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39歳で大学院に入ろうと思った理由

2019年の9月からイギリスの大学院で心理学を勉強しています。
大学院と言えば、20代の人が勉強する場所というイメージが有りました。
今日はそんな自分が、なぜ39歳になって大学院に入ろうと思ったか、なぜわざわざイギリスの大学院かということを書きたいと思います。

①より良いコーチングをするために、心理学の素養を身に着けたい。

コーチングを実施すると、人の気持ちに影響を与えます。コーチングの良い側面はコーチングスクールやコーチングプロバイダーのアピールで知ることが出来ますが、コーチングは必ずしも良い影響のみを与えてくれるとは限りません。コーチが心理学のトレーニングを積んでいないと、クライアントの心理的な問題に気づくことが出来ず悪化させてしまうこともあると指摘されています(Berglas, 2002)。コーチングをする人間として、コーチングで起こりうるネガティブな影響を知り、それをどう回避するかということを知ることはクライアントに真摯に向き合う姿勢として重要だと思います(Schermuly & Graßmann, 2019)。そのために心理学を学びたいと思いました。

②コーチングの有効性やスキルの裏付けを科学的に知りたい。

コーチングスクールではコーチングのスキルは学べますが、スキルの裏にある根拠や有効性についてはあまり学ぶことが出来ません。天才的なコーチ(例えば一兆ドルコーチという本のビル・キャンベル)は科学的な研究よりも先を行っているという例もあります(Schmidt et al., 2019)が、そうではない人間がより良いコーチングをするためにはどういう時にどういうことをしたらよいかということをできるだけ正確に知っておいたほうが良いでしょう。

コーチングを人に教える様になって、自分自身の経験を元に語っていることが多いことに気づきました。しかし、自分自身の経験には偏りがあり、経験の解釈にもまたバイアスがかかっています。科学的に研究された結果えられる情報は、できるだけ客観的なものとして扱えるように提供されています。それらを元にしてコーチングを教えることで、より多くの人がより多くの場面で使えるスキル(あるいは間違った使い方をしないスキル)として身につけてもらえると思いました。

③将来的に、コーチングをもっと多くの人が使える環境を作りたい。

コーチングの素晴らしさは自分自身が体感して理解しています。できればすべての人がコーチングの恩恵に預かれると素晴らしい、そのためには、教員免許取得の必須スキルになる様な未来が訪れたら素晴らしいと思っています。コーチングの素晴らしさを(懐疑的な人にも)伝え、巨大な教育の仕組みを変えていくためには、コーチングの効果を根拠を持って伝える必要があると考えています。でも、現在の日本のコーチング業界にはまだまだ不足していると考えています。というのも、コーチングを大学などで研究している研究者は非常に少ないし、おそらく日本で一番知られているコーチングプロバイダーの研究レポートを見ると、根拠としてはツッコミどころが満載です。科学的なリテラシーのある人がその様なレポートを見ると「コーチングをやっている人たちはいい加減な情報をもとにしているんだな。だから、コーチングは信用に値するものではないんだな。」と思われてしまいそうです。その様な現状を変えていくために、コーチングの科学的研究が進んでいるイギリスで勉強をしたいと思いました。

まとめると、自分が素晴らしいと思っているコーチングを受けた人にネガティブな影響を与えず素晴らしい経験をしてもらえるように、そしてコーチングを広めていくために39歳になって大学院に通う決断をしました。

プロフィール

藤田 大樹(ふじた だいじゅ)
Brain−Plus代表
【専門分野】
ビジネスコーチング/メンタルヘルス
【学歴・資格】
京都大学総合人間学部卒業
名古屋大学大学院理学研究科博士前期課程修了 理学修士
University of Strathclyde MSc Psychology with a Specialisation in Business 在学中
国際コーチング連盟 PCC(プロフェッショナル・サーティファイド・コーチ)
EAPメンタルヘルスカウンセリング協会 EAPメンタルヘルスカウンセラー

参考文献

Berglas, S. (2002). The very real dangers of executive coaching. Harvard Business Review, 80(6), 86-87.

Schermuly, C. C., & Graßmann, C. (2019). A literature review on negative effects of coaching – what we know and what we need to know. Coaching: An International Journal of Theory, Research and Practice, 12(1), 39-66. https://doi.org/10.1080/17521882.2018.1528621 

Schmidt, E., Rosenberg, J., & Eagle, A. (2019). Trillion Dollar Coach: The Leadership Handbook of Silicon Valley's Bill Campbell [1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え] (櫻. 祐子, Trans.). Hachette UK. 



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