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即興的にストーリーを作っていく方法

シナリオコンクールなどに応募しようとしている人を指導していて、ストーリーの作り方をわかりやすく教える方法はないかと思って、自分のやりかたの一つを書いてみることにしました。


参考になれば、幸いです。



○即興的ストーリー創作方法

あくまでもこれは一つのやりかたにすぎません。

僕自身も違うやり方をすることもあります。

ただ発想の起点としては、このやりかたをすることが多いです。

参考にしてください。

○脚本を書こうと思った時

★まず何をするのか。

自分がこれから書こうとしている脚本は、どんなジャンルのものなのかということを意識します。

言い換えれば、どんなものが書きたいんだろうということです。

ただし、コンクールを目指すとなると、そこはちょっと変わってきます。

相手は、なにを求めているのかです。

お客(視聴者、テレビ局)が求めているのは、どういう料理なのかということを考えるわけです。

自分が料理人なら、お客はどんな料理を作って欲しいのかということを、はっきりわかっていなければ料理をはじめないと思います。

フレンチを食べたがっている客に、中華料理を出したって、相手はとまどうばかりということになるからです。

今回のお客は、某テレビ会社主催のシナリオコンクール。

テーマはラブストーリー。

新人脚本賞ということは、これからの自分の会社のドラマを支えてくれるような若手を見つけようとしているということだろうと想像できます。

いまのテレビドラマのトレンドは、どんなのだろう?

なんてことも考えます。

そこで僕(応募する脚本家志望者と想定)はラブコメという料理を作ろうと決めました。

じゃぁ、ここからは僕がストーリーを作るときの、思考の流れです。


★ストーリーは無意識を利用して作る。

無意識といっても、それは意識の下にあるものなので、意識を使って、無意識を作動させていくということです。

アイディアがフワリとわいてくるのは、この無意識が作動している証です。

もちろんこのやり方は、僕のやりかたです。

他のやり方もいろいろあると思いますが、ここでは僕のやりかたを知って参考にしてください。

★意識(思考)の流れはどんな感じなのか?

(僕はこんなことを考えながらストーリーを作っています)


★創作の意識の流れA

ラブコメかぁ……

ラブ、つまり恋ってことだよなぁ。

恋なんか、ずいぶんしてないなぁ。

おっと、自分のことは関係ねぇか。

どんな主人公だと、ラブコメが成立するのだろうか。

恋が、もっとも大きな問題になる状況ってあるのかなぁ……。

恋がトラブルねぇ……。

うーーん。

そうだ、

恋が出来なくなっている女の子が主人公だと、恋するということ自体がトラブルになるわけだよなぁ。

恋ができなくなっている女の子って、どういうことがあると、そうなるんだろう?

恋することに臆病っていうより、恋ができなくなっているって設定って、できるかなぁ?

そういう状態になるのには、かなり大きなトラウマとかないとならないよね。

ところで、恋ってなんだろう?

ここわかってないといかんよね。

あらためて恋って何か考えてみよう。

恋のイメージ。

人が人を好きになること。

初恋。

純粋。

一途な想い。

ドキドキ。

恋は盲目。

フェロモン。

ホルモン。

一緒にいたい。

キス。

セックス。

バレンタインデイ

チョコ。

なんでそうなるのかよくわからない。

駆け引き。

その人との未来を想像。

免疫向上。

生きる張り合いが出る。

お花畑。

脳天気。

失恋。

うーん。

こうして並べてみると、たいしたもんじゃなくも思えてくるが、生きる張り合いが出たり、免疫が上がったりしたり、概ねポジティブな要素の方が多いできごとだよね。

恋って。

それができなくなるってるっていうことは、かなり大きなシリアスな問題かもしれない。

シリアスな状況になるってことは、そのなかで必死にもだえる人間を描くことができれば、笑えるのかもしれない。

笑うことができれば、それを見て笑った人に元気を与えることができるコメディになるんじゃないの。

うん。

それなら、行けそう。

恋をするのって、相手に幻想を抱けるからだよね。

幻想を抱けないなら、恋はできないわけで……

幻想って、恋の相手をかってに自分の都合の良いように想像で作ってしまうってことだよね。

(ある意味、自分勝手なこと。)

ならば相手の心の真実がわかってしまう人がいたら、その人は幻想を抱くことはできなくなるよねぇ。

そんな人物を作れば、その人は恋ができない人になるわけだよねぇ。

そっか、そっかぁ。

幻想を持ちたいけど、それを持てない人。

それを不幸だと思っている人がいればいいんだ。

じゃぁ、主人公をつくってみるか。

(というような思考の流れがあって、以下のような人物をつくりました)


