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【CBC】飛行機恐怖症の女性とライト兄弟①

今回は11年前の僕のセッションに対してスーパビジョンをしてみます。当時の僕はコーチを始めて8年目です。勢いのある中堅コーチですね

YouTubeで公開されているセッションですが、クライアントのユニークさもあって非常に人気のあるものです。ぜひビデオもご覧ください

しかしこのコーチ真っ黒ですね(笑)若気の至り。。。

気を取り直してスタートしましょう

宮越「お願いします。」
CL「宜しくお願いします。」
宮越「僕がちょっと前に出すぎですね。はい、一緒にね、下がると訳が分からなくなっちゃうから(笑)えっと、じゃあ、もう一回聴かせてもらいたいんですけど、この時間、一緒に何ができたらいいですか?」
CL「えっと、飛行機が、こう、乗れるようになりたい。乗れる、うん。」

テーマ1

 明るくて楽しい感じでいいですね。テーマは「飛行機に乗れるようになりたい」です。

 書き起こしでは分かりませんが、コーチの相槌がうるさいですね!(笑)ビデオをみてみてください。クライアントによっては、圧迫感を感じる場合もあると思います。

 ここら辺は難しいところで、

明るく楽しくドンドンきいていくことで本音を喋ってもらうスタイル
VS
ゆっくり丁寧に深めていくことで、革新に近づくスタイル

 その両方に良さがありますので、コーチのキャラクターや、クライアントの状態に合わせて選択すると良いですね

宮越「『乗れるように』もう少し教えてください。はい。」
CL「こう、今までは飛行機を極力、こう避けてきていたんですよね。で、実際に中国に行ったことがあるんですけど、船で行ったんですよ。」
宮越「お疲れ様でした。あはは(笑)」
CL「2泊かけて(笑)」
宮越「おー!」
CL「そうなんですよ(笑)だから、それはそれで、だったりとか。友達に沖縄行こうって誘われたときも、あ~、飛行機がな~って思っちゃってるんですよ。だから、なんか楽しみを半分くらい、こう、自分でなんか、塞いでるような気がして、」

テーマ2

 コーチは楽しそうで良いですね。クライアントのキャラクターもありますが、コーチが積極的に笑っているので、よい関係でセッションが進んでいっていますね。

宮越「『自分で塞いでる』うん。」
CL「自分で、こう、塞いでる。うん。自分で、うん、損してるっていうか、楽しみを。なので、飛行機乗りたいって思いたい。」
宮越「飛行機乗りたいと思いたい?」
CL「乗りたい!って思いたい。」
宮越「あ、飛行機乗りたいと思いたい。」
CL「乗りたいって思いたいのかな?あ、でも、外国行きたい。外国いろんな国に行きたいんですよ。アメリカとか。明らかに飛行機じゃないと。」
宮越「そうですね。どこも船ってわけにはいかないですもんね。うん。」
CL「ので、アメリカとかイギリスとかいろいろ行きたいので、そのためには、やっぱり飛行機に乗らなきゃいけないだろうというところで、飛行機乗れるようになりたい。」

テーマ3

「塞いでいる」をバックトラック(おうむ返し)しましたね。そのことで、クライアントは「塞いでいる」をめぐって思考を深め始めました。

 そして楽しみを損している。→飛行機のりたいと「思いたい」

となったわけです。バックトラックに変えて

「塞いでるっていうのは?」
「なにを塞いでるの?」
「誰が塞いでるの?」
「塞いでいるものが外れたら、何が起こるの?」
など色々な質問ができますね

そして「乗りたいと思いたい」もバックトラックしました。すると「乗りたいのかな。。。。でも外国行きたい」

となりましたね。これもコーチのバックトラックによって内省が進んでいる事例ですね。


宮越「うんうん、飛行機乗れるようになりたい。今まで乗ったことは?飛行機は。」
CL「あります。2、3回ぐらい。」
宮越「あら、ナイスチャレンジ。」
CL「はははは(笑)」
宮越「えー、乗った時はどうだったんですか?」
CL「乗った時は、いちばん最初に乗った時はなんか、乗せられてる感じだったんですよ。家族と、もう小っちゃい頃に家族との旅行で乗ったので。まあ、しょう、やむを得ず乗ったみたいな感じだったんですけど。まあ、意外と大丈夫だったんですよ。1時間ぐらいだったかな。うん。で、大学、2回目が大学の卒業旅行の時に、中国に行くっていう。あ、そうだ。どこ行くっていう話になって、友達もいるから、自分の飛行機が乗れないということも押せないと思って、じゃあ、まあ、近場を、近場を、中国でいいよね、みたいな感じで、中国に行く」
宮越「行きました。はいはいはい。」

