質問から逃げない(前編)

 今日はちょっと変わった記事です。僕はセミナー講師の仕事を長年やっていますが「質問から逃げない講師」として一部で有名です(笑)

 実際にされて困る質問もないわけではないですが、どんな質問がきても悩まないようになったのは、自分の中でガイドラインがあるからです。

 セミナーや研修の講師をされている方や、それを仕事にしたいと思っている人は仕事の参考にしてみてください。そうでない方も、家族や友達、仕事関係の人から「簡単に答えられない質問」を受けたときの指針になるのではないかと思います。

 では行ってみましょう!!

コーチはどう思いますか?

 僕が、質問への対応力を鍛えられたのは、何よりもコーチをしてきたからからだと思います。

 コーチってクライアントからの質問にそのまま答えることはないんですよね。何しろ「答えは相手の中にある」がモットーですから。。。だから

CL「別れた方がいいのでしょうか。コーチはどう思いますか?」
CO「私は別れるべきだと思うよ。だって相手はずっと同じことをやっているし、変わらなそうだから」

意見を伝える

 とかって、あんまりコーチは言わないよね。もし言うとしたらこんな感じかな

CL「別れた方がいいのでしょうか。コーチはどう思いますか?」
CO「私は別れるべきだと思うよ。だって相手はずっと同じことをやっているし、変わらなそうだから。。。。って言われたら、あなたの中で何が起こる?

参考意見

 とか

CL「別れた方がいいのでしょうか。コーチはどう思いますか?」
CO「私は別れるべきだと思うよ。だって相手はずっと同じことをやっているし、変わらなそうだから。。。。あなたの中にも、そう思ってる自分もいるんじゃない。。。でも、別れることを選択しない自分もいる。。。どうして、別れようとしないんだろう?

現在の目的

 とかね。結局相手に考えて欲しいわけです。だから自分の意見を言わずに

CL「別れた方がいいのでしょうか。コーチはどう思いますか?」
CO「どうして私の意見をききたいのかな。私の意見をきいたら、あなたに何が起こるんだろう」

期待

 とか、何を期待しているのかを相手に考えてもらったり、

CL「別れた方がいいのでしょうか。コーチはどう思いますか?」
CO「それは私にはわからないよ。あなたの人生だから、あなたが決めるしかないことだと思う。だから教えて欲しいんだけど、このまま行ったら、一年後、あなたはどんな生活をしてなんて言ってそう?」 

未来予測

 みたいに未来予測してもらってから、「あなたが人生で大切にしたいことは?」みたいなところに繋げようとしたりするわけです。続きを見てみましょう。

CL「別れた方がいいのでしょうか。コーチはどう思いますか?」
CO「それは私にはわからないよ。あなたの人生だから、あなたが決めるしかないことだと思う。だから教えて欲しいんだけど、このまま行ったら、一年後、あなたはどんな生活をしてなんて言ってそう?」
CL「うーん。変わらなそう。結局彼は、私のことをぞんざいに扱うし、私はそれでも別れることができずに、誰かに愚痴をこぼしてそう」
CO「そっか。自分から別れようとしないのは、何を守るためなのかしら」
CL「。。。。寂しくならないように?」
CO「なるほど。。。他の可能性はどう?」
CL「。。。。あー。間違った選択をしたと思わないため」
CO「どういうこと?」
CL「付き合ったのが間違いだと思って後悔したくないから」
CO「言ってみてどう?」
CL「相手の機嫌損ねたくないとか、寂しくなりたくないからとか、そういうことかなと思ってたけど、自分が間違ったと思いたくなかったんだとわかってびっくりした」
CO「そっか。。。そう思っている自分になんていってあげたい?」
CL「その気持ちはわかるけど。。。」
CO「わかるけど」
CL「間違ったよね(笑)」
CO「そっか!だから?」
CL「同じことが続くんなら、次に行かなきゃ」
CO「なるほど、それに対して『間違ったと思いたくない自分』はなんて言いそう?」
CL「そうだけど。。。」
CO「何?」
CL「彼のいいところもあるから、変わる可能性があるならチャンスをあげたい」
CO「そっか。言ってみてどう?」
CL「確かに、それができるんなら、それもありだと思う」
CO「なるほど、ではここから何が話せたらいいかな」
CL「彼とそうなる可能性があるのか、そのためにはどうしたらいいのか考えたい」
CO「それでダメなら、次に行く覚悟でってことかな?」
CL「。。。。。そうですね。そうじゃないと変わらないですもんね」