★ストーリー案に向けて、主人公はどんな人物か。


○まずは名前。

 名前をつけるのって、けっこう難しい。

 主人公らしい名前ってあるよね。

 性格とか、その人物をあらわすような名前の方がいいね。

 ちなみに僕は名前には四種類あると思っています。

 1、いかにも主人公の名前

 2、ライバル悪役の名前

 3、情けない名前

 4、普通の名前

 今回の主人公はちょっと特殊な能力を持っている人にしようと思うので、ずばりそれを直接的に現す名前にしよう。

 先が見える人……ってことで、「先賀ミエ」にすることにする。


先賀ミエ(サキガミエ25女)は、幼い頃から特殊な力が備わっている。

触れた人の本音が聞こえるのだ。

そしてわずかだが未来の断片も見える。それは未来予知ともいうべき能力だ


○名前に付随して決めなきゃならないのは、年齢、仕事。

 そして家族関係、性格、好き嫌いなど。

 大事なのは、精神的な弱点。

 そして目的(近いもの、遠いもの)だ。

 これは人物を設定するときの、最低これだけは決めておかなければならないもの。


ミエは子供の時から気づかないうちにそれを使ってしまい、周囲にはおかしな少女だと思われていた。

人の本音がわかってしまうので、どうしても人に幻想を抱くことができない。

そしてそれを表に出してしまうと、人は自分から遠ざかってしまう。

ミエは、幼いころから孤独な女の子になってしまっていた。


そのことをわかってくれていたのは、祖母の先賀ミタス(80)だけだった。

ミタスはミエの能力を見抜いて、「まわりには気取られないようにするのよ」と教えてくれていた。

その教えを守ってミエは、自分の心を他人から隠して生きるようになったのだ。

そして25歳の今、恋愛をまったくしたことのない占い師となったのであった。

ミエはひそかに自分の能力を使っているので、とにかく当たると評判で、大人気の占い師になっている。

しかし自分の未来は見ることができず、人の心を見透かしてしまうので、今まで恋愛はうまくいったことがなかった。

好きな人ができても、恋愛をするまえに失望してしまい、人を好きになることができないのだ。

それでもミエは恋をしてみたい。

自分も免疫があがるようなドキドキワクワクを感じたいと思っている。

そして未来は、幸せな人生を送りたいと思っている。


★創作の意識(思考)の流れB

触れると相手の本音が聞こえるというアイディアは、それほど斬新なものではないけど、使ってダメってわけではないだろう。

そういえば、昔見たハリウッド映画で、メルギブソンが主演のやつで、相手の本音が聞えてしまう男の話があったなぁ。

タイトル忘れたけど。

サトラレっていう日本の漫画原作の映画もあったなぁ。

ストーリー忘れたけど。

ちょっとだけ先の未来が見えるという主人公の映画もあったなぁ。

ハゲのおやじが主演のやつ。あ、ニコラスケイジだ。

タイトルもストーリーも忘れたけど。

触ると聞えるというようなかたちにしているけど、ある種直感力が鋭い人物の誇張だとも言えるんじゃないか。(実は特殊能力じゃなかったということでもいけそう)

まぁ、ちょっと面白くなりそうな予感もするし、この設定でいってみるか……。

こんな女の子だったら、恋とか出来そうにないしな。

一言で言ったら、

「人を好きになることができない女のが、人を好きになるお話」

っていうのは、どうだろう?

自分自身が大きなトラブルそのものだというのは、ドラマが作れそうな気がする。

よーし、これでいってみるか。

この主人公の設定には、弱点(恋ができない)があるから、それはオッケイ。

次に必要なのは、この主人公ミエの目的だよね。

目的って大事だからな。

なにをするにしても、それが内的な動機になったりするしね。


ミエは、どんなことしたいんだろう?

占い師をやっているのは、自分の能力をフルに活用できるからだよね。

25歳で売れっ子の占い師ってことは、儲かっているってことかもしれない。

ミエって、お金儲けしたいのかなぁ。


なんで?

自分にある能力のせいで、人付き合いがうまくできなくて、幼い頃から人とかかわらないようにしてきたので、信じられるのがお金だけになってしまったのかもしれない。

家庭の事情で貧乏だったということもあるかも。

将来の不安とかも無くして、一人でも生きていくためには、お金をたくさんためたいって思っているのかもしれない。

お金をためたい。

それがミエの、近い目的にしよう。


近い目的決めたら、次は遠い目的ね。

ミエが本当にしたいこと(こうありたいというドリーム・遠い目的)ってなんだろう?

