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SDGs考察集 vol.10 | 2020.07.01

SDGsに関する商品・サービスを勝手に考察するSDGs考察集。
第10回の目次はこちら。

気候変動対策と雇用創出を同時に実現
「グリーン・ジョブ

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IDEAS FOR GOODに最近掲載された2つの記事をご紹介。記事タイトルにある通り、コロナ禍がもたらした不況に対する経済対策、失業対策として、環境保護に関する大型プロジェクトがイギリスとデンマークそれぞれで立ち上がった、というものです。

視点「グリーン・ジョブは一石二鳥の救世主となるか

世界恐慌(世界同時不況)の克服を目的とした経済政策としては、1930年代にアメリカのルーズベルト大統領が行ったニューディール政策が有名ですね。テネシー川流域のダム建設など、大型公共事業を積極的に展開し、大規模な雇用を短期間のうちに創出したというもの。その現代版とも考えられるのが、先ほどご紹介したイギリス、デンマーク両国での環境保護を目的とした新プロジェクトです。

プロジェクトについては、経済面、環境面ともに、その効果がまだ未知数な面もありますが、この未曾有の状況において、2つの国でよく似た政策が展開され始めたというのは興味深いところ。多額の投資や労働力の確保が必要で、かつ既存の業界団体からの反発などもあり、歩みが遅くなりがちだったグリーンエネルギーへの転換ですが、コロナ禍における政府主導の経済対策ともなれば、まさに一石二鳥な取り組みのようにも思われます。

また、おもしろいのが記事終盤の内容です。

上手くいけば、2027年までにコペンハーゲン空港で使用される化石燃料の約5%、2030年までに約30%がグリーン燃料に置き換えられ、雇用の創出や、グリーン燃料の輸出につながる可能性もある。現在、航空会社をはじめ多くの企業が新型コロナウイルス感染症による経済的打撃を受けている中、プロジェクト参加企業は、この取り組みが産業の脱炭素化を進め、コロナ危機後のデンマーク経済を活性化させると考える。

現在、コロナの影響により大打撃を受けている航空業界ですが、環境活動家・グレタさんの一連のアクションで注目を浴びたのが、飛行機移動による環境負荷でした。航空業界のコロナ被害と環境政策がこのような形で偶然にもリンクしたことにより、今後思いもよらなかった可能性が生まれるかもしれません。


持続可能な社会・経済を構築する復興方針
「グリーン・リカバリー

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先ほどはIDEAS FOR GOODに掲載された2つの記事をご紹介しましたが、関連する内容の記事がSUSTAINABLE BRANDS JAPANにも立て続けに掲載されていたので、そちらも合わせてご紹介したいと思います。こちらの記事では「グリーン・ジョブ」に加え、「グリーン・リカバリー」なる言葉も登場。主旨は先述のものと同じく、コロナ危機で停滞した社会を、気候変動を抑え、生態系を守りながら立て直そうという、欧米を中心にムーブメントが広がっている考え方です。

視点「日本版グリーン・リカバリーはいつ生まれるのか

記事によれば、ネスレやユニリーバ、IKEAなど、かねてより社会貢献活動に積極的だった企業を含む155社以上のCEOが各国政府に対し、2050年よりも早期に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする気候変動対策を踏まえた復興策を求める共同声明を発表したとのこと。「グレーな経済からグリーンな経済へ」がスローガンです。オックスフォード大学の研究によれば、新型コロナウイルスと気候危機に同時に取り組む回復策は、社会や技術の急速な変化に適応できないショックや災害に対する脆弱性を低減させ、雇用を創出し、CO2の排出量を減らし、大気中の汚染物質の量を大幅に改善するなど、大きな効果を発揮すると分析されています。

また、気候変動に取り組む主要都市の集まり「C40(世界大都市気候先導グループ)」の世界市長会議では、昨年の時点ですでに94の主要都市の知事が世界的な気候変動の緊急事態を認識し、レジリエントな経済の構築に向けて世界をリードするために「グローバル・グリーン・ニューディール」を支持すると発表されていました。ここでも先ほど取り上げたニューディール政策がアプローチのモチーフとして使われています。

しかし残念なのは日本国内での動きです。先述の共同声明において、日本企業で賛同を表明しているのは、丸井グループ、前田建設、YKK、高砂香料工業の4社のみであり、5月7日にはC40に含まれる38の加盟都市が「新型コロナウイルスからの経済復興において、これまで通りのビジネスには戻らない。より良く、より持続可能で公平な社会を構築する。」との宣言を行いましたが、あいにく日本の都市は含まれていません(いずれも記事が掲載された5月27日時点の情報)。

ただ、先ほどシェアした記事などによれば、6月12日に環境省は「気候危機宣言」を発令したとのこと。小泉進次郎環境相は、コロナ禍にも見舞われた2020年を危機的な地球環境に対応する節目の年と捉え、脱炭素・循環経済・分散型社会への移行を進める方針や、日本版グリーン・リカバリーの基盤を築いていく考えを明らかにしています。

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6月10日の時点ですでに一度、小泉大臣と気候変動イニシアティブ(JCI:Japan Climate Initiative)の間で「グリーン・リカバリー」についての意見交換会が開かれており、9月にはCOP締約国が参加し、「グリーン・リカバリー」をどのように実現するかを共有するオンライン会議が開催される予定です(参考記事)。これまで、国際会議などでの発言や見解が取り沙汰されることが多かった小泉大臣ですが、国内の企業や社会がグローバルに対し遅れを取っている状況も含め、日本が世界に向けて今後どのように発信し、アクションにつなげていくのか気になるところです。

国内のニュースやワイドショーでは依然として、感染者数の増減や第2波の状況、マスクにまつわる問題やトラブル、「夜の街」の営業や感染対策をテーマとした素人議論ばかりが報道されていますが、もうそろそろウィズコロナ、ポストコロナを大局的かつ未来志向で捉え、「グリーン・リカバリー」のような中長期的なテーマにもしっかりと目を向けていく岐路に立たされているのではないでしょうか。今回取り上げたのはイギリスとデンマークでの事例でしたが、日本においても大きな動きが早急に生まれることを期待しつつ、初めて知った「グリーン・ジョブ」「グリーン・リカバリー」というキーワードとその可能性を今後も探っていきたいと思います。

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