指針

 少し長くなりましたが、例えばこんな風に、相手の質問があっても、そこからまた相手に戻して、相手の中から指針が出てくるように関わっていくことが問われるのがコーチです。だから質問に答えるのではなく、質問返しをしながら、プロセスを進めていく力が鍛えられますね。

だいじゅさんはどう思いますか?

 これと同じようなことが、先輩コーチやコーチングの先生として関わっているときにも起こります。例えば

参加者「だいじゅさん。ちょっときいていいですか」
宮越「もちろん」
参加者「だいじゅさんは、どうやってコーチングうまくなったんですか?」
宮越「ん?上手くなるって?」
参加者「だいじゅさんコーチングうまいじゃないですか?」
宮越「ありがとう。あなたが思う上手いってどういうところ?」
参加者「うーん。難しいテーマでも、落ち着いて捌けるし、どんどんアイディアが湧いてきて、短い時間でクライアントが変わっていくから」
宮越「なるほど!もうちょっと教えてもらいたいんだけど、あなたはまずはどんなコーチになりたいのかしら」
参加者「。。。。そんな短い時間でやれなくてもいいけど、落ち着いて慌てることなく、自信をもってクライアントをリードしたい」
宮越「で、クライアントがどうなったらいいの?」
参加者「。。。納得感のある結論というか、これやってみたい!ってなると良いです」
宮越「それらをまとめると?」
参加者「自信をもってリードできて、クライアントがやってみたくなるような結論になればいい」
宮越「言ってみてどう?」
参加者「はい。そうなりたいです」

目的は質問者の中に

 アドバイスするにしても、まずはこの程度までは相手に教えてもらいたいわけです。だって、相手が本当のところ何を求めているのかわからないまま、こちらの意見を言ったところで相手の役には立たないからです。

 相手が自分の人生を生きること(自分の課題を乗り越えること)をサポートするのがコーチですから、後輩や参加者に対しても、一般論で答えるのではなく、相手の人生に役立つことを一緒に考えたいわけです

 そして、コーチマインドを持っていたら、ここから相手の中にある答えも引き出してみたくなるわけです。

宮越「オーケー。では、自分に対してアドバイスしてみてもらいたいんだけど、そうなるためにあなたが大切にしたほうがいいことはなにかな?」
参加者「うーん。まずは相手の本当に望んでいることに意識をむけることだと思います」
宮越「どういうこと?」
参加者「表面的なことでなくて、相手が心の底で望んでいること」
宮越「そこに意識を向けるとどうなるの?」
参加者「それが明らかになってくると、相手はそれを実現したいと思うし」
宮越「うん」
参加者「そのための方法を一緒に考えられる」
宮越「いいね。一緒に方法を考えられるから、なんだろう」
参加者「考えられるから。。。。あ!納得の結論になる!!」
宮越「すごい!!本当だね!!他には何を意識すると良い?」
参加者「。。。。。ああ。とは言えまずは何の話からきくとよいか、かな」
宮越「どういうこと?」
参加者「いや、これも授業で言われたことですけど、まず聞いて欲しい話を聞いてもらえたら、落ち着くので、そのあとに本当はどうしたい?を問いかけるとよい」
宮越「すごいじゃん!言ってみてどう?」
参加者「いや。。。シンプルに考えた方がいいなと思いました。というのも、いろいろやろうとして最近難しくなっている気がするので」

手法も質問者の中に

 いかがでしょうか。こんな風に関わると、相手の中から、答えが出てくることが多々あります。私たちの無意識には、たくさんの情報が眠っていますから、うまく引き出して整理することを手伝えると、相手が自分で答えを発見するのです。