背景1
 

 ビデオをみてもらったら分かりますが、終始コーチクライアントともに楽しそうですね。

 そして注目すべきは最後の

宮越「行きました。はいはいはい。」

 です。これは「次に進んで!」という気持ちで言っていますね。セッションの初期段階なので、クライアントの話を丁寧にききたいけど、話が長くなってきてるので、とっとと進めたい。そのバランスを取ろうとしてますね。いいと思います。

 コーチングはドライブと一緒。飛ばすところは飛ばして(ただし事故には気をつけて)、逆にゆっくり楽しんだり、徐行したり、そのときどきによってスピードを変えていくのがよいのです。

CL「で、3回目はタイに行ったんです。で、そこから、そこが怖かったんです。タイが6時間ぐらい乗ったんですけども、やっぱ、揺れますし、なんか、なんだろう、あの、揺れる感じがすごく怖くて、もう嫌だって思って。」
宮越「え、それまでは怖くなかったの?」
CL「あ、なんか、最初から怖かった。」
宮越「最初から怖かった。えっと、4年生の時から?小学校4年生の時。」
CL「小学校4年生の時から。」
宮越「なんか、さっきの、その家族で行った時から怖かった。」
CL「怖かった。飛行機自体はもう怖かったですね。」
宮越「乗る前から。」
CL「乗る前から。」

背景2

 「それまでは怖くなかったの?」で答えがYESなら、ビフォアフターで何が変わったのかに行こうと思ったのでしょうか

 でも答えはNOでした。

 別案は「揺れる感じがすごく怖くて」に対して「揺れているとどんなこと考える?どんなイメージが浮かぶ?」とかをきいてみることですね。その答えによって、揺れ(事実)に関してどんなイメージ(解釈)をもっているかがわかるので、それを起点にどう関わると良さそうかを考えられますね

宮越「で、乗って、本当に怖いなって思ったのはタイに行った時?」
CL「タイに行って、だから、揺れを感じた時、あ、やっぱ嫌だ、これ。」
宮越「ふふふ(笑)『やっぱ、嫌だ、これ』」
CL「やっぱ怖いって思いました。」
宮越「怖いってどんな感じなんですか?」
CL「えー…、あのー、ガガ!って揺れるじゃないですか。あの、揺れが、なんだろう。あれが怖い。なんか、えー、なんだろう…あれ怖くないですか?揺れた時。」
宮越「怖いですよ。うん、あははは」
CL「うん、あははは(笑)」

背景3

 クライアントの「怖くないですか?揺れた時」に対して「怖いですよ。うん、あはは」と答えています。

 ある種のノーマライズ(クライアントに起こっていることが普通だと伝えること)ともいえますし、クライアントとの信頼関係を強化するような関わりともいえます。

宮越「怖いですよ、それは。だって、乗ってるものが揺れるんだもんね。怖いです、怖いです。多分、でも、なんか、怖さの質が違うと思うですよ、多分。どんな怖さなのかなっていうのか、何が起きてるのかなっていうことに興味があるんですよね。」
CL「えー、なんだろう…いや、落ちる怖さかな~……落ちたら嫌だなって怖さ。」
宮越「そりゃそうですよね。嫌ですよね、それはね(笑)えー。分かったよ。えっと、もう少し、ちょっと、じゃあ参考までに聴かせてもらいたいんですけど。大丈夫ですか?もう、既に気分悪いですか?」
CL「怖い。」

背景4

 コーチは怖いと言いつつ、多分(あなたとは)怖さの質が違うと思う。と言って、クライアントの中で何が起こっているのかきいています。

 飛行機に不安を感じるのは普通だが、あなたはその上、さらに特別なイメージをもってしまっているから、余計怖く感じているのではなかろうか?と言っているわけですね。

 飛行機の怖さは完全に無くならなくてもいいし、それが普通だけど、それとは別に、過剰に怖がっているのは、なにか特別な捉え方をしているからではないのか?そしてそれが変化するなら、あなたの感じ方も変わっていくのではないか?とクライアントに示唆していますね。

