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努力量が上位1%の塾で働いた経験

「風を掴めばブタでも空を飛べる」
ある記事の見出しが目にとまった。中国の大手総合家電メーカーのCEOが言った言葉だった。飛び込む環境を見極めろというメッセージが伝わってくる。

学生時代の4年間、私はとある大学進学塾でチューターとして働いていた。アルバイトを始めた当初は生徒数も少なくて、合格実績もあまり高くなくて、スタッフ全員でこれはどうにかしなければってミーティングしていく中で、校舎長がこう切り出したのを覚えてる。
「頑張るのが当たり前の環境を作っていこう。」
それをどうやって実現するのか。ミーティングが進んでいく中で、ひとつのシンプルな案が出てきた。それは、生徒と毎週面談をすること。でもただ面談するだけじゃなくて、面談していくなかでのお約束事もいくつか作ることになった。

お約束事①
原則、統計的意思決定を行う。
幸いにも全国に1000校舎以上ある大手の塾で、基本的な統計量はぜんぶそろっていた。面談の中で作る学習計画は、基本この統計量をもとにしていて、生徒のモチベーションが下がったタイミングで、尻を叩くように合格するための統計データを提示してた。
※これだけ聞いたら怖い先生よね。こう見えて「先生いるだけで落ち着く」ってよく言われたんだよ?😅

お約束事②
目標を1日単位まで分解する。
残りの期間でどれだけの勉強量をこなせばいいかを①で決めたら、次はそれをひたすらに分解していく。だから初回面談はめちゃくちゃ時間かかるの。
2時間くらい。いまの偏差値から第一志望校合格までの学力的距離を出して、何をどれだけ勉強すればいいかを洗い出して、そのためにはどのレベルのどの授業を受講すればいいか決めてって…
まるで設計図を作っていくみたい。正確には、初回面談では1か月単位までしか分解しないんだけどね。さらに月のはじめで週単位に分解。それをさらに週の初めで日単位に分解って感じで。塾にとっては良くないことかもだけど、他社の参考書とかもゴリゴリ勧めてた(笑)
これアルバイトのやること?って思うこともあったけど、校舎長にアドバイス貰いながらなんとかこなしてた。

お約束事③
面談をしなくても良いように面談する。
最高の仕事はその仕事をしないこと、っていう言葉をたまに見かけることがある。より正確には、その仕事をしなくてもうまく機能するような仕組みづくりをすることだって理解してる。
これと似たような感じで、今後面談をしなくても、生徒が自分自身で計画を立てられるようにするという意識で面談してた。生徒にはきちんとその意図も伝えてた。〇〇頃には自分で計画立てられるようになろうねって。だから今は一緒に計画立てていこうねって。そして生徒が自分で計画を立てるようになったら次はその添削。確認する観点は主に2つ。
・実行可能な計画になっているか
・なぜそれをやるのかを説明できているか
こうやって生徒の自立を促してた。もちろん卒塾まで面談はするけど、面談の所要時間は徐々に短くなるようにしてた。理想の面談は、生徒が学習計画をもってきて、私がいくつか質問してそれで終わり。
とはいってもそれがうまくいかない生徒の方が多くて、自分の実力不足を痛感していた。

長くなりましたすみません。
さて、この結果どうなったのか。目覚ましい結果は大きく3つ。

成果① 生徒の学習量全国1位(注釈あり)
働いていた塾は、毎月、各校舎の平均学習量のデータから全国ランキングを作成してた。1人あたりの平均学習量のランキング。私の働いていた校舎はなんと2か月連続で全国1位!ほかの月も結構上位だったりした。全国1位は上位1%どころか0.1%だから凄いよね。
生徒たちよく頑張った!いや頑張り過ぎててたまにこちらがストップをかける時もあった。頑張る姿は素敵だけれど、頑張りすぎてはいけないからね。健康第一。まぁでも生徒同士での教えあいも多くて、スタッフへの質問もめちゃくちゃ多くて。出勤した瞬間に質問が飛んで、最初の2時間くらいは質問の予約で埋まるみたいな。今思うとみんなとんでもないエネルギーだったな。

成果② 第一志望校の合格率60%
全国で第一志望校に合格する生徒はおよそ15%って言われてるらしい。
そんな受験業界で第一志望校合格率60%。もちろん第一志望校が難関大の人だけじゃないから、これを聞いて疑問符が付く人もいるかもしれないけれど、そこは関係無いのでスルーしておきます。補足が蛇足になっちゃうし。
逆に言うとそれだけやっても60%。全員が目指した場所に合格するわけじゃない。厳しい世界。もちろん泣いてる生徒もいた。そりゃそうよね。私も1浪したから気持ちはすごくわかる。先生の前で号泣してたな。
それでも、この60%という結果はすごいと言っていいのではなかろうか。どこまで行っても生徒が頑張っただけなんだけどね。

成果③ 校舎の生徒数3倍
もともとは生徒数20名の小規模校だったんだけど、徐々に実績も伸ばしていって生徒数も伸びていって、アルバイトを始めて3年目には高校3学年+浪人生全員で60名を超えてた。校舎の収容数がギリギリ、いやぶっちゃけアウトだった。受験学年の生徒以外も全員来たら、受講するための席は足りてなかったと思う。4年目の年はうまく生徒募集をかけられなくて、人数が減ってしまったんだけど、それも学びになった。上手くいっている時も、長期的な目線で行動しなきゃね。

今思うと、私の働いていた校舎って教育版ライザップみたいだなって思う。メンタリングに力を入れているって意味で。生徒からは受験勉強以外の相談も割とあって。
楽して頑張れる仕組みづくりが成された環境が凄く大事だって実感した経験だった。アルバイトで楽しく、必死にやってきたあの4年間で、校舎長のあの言葉は実現できたような気がする。
「頑張るのが当たり前の環境を作っていこう」
受験に満足のいく結果になった生徒も、そうでない生徒も、それぞれまた新しい道で楽しく過ごせているといいな。今でもあなた達の顔を思い出します。

初めに書いた言葉をもう一度。
「風を掴めばブタでも空を飛べる。」
ご、誤解しないでね?
生徒をブタ呼ばわりするつもりはないから。
成果が出やすい環境があるって話。
飛び込む環境を見極めろって話。
自分の当たり前が上に引っ張られる環境、
これを選ぶことが如何に大切か。
努力量が上位1%の塾で働いた。
これらの学びが今の仕事に、人生観に大きな影響を与えている。
教え子たちにも心からの感謝を伝えたい。
きっとこの先、
再会することはないかもしれないけれど、
それでも、
君たちと関われて本当に良かった。
ここからは、いやここからも、どう生きるかは君たち次第。
空を飛びたきゃ勝手に飛びなさい。
それでは。
元偏差値30台のブタより。







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