 そして、このやり方だと、いくつもの良いことがあります。

①自分で発見するのが自信がつきます
②自分の課題に即した答えなので役に立ちます
③自分の中から答えを見つけるやり方が学べます

 なので、こんなやり方をしたくなるのです。もちろん僕は意地悪がしたいわけではありませんし、アイディアがあげたくないわけではありません。だから、このようなプロセスの後に、必要に応じて僕のアイディアも付け加えることもあります。

 こんな風にやってきたので、相手から質問されたときには、以下のような発想法で関わるわけです

①最低限の確認項目

具体的に何のことをきいているのか?(具体例)
僕の回答によって何が起こればいいですか?(目的)

最低限の確認項目

この2つは少なくとも質問します。だから質問返しをしないことはないのです。質問返しを嫌がる人もいますが、このことはわかってもらわないと困るので例えば以下のような関わりをします

CL「話してこない人に、どう関わったらいいですか?」
CO「役に立つ回答をしたいので、ちょっと確認してもいいですか?」
CL「はい」
CO「話してこない人に関わるって、具体的には何のことを言ってるんですか?」(具体例)
CL「会社で、こちらから声をかけても、ほとんどリアクションがない人がいて、その人にどう関わったらいいかわからないんです」
CO「リアクションがないって?」
CL「たぶん、なんて答えたらいいか分からないんだと思うんですけど、どのように質問したらいいかこっちも分からなくて」
CO「なるほど。では僕の回答によって、何が起こったらいいと思っていますか」(目的)
CL「相手への上手い質問の仕方とかが見つかって、相手の考えがきけるようになると良いと思います」

具体例と目的

 これくらいのことは明らかにしないと、答えようがないですし、仮に何かを答えたとしても、相手の役に立てるとは限らないわけです。ですから常にこのことは確認しています。

 そして、これくらいでも明らかになれば、こちら側も何をアドバイスしたらいいかわかってきます。そして、もしまだアドバイスが思い浮かばないとしたら、もっと具体的に相手にきけば良いのです

例えば

CO「わかりました。もう少しだけ教えて欲しいですけど、相手の人は何て答えたらいいか分からないみたいと言ってましたけど、どういうことですか」
CL「。。。。その人は転職してきたばかりの人で、経験はたくさんあるはずですけど、うちの会社でのことはあんまりよくわかってないので、自分の意見が正しいのか分からないんじゃないかな」
CO「なるほど。あとは?」
CL「あとは、僕がどんな人間かもまだよくわかってないから、なんて言われるかわかんなくて、警戒してるのかもしれません」

追加情報

 このように情報が明らかになればなるほど、こちらも価値がありそうなアドバイスがどんなものか思い浮かぶようになってきます。

 そして何よりも、このように具体化されたら、相手自身でもどうしたらいいのかのアイディアが思いつくのです。

 実は、これがコーチングの原理なんですよね。相手の目的やゴールと現状何が起こっているかの双方が具体的になれば、どうしたらゴールに近づくのかは自ずと明らかになるのです!!

②コーチングが必要なのかもしれない

 単純にこちらの意見が知りたい場合や、相手が教科書的な知識を求めている場合などは、「何のために何が知りたいのか」を確認したら、あとは回答してもいいでしょう。

 でも、コーチングが必要な場合もたくさんあるのです。例えば「どうやったら彼女ができますか」とか、こちらがもっているノウハウを教えるだけでは殆ど役に立たないこともあると思います。だから

「どんな彼女が欲しいのか。彼女とどんな関係を築きたいのか」(ゴール)
「それに対して今どんな状態なのか」(現状)

を明らかにして、相手が内外のリソースを活用して、自分にできる効果的な動き方をしていったり、自分のとった行動とその結果から学習成長していくプロセスをサポートすることが役に立つのではないかと思うのです。

 結局、彼が幸せになっていくために必要な知識は、こちらには殆どないという前提で、可能なところまで彼から引き出した上で、役に立ちそうな考えがあれば最後に伝えるということになってきます。

 こういった感覚で相手の質問に接することで、自分が答えを出さなければいけないというプレッシャーを自分にかけることもありませんし、的外れな回答をすることも減ってきますね。

 今回はここまで。後編では講師として質問を受けるときに大切にしている原則を中身に解説をします

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