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SDGs考察集 vol.02 | 2020.04.22

SDGsに関する商品・サービスを勝手に考察するSDGs考察集。
第2回の目次はこちら。

“環境に優しい”商品の真実を暴くドキュメンタリー映画
「グリーン・ライ ~エコの嘘~」

https://unitedpeople.jp/greenlie/


商品サービス概要


2018年、オーストリアで制作されたドキュメンタリー映画。スーパーでよく見かけるようになった「環境に優しい」「サステナブルな」商品の裏に隠された真実を暴いていくストーリー。日本では2020年3月28日(土)から、シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショーの予定でしたが、コロナの影響で4月22日現在は休館となっている模様。


視点「グリーンウォッシュ、SDGsウォッシュをどう見極めるか」

作品のテーマとなっているのが「グリーンウォッシュ」。日本人にはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、欧米ではずいぶん前から浸透してきており、“企業活動や商品・サービスの環境影響について、消費者に間違った印象を与える行為”のことを指します。実態は異なるにも関わらず、環境にやさしいとうたうことで、生活者を欺き、販促活動を行うなどですね。2015年のSDGs制定後は、グリーンウォッシュと同様に、実態がない、あるいは実態と異なる部分があるにも関わらず、SDGsへの貢献を偽装したり、誇大にうたったりする「SDGsウォッシュ」なる言葉も登場しています。

このgreenz.jpの記事にもあるように、環境問題を本質的ではない形で利用し、販促に役立てようとする悪意あるアプローチもありますが、個人的にやっかいだと感じるのは、善意の中に潜んでいるパターン。SDGsにあるような社会課題は、それぞれが密接に結びついているため、一方を立てれば一方が立たず、といったようなことがよく起こります。善意に基づく行動ではあるものの、本質的な部分を捉え損ねているがあまり、社会・環境にとってマイナスの影響を意図せぬ形で引き起こしている、というパターンですね。

SDGsの広がりとこうした"ウォッシュ"はいわば光と影の図式になっており、生活者のサステナブルな意識の拡大に伴い、グリーンウォッシュ、SDGsウォッシュの商品・サービスが今後ますます増えていく可能性もあります。一方、この映画のように、生活者が購買を行う際に逐一、裏に潜んでいる実態を探り、見分け、判断するというのはあまりに困難。次で挙げるような様々な認証制度などもあるものの、数が多く見分けがつかなかったり、すべてが完璧でなかったりと、課題も感じています。


環境、社会に配慮した事業活動を行う企業の認証制度
「Certified B Corporation」

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https://bcorporation.net/


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「Certified B Corporation(B-Corp認証)」は、民間企業に「ベスト・イン・ザ・ワールド(世界一になること)」を目指すのではなく「ベスト・フォー・ザ・ワールド(世界にとってベストを尽くす会社になること)」を目指してもらう、米国発の認証制度。環境、社会に配慮した事業活動を行っており、アカウンタビリティーや透明性など、様々な基準を満たした企業に対して与えられる世界基準の民間認証で、米国ペンシルバニア州に本拠を置く非営利団体のB Labが運営しています。
 

視点「日本でもB-Corp認証の流れは起きるのか」

2020年4月現在、世界では71カ国、150の業種で3285社が認証されています。有名どころだと、Patagonia、Ben & Jerry’s、 Kickstarter、Danone、Unileverなど。最近では、"世界一快適なシューズづくり"で大ヒットしているD2CブランドのAllbirdsなども認証を受けています。アメリカだけでなく、ヨーロッパや、近年ではアジア地域でも認証企業が増えてきている一方、日本でB-Corp認証を受けている企業はまだ5社のみ(6社という情報もありますが、上記サイトで検索し、ヒットするのは5社)。認知度もかなり低いように感じます。

その理由として考えられるのが、認証の条件の厳しさ。5つの分野(ガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、カスタマー)から構成される200点満点の認証試験において、80点以上を獲得することが条件です。フェアトレードやオーガニック製品などの認証制度に比べ、評価項目が細かく多岐にわたると同時に厳しいため、認証を受けるにはそれ相応の努力と本腰を入れた改革が必要で、先ほどの"ウォッシュ"のように、旧態然とした日本企業の多くがエコなイメージ欲しさに手軽に取り組めるものではありません。

取得のメリットとしてまずあるのが、前回も触れた数値化・可視化。企業としての努力や姿勢がわかりやすく伝わることで、生活者や社員、株主、取引先など、様々なステークホルダーに対して"いい企業"であることを示しやすくなります。また、同じビジョンや価値観をもった人や組織との協業・共創につながるというコミュニティーメリットも存在します。これらのメリットに対して、先述の認証取得ハードルが高すぎたがために、なかなか浸透しなかったのかもしれませんが、国内においてもSDGsの認知向上に伴い、生活者意識が変わってきているのは事実。また、今はまだ認証取得企業も少なく、PR効果も高いと思われることから、フットワークの軽い中小ブランドや新興ブランドなどを筆頭に、続々と認証取得の流れが起きるポテンシャルは感じています。


新型コロナによるフードロス対策プラットフォーム
「FruPro」

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https://www.frupro.com/


商品サービス概要


新型コロナの蔓延により世界各国で、外食業界、給食業界に卸す予定だった食材や調理予定だった在庫が行き場を失っています。一方で、スーパーなどでは食品が依然として手に入りにくい状態。そこで英国のITスタートアップ「FruPro」が立ち上げたのは、食品ロスの無償オンラインプラットフォーム。余った食品を在庫に持つ事業者と買い手とを直接つなぐサービスを無償で提供しています。


視点「コロナ禍は、ある意味究極のSDGsとなりうるか」

このアプリだけでなく、コロナ禍の中で、テクノロジーを活用した飲食関連の支援ソリューションが続々と生まれています。代表的なのが、飲食店に料金を先払いできる仕組み「ダイニング・ボンド・イニシアティブ」や、休校で余った給食を取り寄せられる「うまいもんドットコム」など。食品の生産・製造・消費が、サプライチェーンによって分断されていたことによって生じていた食の課題が、コロナの問題によって変革を余儀なくされ、結果として、テクノロジーでダイレクト、リアルタイムに需給を結ぶという、新しいソリューションの拡大に繋がっています。

今回、一気に広がることになったリモートワークやオンライン授業にせよ、現状はまだ"暫定的なコロナ対策"という形かもしれませんが、こうした新しいアプローチの中に、本質的なニーズや課題解決の糸口、SDGsに寄与する新たなビジネスチャンスが隠れている可能性が大きいことは間違いありません。

「元の生活を取り戻す」「経済を回復させる」と政治家が言っている一方で、アフターコロナ、ウィズコロナ、ポストコロナといった世界の憶測が様々な方面で語られて始めています。SDGsがゴールに定める2030年まで、ちょうどあと10年。これを機に求められているのは復興ではなく、生活、経済、社会システム、価値観といった、様々な生活基盤のアップデートなのではないでしょうか。

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