僕がnoteに記事を書く理由
こんにちは。北海道旭川市で大学教員をしながら、「常磐ラボ」というコミュニティスペースを運営しています。今日は、自分が note に記事を書く理由について、社会の変化の観点から書いていこうと思います。
常磐ラボ情報発信ブログ:https://ameblo.jp/tokiwalab/
*どうしてもですます調の文章はぎこちなくなってしまい思っていることが素直に書けないので、失礼とは思いつつもここからはである調で書くことにします。ちょっと高圧的に感じてしまうかもしれませんが、そんなつもりは毛頭無いので、ご容赦くださいませ。
常磐ラボは、開設当初は利用を有料の会員制にしていたのだけれど、このやり方は「ちょっと違うな」という感じがして、結局利用は無料にしている。
ものすごく端折って説明すれば、僕が note に記事を投稿する理由は、「費用の捻出のための活動」だ。でも単にお金が欲しい、必要だというだけのことでもなくて、「なんだか新しい社会のあり方を目の当たりにしている」と感じられて楽しいのだ。そういうことについて、以下で書いていこうと思う。
売買でもなく寄付でもなく
当然だが、物理的に場所を開設しようと思ったら、経費がかかる。家賃や光熱費、駐車場代その他もろもろ。そういう経費を賄うべくスペースを利用することそのもののサービスを有料にしてしまえば、とてもわかりやすい。スペースの提供に対してそれを利用する人達がお金を支払う単純な売買だ。
ラボでは特に飲み物や食べ物などのサービスを提供するわけではないから、ラボのサービスを有料化するなら、空間の利用そのものを有料化することになる。会員制度や時間利用いくらと決めて利用するシェアオフィスなどはそういうやり方を取る場合が多い。
だけど、高校生・大学生といった若い世代から社会人やリタイヤした方々まで幅広くつながる関係を築きたいと思ったときに、そのやり方は「常磐ラボにはふさわしくない」と思った。「関係性を築く」とか「コミュニティに入る」ということに対して対価を取るというのが、どうもそぐわない。結局、売買というお金の絡んだ関係は、どこか間接的にならざるを得ない。もちろんこれはまったく悪いことではない。そうやって間接的になっていくことで人間関係や空間の制約を超えて経済は発展することができた。
一方で、そういう売買関係では築けないモノもある。多世代が参加する会話や議論、経験のやり取りなどのコミュニケーションだ。僕は、こういったものが今自分がいるこの旭川というまちには欠けていると思っている。高校生たちは学校の先生と保護者以外の大人と向き合う機会はほとんど無いし、大学生もバイト以外に学校外の関係性を築く機会を持てる学生はほとんどいない。でも、こうした世代を超えたコミュニケーションは、若い人達に新しい思考のきっかけを与えてくれるし、感情が伴った経験(これはなかなかネット検索では得られない)を感じる手助けになる。考えの幅も広がるし、いろんな世代の人達と関わりを持つことで、若者も大人もそれぞれに違った視点を得られるきっかけになる。
そしてこういうコミュニケーションで「このまちでいい大人に出会っていい経験をした」という記憶をもつことができたなら、まちに対する愛着は自然と生まれてくる。どこの地方都市も似たような状況だと思うが、若者の都市部(札幌・東京)への流出は著しい。この流れを止めることはできないけれど、出ていく若者たちがこのまちにどういう想いをもって出ていくのか。この点はとても重要だと思う。ポジティブな思いをもって出ていってもらいたいのである。
こんな風に会話や経験のやり取りができる場を作るうえで、ラボは「お金を支払うことでメンバーになることのできるクラブ」であるべきではないと思ったから、ようやく最初の話に戻ったが、ラボの利用は無料にしたわけだ。
そうなると、今度は資金繰りが困る 笑
始めに考えていたことと、実際に始めてみて気づいた常磐ラボの存在意義が自分の中で変わっていってしまったので、お金をどうにか工面しないといけない。そこで、大学の同僚の先生方に協力をお願いした。自分と思いをともにしてくれる人達に、寄付をお願いすることにしたというわけだ。
でも、寄付というは普通一つのなにか取り組みに対して求めるもので、定期的に永続的に求めるものではないような気がする。お願いするこちらとしても、なんだかメンタルが削られていく気がして気が重くなってくるし、寄付してくださる先生方も、ずーっとこれを続けるのかと思うとおそらくいい気持ではないだろう。
やっぱり何か寄付以外の手段での資金調達を考えねば…とならざるを得なくなってくる。
「気持ち」をお金に
お金を生まなくてはならないが、寄付ではなくて常磐ラボの利用サービスの売買でもない形でなければならない。これはとっても難題だ。経済学の勉強をいやというほどしてきたが、こういう形で実践するとは思いもしなかった。
そこで、常磐ラボの価値とは何なのか、ということについて改めて考えることになった。常磐ラボという場所そのものはただの空間で、その価値はそこでの取り組み、つまりコンテンツにある。