やっぱり本当は恋をして、その先に「幸せになりたい」っていうことがあるんだろうなぁ。


そう、ミエはどんなにお金を稼いでも幸福感が感じられない女の子なんだ。

だから心の中では、いつか幸せになりたいって想っているんだ。


それでいこう。

だんだん主人公が見えてきたぞ。

ここまできたら主人公にどんなことが起きるのかを考え始めよう。


★意識の流れC


主人公に、どんなトラブルが起きるといいかっていうのを、いつも考えるのが僕のストーリー作りのルーティーンです。

(このやりかたは、僕が体感的にいつしかみにつけたものなんだけど、他の人たちにもあてはまると思います)


最大のトラブルとなるのは、主人公に立ち塞がる存在だよね。

恋ができないのに、主人公に恋をせざるを得ないように接近してくる男がいたら、そりゃ困るよね。

つまり主人公が恋をすることになる相手。

こいつは必要。


その他に、どんなトラブル起きる可能性あるかなぁ。

これを適当に思いつくままに考えて行こう。


○主人公のミエに起きるかもしれないトラブル。

占い師ができなくなる。

心の支えの祖母が病気になる。(死にそう、または死ぬ)

お金を無くす。

詐欺にひっかかる。

訴えられる。

家族の借金をおしつけられる。

事故にあう。

ストーカーにおいまわされる。

能力を失ってしまう。

酔って、男と一晩過ごしてしまう。

両親が離婚したのは、自分が原因だったとトラウマを思い出す。

詐欺師と疑われて警察につかまる。

能力がばれてしまう。

事故にあう。

恋をした相手がいなくなる。

どうでもいい相手に、恋をされる。


★意識の流れD

よし、こんだけトラブルを思いつけば、ストーリーはできたも同然だァ。

ここからさきは連想ゲームみたいなもんで、トラブルがトラブルを呼んで、主人公を追い込んでいけばいいんだもんね。

どんな展開がベストかを考えて行こう。


でもちょっとその前に、サブキャラも何人か考えてみよう。

主人公のミエを追いつめる存在や、コメディリリーフ的なやつとか、何人かはっきりしといた方がいいもんね。


サブストーリーとして、主人公の近くにいて、恋愛を失敗する存在なんかもいるといいかも。

このキャラは、ミエとはまったく違う生き方をしている、恋多き女だと面白いかも。


こんな感じで、主人公が決まれば、連想を使ってサブキャラクターたちも浮かびあがってくるんだよね。

これも連想を使って、思いつくままに作っていきます。

名前とかの設定などは、主人公を作る時と同じやりかた。


★サブキャラクターたち

○真行純(まゆきじゅん・26歳)

ミエが好きになる男。

純朴でミリタリーオタク。正義漢。コンビニでアルバイト。

元自衛官で密かに傭兵として戦地に行った経験がある。戦地で悲惨な体験をしたことでトラウマを負っているが、それは絶対に人に見せないようにしている。

実家は会社経営をしているお金持ち。

(現実にはなかなかいそうにないキャラクターだけど、主人公が好きになる男は、ちょっと浮世離れしているほうが面白いのではないかと思った。キャスティングしたときに、視聴者が好感をもつような人物でなければならない。少女漫画の主人公になれるような人物で無ければ)


○先賀志麻(さきがしま・22歳)

ミエの妹。

大学生、起業家を目指す。姉とちがって恋多き女。

本人は自覚のないトラブルメーカーで、いつも姉に迷惑をかけることになる。姉がもっているものをいつも欲しがる。


○黒井健太(くろいけんた・30歳)

占いの館のオーナー。青年実業家。飲み屋なども数件経営している。半グレとのつながりもある。

妻子がいるが、ミエを執拗につけまわすようになる。


○新玉元(あらたまはじめ・25歳)

派出所に勤務している警官。

ミエの占いの常連。振られてばっかりの彼女が欲しい男。警官だということを隠して、占いの館にかよっている。


○飯井温子(おもいあつこ・35歳)

ミエと同じ占いの館で働いている占い師。心霊占いが専門。バツイチ。オーナーの黒井を狙っている。

ミエに対して、表面上は親しげだが、腹の中では邪魔だと思っている。


○真行愛(まゆきあい・20歳)

純の妹。大学生。ブラコン気味で、兄を心配している。

実は純は再婚相手の連れ子。(母親が再婚して兄弟になった)