 この路線で進めていこうとしていたら、クライアントの状態がすでに悪くなってきました。コーチはそれに気がついて、確認しました。クライアントの答えは「怖い」でした 


宮越「ねえ、ねえ、ですよね。はい、はい。無理なくいきましょうね。無理なくね。はい。えー、乗れるようになりたい。もう一回ね、ちょっと確認したいんですけど、『乗れるようになりたい』。大丈夫ですか?こんなに怖いものに乗れるようになりたい(笑)大丈夫?乗れるようになりたい。はい。それどうしてですか?」
CL「外国。。。に行きたい。うん、アメリカとか。なんか、本当にアメリカってあるのかなって思ってるんです。」
宮越「あ、まだ、薄ら信じられない。あはははは(笑)」
CL「あれ~、みたいな。それくらい、なんか、遠い国っていうか。アジアしか知らなくって(笑)(宮越「うんうんうん」)」
宮越「そうですよね。どうも、中国はあるらしいし、タイもあるっていうのは確認できたと。はい。」
CL「アジア人はいるんだなみたいな感じなんですけど。」
宮越「アメリカは、まだ、ちょっと。」
CL「アメリカは本当に夢の国のような気がして。うんー。」

目的1

 怖いにいってしまったので、プロセスを止めています。これも良いですね。クライアントにいい状態で飛行機に取り組んでもらいたいので、作戦変更しようとしています。

CO「こんなに怖いものに乗れるようになりたい(笑)大丈夫?」

 よいですね。怖いという気持ちに寄り添いつつ。笑いも交えて、乗りたいの?と問いかけイエスという答えを得ています。しかもコーチの余裕な感じが、クライアントにも安心と希望を感じさせていると思います。

 その後もクライアントといい状態で楽しくセッションをしていくために、笑いで場を和ませ続けています。

宮越「え、ちょっと想像してもらいたいんですけど、行ってどんなことしたいとかあるんですか?」
CL「うん、やっぱり、観光。世界史をずっと取ってたので、遺産とかすごく好きなんですよ。そういう教会巡ったりとか、そういう世界遺産とかを巡ったりするのは、そういう世界各地に行きたいなっていうのはあります。」
宮越「一番行きたいのどこですか?アメリカですか?それ以外にあるんですか?」
CL「え、うーん、ハワイ。イタリアと、ハワイ。」
宮越「イタリアとハワイ。」
CL「うん、あー、イタリアとハワイ。うん。」
宮越「イタリアとハワイですね。はいはいはい。」
CL「あー、ハワイかな。」
宮越「ハワイ。」
CL「ハワイ、ハワイ。」
宮越「敢えて言えば、ハワイ。」
CL「ハワイ。」

目的2

 目的を聞こうとしていますね。これは大切です。そもそも何で飛行機にのりたいのか、のれたら何がおこるのか。それを確認すること。

 ここに本当に大切な目的が存在しないなら、無理して飛行機に乗らなくてもいいわけですし、目的が明確になり、そのためには飛行機が必須であるなら、クライアントのモチベーションは上がります。

宮越「はい、はい。ハワイ。どうしてハワイなんですか?」
CL「なんだろう。なんか…なんかハワイって皆行っていいって言うじゃん、言うんですよね。で、嫌な人は聴いたことがなくて」
宮越「俺はハワイ嫌いだって言う人は。うん、確かに。」
CL「良いって言う、その良さを確かめに行きたいって興味あります。私も行って、本当にハワイって、あ、これが良さなんだっていうのを感じに行きたい。」

目的3

 僕はこういう粘り好きですね。確かにハワイは悪くないんだけど、それでもどうしてハワイなのか?を言語化してもらうべく粘るコーチ。 

宮越「ちょっと想像なんですけどね。じゃあ、えっと、よいしょ。じゃあ、こちら側にどうぞ。はい。で、ハワイに行ったとするじゃないですか。まあ、想像ですけど。ここ、ハワイ。ハワイの椅子です。座って下さい。はい。」
CL「はい。」
宮越「で、なんか、確かによかったと。うん、なんか、海が良かったのか、山が良かったのか知りませんけど確かに良かったと。なんか、どんな体験ができたらとか何があったら良かったとか、来て良かったとか、やっぱり良かったんだって思えそうですか?」
CL「あー……なんか、自然を、こう自然の中で、戯れる感じ。」
宮越「『自然の中で戯れる感じ』はいはいはい。例えば、どんな感じですか?」
CL「例えば…あ、…こう、海辺とかに寝っころがるとか。その、そういう感じ、ありふれたハワイの1日を感じるみたいな。お昼寝しながら、ハンモックの、揺られながら、感じるみたいな。」

