見出し画像

CBC⑦「俺はまた逃げる。最悪の未来に向き合う」

このシリーズ、どこまで続くだろうと思いながらスタートしましたが、このペースで行くと軽く⑳は超えそう。。。正月の思いつきからスタートした推敲なしで緩めの文章ですが、読んでなんらかヒントを得てもらえたら嬉しいです。そのためにコーチ・カウンセラーとして18年仕事してきて大切だと思うことを書き留めていきます。それでは今日もスタート。

ーーーーーーーーーーー

僕は2005年7月にコーチングを学び始めました。きっかけはコーチングマジック(平本相武)という本を読んだことです。

当時マネージャーになりたてだった僕は、早速メンバーとのコミュニケーションに失敗して、チームの人間関係を崩壊させていました。なんとか手立てを探したくてたどり着いたのがコーチングで、何冊か本を読んだ中で『コーチングマジック』は本当に素晴らしかったのです。(残念ながらただいま絶版)

ただ本を読んだだけでは実践が難しい。(ギターの教則本読んで弾いてみたけど何か違う。合ってるかもわからない。みたいな感じかな)

でもこれができるようになったら、間違いなくチームが変わるし、僕自身の人生も変わるだろう。そんな気持ちでスクールの門を叩きました。

※当時の話は拙著『人生を変える!コーチング脳のつくり方』P14〜で詳述

最初に参加したのは2日間のショートコースだったのですが、平本さんにあって衝撃を受けました。

・テンションが高い!
・信念や想いが強い!
・人生経験がディープ。。。

こういう特殊な人がコーチングするんだな。僕が質問だけまねてもうまくいかないはずだ。と思いました。

2日間のコースはコーチングのトレーニングを受けるというより、まずはコーチングを体験する、というような内容でした。

とはいえ、おかげで自分自身が大きく変化したし、コーチングを学びたいという気持ちがさらに大きくなりました。

自分が平本さんみたいにコーチングできるようになるとは思えませんでしたが、平本さんのように、

相手を心から信じて関わる
「本当はどうしたい?」と真剣に問いかける

ということは大切にしていきたい。と思いました。
1on1をする機会はなかなかありませんでしたが、普段のコミュニケーションの中で、学んだことを生かしていこうとしていました。

それから2ヶ月後、今度は8日間のトレーニングクラスに参加しました。今度こそは平本さんのコーチングをマスターするのだ!と意気込んで。

ところがクラス内の公開セッションで平本さんが見せてくれるのはカウンセリング的なセッションばかりだったのです。

クライアントは皆、自分の人生に感情あらわに向き合い、最後は感動して号泣していました。

最初は「僕が学びたいのはこれではない」と思っていました。クライアントが何年も悩んできたことが短時間で変化するのはすばらしいと思いましたが、チームマネジメントに行き詰まり、コーチングで打開したかった僕は「こんなこと会社でできないし、求められてもいない」と思っていたのです。

ところが何回かセッションを見るうちに気づきました。

カウンセリングがベースにあるからコーチングが効果を発揮するんだな

変な例えですが、ベースメイクをきちっとするから、その上にすばらしいメイクができるみたいな感じ。いや違うかスキンケアをしっかりするから、かな。。。(笑)

心の底から自分にYESと言えるようになる。自分を信じられて、他人を信じられて、共に人生を切り拓いていけると思える。そして、やってみたいと思うことをなんでも行動に移せる身軽な自分。

カウンセリングを受けることで、そんな自分になれるからこそ、大きな夢も描けるし、どんどん行動できる。そして思い通りに行かなくても、周りと協力しながら、何度でもトライできるんだ。

そして、ベースが整った上で、コーチングで未来への計画を立てるのは、本当に素晴らしいものでした。綺麗に整地された広い敷地だからこそ、自由に好きな家を立てられるようなものですね。

とはいえ、自分自身は色々悩んでいたにもかかわらず、皆の前で平本さんのカウンセリングを受けるような勇気はありませんでした。

でもその日は突然きました。

クラスの朝。いつもとは違う真剣な顔で平本さんがいいます。

「今日はあなたが一番向き合いたくないことに、向き合ってもらいます」

コーチングを学び始めて3.4ヶ月目でした。

(帰りたい。。。帰ろう。。。)

まだ朝一なのに、僕はそんな気分になりました。絶対に嫌でした。僕が向き合いたくないもの。それは自分の中では明確でした。

(俺は今の会社からも、また逃げる。。。きっとそうだ)

向き合いたくないのはそのことでした。

コーチがするカウンセリング⑤でも触れましたが、
最初の会社でのパワハラをギリギリまで我慢してしまった僕は、心身に異常をきたしました。そして会社に行けなくなるばかりか、そのまま行方をくらましてしまいました。死ぬつもりでした。でも死ねなかった。

そこからしばらくの間、僕は『失踪』したのです。

ようやくの思いで実家に戻ることが出来、さらに長い時間をかけて、再び就職できました。

そして、いまは良い上司がいて期待してくれている。全然うまくは行ってないけれど自分のチームもある。

(でも、俺はまたここから逃げる。辛いことがあったら、きっとどこかで耐えられなくなって、逃げる。。。そして、次は、もう、2度と帰ってくることは出来ない)

そんなことはないと思いたかった。そのために仕事を頑張ってきたのです。忙しいし、お金もない中でコーチングも学んで、もっと良い上司であろう、良い部下であろう頑張っていたのです。

だけど、僕の内側からきこえる声には圧倒的なリアリティがありました。

(お前は逃げるよ。。。)

だからまだ朝なのにスクールから帰りたかった。自分となんて向き合いたくなかった。

けれども僕は帰りませんでした。今、この会場から逃げ出したら、そのまま会社からも逃げ出すような気がしたからかも知れません。

嫌な気持ちと、何をさせられるのかわからない恐怖を感じながら、教室に座っていました。いよいよその実習が始まります。先生が言いました。

「今からやるコーチングでは、クライアントは何も話しません」

どういうことだろう??

