが動脈産業。自動車に限らず、各業界でパッと思いつく、有名で就職人気も高い大企業の多くがこの動脈産業に該当します。では、静脈産業はというと、たとえばそのパイオニアとしてよく名前が上がるのが石川県金沢市に本社を置く会宝産業。聞いたことがない方も多いと思いますが、中古自動車の買取・解体を行い、部品を国内外へ販売しているリサイクル会社です。

自動車解体業として創業し、今では、世界80ヵ国以上へリサイクル部品を輸出。単なる輸出業にとどまらず、世界各地にリサイクルのシステムを広げるべく、各国のリサイクル工場の運営支援や人材育成にも力を入れており、ビジネスとサステナビリティーの共存を追求し続けている素晴らしい会社です。

こうした廃棄物やゴミを扱うことの多い静脈産業はこれまで、「汚い・きつい・危険」といった3Kや「臭い」まで入れた4Kの汚名を着せられがちでした。先述の通り、循環型社会を作るに欠かせない、環境に優しいはずの事業であるにも関わらず、どうしてもネガティブなイメージがつきまとってしまいます。そこで、会宝産業など静脈産業の企業からも、クリエイティブ会社とタッグを組んで、広報・PRやブランディングに力を入れる企業が増えてきました。実際、そうした企業には、難関大学の優秀な学生からの応募が増えてきているそうです。

今はまだ、学生の就職希望ランキングの上位には、動脈産業のキラキラした有名メーカーの名前が目立ちます。しかし近い将来、こうした静脈産業とクリエイティブの企業がより密にパートナーシップを組むことで、これからの社会を支える静脈産業に属する企業がずらりと並ぶ日が来るかもしれません。イノベーションというと、GAFAやTeslaなどを筆頭にテック系企業を想像しがちではありますが、サーキュラー・ビジネスの注目企業・テラサイクルが展開する、容器を回収して再利用する宅配サービス「Loop」が注目を集めているように、次なる時代に求められるイノベーションのチャンスは、静脈産業のほうにこそ広がっているのかもしれないですね。

地球上におけるサステナブルな経済活動の分水嶺
「Country Overshoot Days 2020」

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商品サービス概要

オーバーシュートと聞くと、コロナ禍で乱用されるようになったカタカナ語を思い浮かべてしまいますが、ここでのオーバーシュートは爆発的感染拡大の意味ではありません。オーバーシュート(overshoot)とはもともと、「度を越す」「行き過ぎる」といった意味であり、オーバーシュートデーとは、私たちが消費した地球上の資源の量が、1年間で再生可能な量を上回る分岐点となる日のこと。毎年、NPO団体「Global Footprint Network」が試算し、国ごとに設定が行われています。
 

視点「本当のサステナブルには抜本的な社会アップデートが必要不可欠」

この記事を書いているまさに今日、5月12日こそ、今年の日本のオーバーシュートデ―。つまり、2020年冒頭から今日までの5ヶ月半ほどの期間で、日本は経済活動を通じて、1年間に持続的に活用可能な地球上の資源をすでに使い果たした、ということになります。もちろん、もともとの試算自体完璧ではなく、かつ今年はコロナの影響で資源の需要が例年と異なっていたりと、実態とのズレはあるでしょうが、概ね半年も満たない間に1年分の資源消費をしてしまっているという事実には驚かされます。

「サステナブル」という言葉をよく見聞きするようになり、SDGsもまさしく「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を意味しますが、オーバーシュートデ―を見る限り、日本は持続可能である資源活用の水準を半年足らずで上回っていることになります。仮にこれを正とすれば、真の意味でのサステナブル実現のためには、現在の2分の1以上の水準にまで地球上の資源消費を抑え込まなくてはなりません。

このような状況下において、代替となるサステナブルな商品サービスや取り組みが続々と生まれてきてはいますが、まだまだその多くが対症療法的なものであるようにも感じます。greenz.jp編集長の鈴木菜央さんが語っているように、「現状の2分の1以上」という高すぎる壁を前にして、20世紀に作られた古い社会のOSが生むバグを対症療法的に潰し続けているだけでは、どうやっても目標に追いつかない。そうではなく、SDGs達成のためには、より視座を上げて、社会のOSそのものをアップデートしていく大掛かりなイノベーションが必要不可欠。玉石混交のSDGsですが、そこに向けた本質的なチャレンジこそがよりいっそう脚光を浴び、注目され評価されることを願っています。


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