目的4

  コーチはクライアントに具体的にイメージしてもらうために離れた場所に椅子を置いて、そこに座りながらハワイにきたイメージをしてもらおうとしています。

 物理的に場所を変えると気持ちが切り替わったり、イメージが変わったりします。ナチュラルにやっていますね

「自然の中に戯れる」というキーフレーズが出てきましたが、コーチはそれで終わりにせず、「例えばどんな感じ」ときいて具体例を出してもらい理解を深めようとしています。

 宮越「じゃあ、ちょっと想像してください。ハンモックに揺られながら、ハワイでこういう時間を過ごしてるの感じて。」
CL「で、フラダンスとか踊って、で、子どもたちが学校から帰ってきて――みたいなのを、ああ、いいなあ~、外国に来てるな~っていう。」
宮越「じゃあ、ちょっと想像してください。外国に、ああ、いいなあ~、来てるな~。どんな気持ちですか?」
CL「あ~…、あ~、気持ちが良い。なんか、癒され、癒し。癒されてる感じ。」

目的5

 コーチは粘り強い。しつこいともいえますが。。。クライアントにハワイでの時間を具体的にイメージしてもらってます。そして

宮越「なんか、こういうこと体験できるって人生でどんな意味があると思います?」
CL「あ~、なんか、異文化、異文化の交流みたいな感じ。」
宮越「こういうことが、異文化の交流ができるような人生って、なんだろう、何が良いんだろう?とか、どうしてこれが欲しいんだろう?って。」
CL「なんだろう。」
宮越「うん、ちょっと良いよ。そのハンモックに揺られながら、やっぱり、これがない人生よりは多分あった方がいいんですよね?」
CL「うん。」
宮越「うん、ね。これの何が良いんだと思います?」
CL「えー…これの…これなんだろう。なんか……出逢い?」
宮越「うん、何との出逢い?」
CL「世界中の人との出逢いみたいな感じ。」
宮越「それがあると自分がどんな影響受けたりとか、どんな自分になったりとかするんですか?」
CL「なんか…なんか、やっと…会えたっていうか、やっと会えたな、皆に会えたなって感じ。うん。」
宮越「…じゃあ、ちょっと想像してくださいね。こうやって、やっと皆に会えますよね。で、そうするとハワイに、なんかハワイにまた来たくなるのか、それともいろんな国に行きたくなるのか。うん。」
CL「あー。あ、いろんな国に行きたい。」

目的6

 具体的なイメージをもってもらったら

「なんか、こういうこと体験できるって人生でどんな意味があると思います?」

 という質問で、その体験の中にある価値観に気づいてもらおうという関わりですね。

 クライアントからは「出会い」「やっと皆に出会えた」などの答えが返ってきました。興味深いですね。

 いろんな場所に行き、いろんな人たちに出会うというのは、生きてる意味の一つ。それも大きな意味の一つですよね。

 それが人生の醍醐味であり、そしていろんな人と出会うことで、自分が何者かも発見していくのが私たちです。いろんな人と出会うから、それぞれの人との違うところや重なるところから、自分は何者なのかに気づいていくのです。

 クライアントは、もっと世界を人生を楽しみたい。いろんな人と会うことで、自分の人生とは何なのかを知りたい。そして自分の本当の人生を知りたいと言っているのかもしれません。

 そして、それを助けてくれそうなのが飛行機である。と。

 でもコーチは、まだ探究をやめません。あなたはハワイに繰り返し通いそう?それとも色々いきたいの?

 そうやって確認しながら、クライアントが求めているものは何なのかを探究しています。ここからどう展開していくのでしょうか。

 次回に続きます。まだコーチはクライアントの望んでいることが何なのかを丁寧に確認しようとしている段階ですが、ここから先に面白いことが色々と起こっていきます。お楽しみにどうぞ

僕たちと一緒に人生を変えるコーチングを身に付けたいかたは



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