「コーチも何も話しません。クライアントはただ自分で、一番向き合いたくないものに、心の中で向き合ってください」

ん???

「20分間。コーチはそれにただ寄り添って、同じ心の状態で横にいてあげてください。クライアントは一番底にたどりつくまで、自分の内側に入っていってください」

話さなくて良いのか。と思って少しホッとしたけど、嫌な部分と向き合うことは変わらない。

向き合ったフリをすることは出来る。でもそれは『逃げる』ことになる。。。。

やれるのか?と言う不安はありましたが、覚悟は決めました。

実習が始まりました。いきなり教室の雰囲気が変わります。声にならない、重苦しい空気。そして、うめき声、泣き声。

みんな真剣に自分と向き合ってる。。。

ちょっと居た堪れなくなって「廊下に出ても良いか」と先生に確認し、外に出ました。

エレベーターホールまで移動するとソファがあったのでそこに座りました。コーチも静かに僕の横に座ります。


会社のことを考え始めると、なぜかすぐに僕の中で何かが始まってしまいました。涙が止まらない。怖い。

怖い。

鼻水が出る。うめき声が出る。何が怖いんだか分からないけど、とにかく怖い。

そんな時間が続きます。怖い怖い怖い。苦しい、情けない。。。。。

ふと、隣のコーチが静かに立ち上がって、僕の前に立ったような気がしました。でも僕は顔を上げることもできず、ただ泣いていました。

チーン

エレベーターが停まった音がしました。その瞬間に思いました。

「このコーチ、僕のこと守ってくれたんだ。エレベーターの人に見られないように。。。守ってくれたんだ。。。」

あつい涙が溢れてきました。さっきまでの涙とは違う涙でした。

恐怖の涙、情けなさの涙ではなく。安堵の涙。。。

そんなに仲良いコーチじゃなかったんだよ。そもそもあんまり話したことなかったし、ペアを組んだのも初めてだったと思います。

ちょっと年上の、大手で人事をやってるという男性。

その人のさりげない優しさに救われました。。。別に立ち上がらなくても良かったのに、そっと立ち上がって、静かに前に立ってくれた。

そこには静かさと、テコでも動かないような強さがあった。

「お前に必要な時間とプロセスは、何があっても俺が守る。大丈夫だからやってみろ。。。お前には出来るよ。」そんな存在感がそこにはありました。

飄々として掴みどころのない感じの人だと思っていたけど、いざって時はこんな風に関わってくれるんだ。

クラスが一緒になっただけの、まだよく知らない人なのに、それでも僕のことを、こんな風に守ってくれるんだ。

その事実だけで、僕は救われました。そしてへんな話だけど、

逃げたって大丈夫なんだ。

と思えてのです。だって

「逃げったって、コーチがいる」

ああ。自分はまた同じことをやってたんだな。一人で抱えて、一人でなんとかしようとして、そして一人で潰れそうになってた。

親にも言えないようなことでも、コーチには言えるんだ。

いや、コーチにも言えなくたって、コーチは横で見守ってくれるんだ。。。

急速に解けていく気持ちと共に、そんなことを考えていました。

そうして20分が立ちました。

僕の気持ちは決まっていました。僕は、現在の上司に対しても何処か心を開けずにいる。だから不安なんだ。そのことをテーマに改めてコーチングを受けて、この不安を乗り越えよう。大丈夫だ。出来る。と。

そうして、次に受けたセッションが僕の人生を変え、僕がプロコーチになっていくことの直接のきっかけになるのです。(拙著『人生を変える!コーチング脳のつくり方』P82〜 そのセッションの様子が描かれています。すごいセッションでした)

いま、あのエレベーターホールでのセッションを振り返って思います。

コーチがつくってくれる「絶対的な安心感を感じる環境」。それがクライアントに自分と向き合う勇気を与えてくれる。自分の内側に向き合い、そこで起こっていることを理解さえすれば、内側の世界は自ずと変化していく。

泣いている子どもが、怒っている子どもが、受け入れられ理解されれば、泣き止んだり怒るのをやめたりするように、理解されたら自然と変わっていくのです。

カウンセリング世界の金言に

変えようとするな。知ろうとせよ

というものがあります。これはカウンセラーがクライアントを変えようとすることを戒め、クライアントを知ることに意識を向けるようにと教えるものです。

自分とのコミュニケーションも同じことです。自分を変えようとしない。自分を知ろうとすることが、結果として変化や成長につながるのです。

ポジションチェンジなどの手法を生んだゲシュタルト療法でも同じことが言われています。

本質的な変容は、人が自分でないものになろうとする時ではなく、ありのままの自分を体験する時に起きる。

変容の逆説的理論と言います。カウンセラーは共にいながら、クライアントがありのままの自分を体験できるようにサポートするのです。

そして、そのような経験を経て、クライアントは自らのうちにカウンセラー(コーチのするカウンセリング⑥で書いた「健全な大人」)を育てていくのです。

続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?