兄のことを妹としてだけではなく、好きだと思っている。

プライドが高く、強気な性格。


★意識の流れE

サブキャラ作っていくと、だんだんストーリーが見えてくるね。

キャラクターの名前をつけるのは面倒くさいけど、キャラの性格とかをイメージしやすいものにするといいんだよね。

キャラ同士の関係性が見えてくるようなものにするとイメージしやすい。

よし、これらのサブキャラなどをからめて、ざっとストーリーを進めてみよう。

ストーリーの始まりは、『引き』が強いものにしたいね。

ミステリーがあったり、サスペンスがあったりして、視聴者(読者)の人たちを引き込みやすいものにね。

どんなことがあるといいかなぁ。

まぁ、とりあえず書き始めてみよう。


★ストーリー案の始まり①

 先賀ミエ(25)は怪しい男につけられていた。

 やだっ、ストーカー!?

 とっさに逃げ込んだコンビニのアルバイト店員の真行純(26)が、ミエをつけていた男を追い払ってくれるのだった。


 純は前髪で目を隠した暗い感じの不気味な雰囲気の男だったが、腕っ節は強そうだった。

 ミエは純にお礼を言い、自分の名刺を渡すのだった。

 名刺には、占い師と肩書きが書いてある。

「今日はありがとうございました。あたし、ここで働いています。いつでも来てください。無料で占いますから」

 それがミエと純の出会いだった。


★意識の流れF


ちょっとサスペンス風で、ミステリーもあるから、『引き』はあるんじゃない。

いいかも。


『引き』については、そのパワーを計る方法があるといいかもしれないね。

そういうのを作ると、脚本家には便利かも。


主人公が誰だということもすぐにわかるし、かなり早い時間帯にメインの人物を出すこともできている。

まずはガールミーツボーイだね。


お客さんは、この主人公のミエに共感できるかな?

そこもチェックしておこう。


なぜか無意識に、ミエがストーカーにつけられているシーンからはじめてしまったんだけど、作品のオープニングって実はすごく大事で、物語全体に影響を与えてしまうものなんだよね。

