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得意分野はなんですか?

今年度から、施設で選択活動の時間を作ることにした。

学校でいう選択授業やクラブのように好きなものを選び、楽しく活動するという。

 
そこで、選択余暇の前に職員に得意分野を聞かれた。どの内容を担当したいか、という事前聞き込みだ。

 
紙にはズラッと書かれた余暇活動があった。
10種類はある。
そこに書かれていない余暇活動でも提案、担当していいらしい。

 
どれどれ、と見てみた。
その内の一つが学習担当だったので真っ先にそれを希望した。

「一つだけじゃなくていいよ、得意分野。学習担当は無難過ぎない?」

リーダーが言う。

 
そうは言われても得意分野…どこまでのレベルなら、得意分野とみなしてよいのか。

学習なら自信があった。 
かつて塾講師と家庭教師のバイトをしていたし、内定をもらったり、最終面接までいったのが塾だったからだ。

 
ある職員は余暇活動案のうち二種類を希望し
別の職員はある活動一種類以外ならなんでもよいと希望していた。ひぇっ。

「これとか真咲さんに向いてるんじゃないの?」

そう言ったリーダーが指さすのは広報だ。
職場内ニュースや出来事を文章や絵や写真でまとめて掲示及び配布をするらしい。

 
広報、かぁ。
確かにSNS担当しているし、施設の出来心や人に関心はある。
向いてるかどうかはともかく、まとめる、というのも楽しそうだ。

私は広報も希望した。

 
「本当にいいの!?」

提案したくせにリーダーが驚いた。

 
「確かに楽しそうだなぁって。他のは………うーん、どちらかといえば、得意分野というより、これは担当したくない、って希望でもいいですか?」

新施設長が了解した。

 
私は園芸と縫いものを外してほしいと希望した。 

私の職場は縫いものを作業でやっているが、面接の時にも私は裁縫を苦手としている。

学生時代、家庭科の成績は悪くはなかったが
私は縫うのはまだしも玉どめやミシンの最初の設定が苦手だった。

 
職場は裁縫の達人が職員や保護者に多く、服やバッグ等身近なものは作ってしまうレベルだった。刺繍もお手のものだ。

縫わずにすぐ買う私には、そのレベルはとても高いと感じた。

 
また、園芸にしても
母親は花や植物が大好きで
庭にも家の中も花だらけなのだが
私は花は大好きだが、育てることは苦手だった。

サボテンもワイルドストロベリーも枯らしてしまったし
自信はなかった。

土いじり自体は好きなので
誰かの補佐なら構わなかったが。

 
他の余暇活動はまぁ、もし担当になってもある程度はできるだろうし、楽しそうだと思った。
向いている、なら勉強や広報なのは確かだが。

 
私の希望を聞いた後、リーダーは「俺は全部大丈夫です。」と新施設長に言ったのでさすがだと思った。 
リーダーならそれを迷わず言う資格があるとも思った。

 
ものづくりを主とする私の職場で
リーダーの手先の器用さやセンスは確かに群を抜いていた。
縫いものだけでなく、木工や工作、絵も得意で
リーダーに作れないものはないんじゃないかと思うくらいだ。

もちろん
ものづくりだけでなく、修理や解体も得意だった。

 
手先が不器用な私にとって
リーダーの器用さは憧れだった。

 
ただ、リーダーは音楽やダンス等そういったものが好きではなかった。
興味が薄かった。
本人もそれはよく口にしていた。

福祉施設は利用者と音楽やダンスを楽しむ時間があることが多い。

 
傍から見ていても、リーダーの気持ちは伝わっていた。
仕事だからやる、といった感じで
心から楽しそうな感じはしなかった。

 
私は逆に音楽やダンスが大好きだった。

歌うのも聴くのも踊るのも大好きで
よく利用者と一緒に楽しんでいた。

 
リーダーとは真逆だなぁとよく思っていた。
私は不器用な好奇心旺盛、リーダーは器用貧乏なのだ。

 
リーダーが「全部できます。」と言った後に
付け足しで「〇〇と△△は好きではないから担当抜かしても大丈夫です。」と言った後
私はその付け足しに安堵した。

 
きっと音楽やダンスが好きなことは私の強みだ。
利用者と一緒になって楽しめることは数少ない私の長所だ。

 
よかった。
私にも得意分野があった。

私は安堵した。

 
職員レベルが高い今の職場で
ものづくりを積極的に行う今の職場で
劣等感を感じることは多々あるけれど
私だからできること、私にもできること、リーダーにはできないことを知ると
密かに安堵する。

 
選択余暇活動は後日利用者に希望をとり
今羅列されている余暇活動案から厳選される。

実際に私が何を担当するかはまだ分からない。

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