・「エンむすびの会」という学習支援活動
・「常磐サロン」という多世代のコミュニケーションの場
・その他高校生たちの居場所になったり、「こういう活動に取り組んでみたい」という若い人を支援するなど
いろいろなことをやっていく中で、若い世代の子たちが本当に輝いていくし、自発的な取り組みを始めてみたい!という前向きな気持ちに変わっていくのを目の当たりにする。
そう考えたとき、そこに集まるのはお金よりも先に「気持ち」だろうと思った。この場所をおもしろいと思ってくれる人達や、この場所を守りたいと思う人達、この場所で言い出会いを持つことができたという経験をした人達や、この場所をもっと広めたいという人達、そういう人達の気持ちが集まって資金が生み出されるのだなと思った。
でも今度はそういう「気持ち」をお金に換える(最近はやっている言葉では『マネタイズ』というけれど、あまりこの言葉は好きではないかな)必要があるが、これがなかなか難しい。なぜなら、そういう気持ちってお金に換算してもそんなに大金にはならないし、少額のお金を人に届けるにはコストがとてもかかる。銀行振り込みだと手数料のほうがバカみたいにかかるから、100円とか200円みたいな少額の送金はする気にならない。でも現金を届けるにはそれはそれで手間がかかる。
FinTechが作りだそうとする社会
こうした、「気持ち」を届ける少額の送金をする技術がこの数年の間に飛躍的に発達した。「金融Finance」と「技術Technology」を融合させたFinTech(フィンテック)という新しい金融の技術がそれだ。
バングラディシュで始まった「グラミン銀行」という少額の融資を無担保で行う「マイクロファイナンス」という手法がそのさきがけだが、日本ではクラウドファンディングが代表的だろうか。たとえば、CAMPFIREというクラウドファンディングのサービスを作った家入一真さんは
個人の熱意がモノやサービスになったり、応援の気持ちがその人の生活を助けたり。一昔前までは信じられなかったような世の中が今、確かにある。もちろんそれは企業活動と比べたら規模は小さいものかもしれないけれど、彼らの熱い想いと活動に共感した人々が彼らの活躍を夢見て、応援する優しい世の中は、僕たちの身の回りで静かに生まれているのだ。(『なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』 p.3より引用)
と書き、熱意や気持ちを応援する気持ちがお金となる世の中を実際に作り上げようとして、サービスを立ち上げた。
ラボの運営にはクラウドファンディングのようなリターン品は無いし、常磐ラボはプロジェクトが単発であるわけではなくて『常設の場』だ。だから、クラウドファンディングで資金調達するのは選択肢には無かったが、でも実際お金はこれまでとは違う形で動き始めているし、「思い」とか「熱意」とか「共感」とか「信頼」とか、ちょっと前なら「霞を食って生きてはいけない」と思われてしまってあきらめていたことが、実現可能になりつつある。
僕が note を選び、そこでのサポートをお願いすることによって少しでも常磐ラボの資金調達をしようと思った理由もここにある。note のサポート機能は、「投げ銭」的に少額を個人へ直接送金することができる。まさに、FinTechのフロンティアだ。冒頭の『「なんだか新しい社会のあり方を目の当たりにしている」と感じられて楽しい』というのもこの点にある。
クラウドファンディングのような返礼品は用意できないし、スキームに合わないと思うのは先に書いた通りだが、noteに記事を書くことを通じ、自分が大学教員として得意とする「書くこと」や「知識のシェア」というスキルは利用することができると思う。「常磐ラボという場とコンテンツが生み出す価値への想い」をお金に換えることはもしかしたらできるかもしれないと思った。そして、経済学の教員として、この新しい情報技術が生んだFinTechを自分でも利用してみたいという感情によって、僕はnote に記事を書いている。
実際のところ、たくさんのサポートがあるわけではないが、それでもサポートをしてくれる人達がいることには心から感謝している。願わくば、今後もサポートが増えてほしいが、それをしていくためには自分の提供する記事のクオリティを高めなければいけないというこの感じは、寄付を求める行為には無い刺激を与えてくれる。
もちろん、すべてがFinTechで解決可能なわけではないし、これまで通りの伝統的な金融も残る部分はあるだろう。でも、間違いなくこの技術は世の中を変えていく可能性がある。企業でも行政でもない、もっと緩やかで多様性に富んだ個人のつながり(たぶんまだ固有名詞は無いと思う)が、いろんな社会問題を解決する手段になると思うし、そういうつながりを作る土台をFinTechによって作れる可能性がある。これは、単純に言って、面白い。
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