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大吉堂読書録・2024年4月

『金曜のバカ』(越谷オサム)
青春とはバカなのかも。そっちに行くか!? とのバカ話もあれば、一途に熱いバカさを抱えたものもあり、若さ故のバカな暴走もあり、そんなバカに巻き込まれることもある。
そのどれもが愛おしい。かっこよくはないが素敵な青春バカ話。悶えて足掻いて一歩進もう。

『世界ぐるぐる怪異紀行』(奥野克巳・監修)
世界各地の怪異を文化人類学者らが語る。
オカルトに走らず安易な意味づけもせず、当地の人々にとっては当たり前のこととして紹介する。
怪異の物語が生活と直結するのはどの地も同じ。多様な世界を知り、視野が広がる。

『魔眼の匣の殺人』(今村昌弘)
「予言」という特殊設定がある(と信じた)上で、行なわれた出来事を推理で解き明かしていく展開に痺れる。全ての描写や行動に意味を持たせる緻密な造りに恐れ入る。
前作に比べインパクトは弱いが、全編ミステリのために注がれたミステリ故の面白さを味わえる。

『クイックセーブ&ロード』(鮎川歩)
セーブした時間に死ぬことで戻れる能力を使って、幼馴染の死の真相を探り防ごうとする。
同じ時間を繰り返し望む結果を得ようとするループものの面白みを踏襲しつつ、ラストの大技に驚く。絶望の末に掴み取る一歩の重みを爽やかに感じさせるのが魅力的。

『ビブリア古書堂の事件手帳Ⅳ 扉子たちと継がれる道』(三上延)
長く続くシリーズならではの魅力に溢れている。あの人の今までにない姿に驚きと喜び。
鎌倉文庫と夏目漱石に関わる親娘3代の物語。本の魔に囚われた人が多く出て来たシリーズだが、今作は本が人に力を与えて縁を作る物語だろう。

『ミステリ作家の自分でガイド』(本格ミステリ作家クラブ・編)
自著紹介という切り口のミステリガイドブック。
2010年発行なので懐かしい作品も多く、評論やガイドブックに関する紹介もあるのが嬉しい。
紹介の仕方も一筋縄でいかず、その語り口により作品自体を読んでみたいと思わされる。

『この本を盗む者は』(深緑野分)
想像と全く違う内容だったので前半混乱したが、後半以降面白さが増して読みふけりました。
巨大書庫御倉館より本が盗まれることで発動する呪い。物語の世界へと変わる町。本に囚われた人々の物語。
冒険ファンタジーであり、呪縛から解き放たれるための物語。

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