オープニングイメージって呼ばれていたりするくらいだし。

このイメージが出て来たってことは、おぼえておこう。

きっとあとあと影響が出てくるはず。

よし、次行こう。


★ストーリーの続き②


 名刺を渡す時に、ミエの手が純の腕に触れた。

 ミエは無意識に純の心を覗いてしまっていた。

 そうミエは触れた相手の本音が聞こえるという特殊な能力を持っているのだ。

「えっ!?」

 ただ異様なほどの怒りの感情が迫ってきて、ミエは思わず手を離してしまう。

 不思議に思うミエだが、気取られないようにしてその場を立ち去るのだった。


 ミエは占いの館『未来館』で一室を借りて手相占い師として働いている。

 実は触ると相手の本音が聞こえるという能力を使っているので、良く当たる占い師として人気があるのだった。


 オーナーの黒井(30)は何かとミエに迫ろうとしてくるが、なんとかかわしていた。

 黒井に気があるらしい同僚の心霊占い師の飯井温子(35)は、ミエに嫉妬しているらしくいつもきつく接してくる。

 そんな環境ではあったが、ミエにとってここはやっと見つけた稼げる場所だった。

 煩わしい人間関係にとらわれることなく、一人でマイペースに仕事ができるからだ。


 ミエは今までもさまざまなところで働いたことはあったのだが、幼い頃から持っている能力のせいで、うまく人と関わることができずに、いつも孤立してしまっていた。

 ここなら孤立していても、それをストレスに感じることもなく過ごすことができた。


 またその能力のせいで、ミエは今まで、ちゃんと恋愛をしたことが無かった。

 仕事では恋愛についてのオーソリティのように振る舞って、さまざまなアドバイスをお客にしているのだが、本人は実はまったくその経験がないのである。

 恋愛に関してはミエの数十倍も経験豊かな妹の志麻(22)からは、いつもバカにされているのだった。


 ミエは、本当の恋愛をしてみたかった。

 できるなら最高の恋愛を。

 でもそれは無理だと諦めてはいた。

 ミエはできることなら、人の心の声など聞きたくは無かった。

 そのせいで今まで、ふつうの生活が送れなかったからだ。


 自分のせいで母親の浮気が父にばれてしまい、離婚の原因になったという過去があった。

 それはミエにとってトラウマとなっている。

 両親の離婚が原因となって、母とミエたちは貧しい生活をせざるを得なかったのだ。

 こんな自分が一人で生きていくためには、とにかくお金を稼ぐことが必要だと思い、あえて自分の使いたくない能力を使って占い師をやっているのである。


 今日も常連の客、新玉元(25)を占っていると、彼が実は自分のことが好きなのだという心の声を聞いてしまう。

 新玉はイケメンで誠実そうだが、ミエはその気持ちに応えることはできないと思い、わざといま思っている人とはうまくいかないと言ってしまうのだった。

 新玉はしょげて帰っていく。

 ミエはなんだか悪いことをしてしまった気になるのだった。


★意識の流れG

主人公の説明をまずはしておかなければならない。

どういう人物なのかを、スムースに視聴者に知ってもらおう。

くわしい展開は、プロットを作るときに考えればいいので、ここでは必要最低限入れなきゃならないことを書いておくことにする。

サブキャラたちもいい感じに登場させることができると思う。

主人公であるミエの目的はズバリ「恋愛をしてみたい」。

恋愛のできない体質が自分にあるとわかっているので、いままでできずにいるのだが、本当は恋愛をしてみたいと思っているのだ。

近い目的は「お金を稼ぐこと」

そして遠い目的は「恋愛をすること」「幸せになること」。

うん、いい感じ。

プラットフォームはできたんじゃない。

プラットフォームっていうのは、物語の基本設定というような意味ね。

じゃぁ、そろそろ展開が欲しくなるよね。

展開させるポイントとしては、やはり主人公にとっての、最大の問題となるべき相手とのことになるはず。

つまり恋をする相手となる真行純とのことに関してでなきゃならないね。


よし、純が来ることにしよう。

そして主人公のミエを困らせることになるんだ。


★ストーリーの続き③

「おつぎのかたどうぞ」

 そこに現れたのは、先日、コンビニで自分が名刺を渡した店員の真行純だった。

 彼は何を相談に来たのか要領を得なかった。

 何か占ってもらいたいことがあって、ここに来たのだろうとは思ったが、純はなかなか本音を言おうとしない。

 (純がここを訪れた本当の目的は、昨日ストーカーに襲われそうになったミエのことが正義感から心配になって、様子を見にきたのだが、いざ本当にあってみると何も言えなくなってしまったのだ。彼も過去のトラウマで人と心をかよわすようなコミュニケーションから心を閉ざしてしまっていたから)


 手を触るミエに伝わってきたのは、純の痛いほどの悲しみの感情だった。それは荒涼とした風景だった。

 えっ、なに……!?

 おどろくミエだが、それを表には出さない。

「やっぱり、いいです」

 と言って、純は帰ってしまうのだった。

 なんだったの……。

 純のことが、気になるミエだ。


 仕事を終えて帰宅しようとしたミエは、まただれかの視線を感じる。

 またストーカーかもしれないと不安になる。

 逃げようとするミエ。

「やめてください!」

 と、追いかけてきた男を振り切ろうとするが、それは純だった。

 純はストーカーではない、彼女を守ろうと思ってついてきたのだと言う。

 しかし前日に実際にストーカー被害を受けているミエは、一度は自分を助けてくれた純とはいえ、やはり少し怖くなるのだった。

 つい純を疑ってしまうミエ。


「やめろ、ミエさんから離れろ!」

 そこに現れて、純を取り押さえたのは、警官姿の新玉だった。

 新玉は警官だったのである。

「きさまを逮捕する!」

 と、新玉はちがうと否定する純に手錠をかけてしまう。


★意識の流れH

主人公にトラブルが起きたら、すぐに解決しないで、そのトラブルがさらに大きくなっていく。

これは鉄則。

ストーカーの勘違いとか、サブキャラの警官がここで出てくるとか、事前に考えてなかったけど、連想(無意識)が確実にストーリーを作り出そうとしてくれているねぇ。

このまま、流れにまかせよう。

ハリウッド式の脚本術とかでは、プロットポイントと呼ばれているところ。

プロットポイントというのは、ストーリーが大きく展開していく場所のことですね。(前に進むところ)

この言い方気に入っているけど、日本語に訳したら「展開点」ってとこかな。

やっぱプロットポイントの方がしっくりくるね。


★ストーリーの続き④

 警察で事情聴取をされる純とミエ。

 純は何も言わない。

 そこに純の妹の真行愛(20)が弁護士を連れて現れ、強引に純を連れて帰る。

 愛は自分の兄をストーカーとして捕まえさせたミエに対して、明らかな敵意を向けるのだった。

 もしかしたら自分をつけていたのは、純では無かったのかもしれない。

 そんなことをふと思うミエだった。

 だとしたら自分はとんでもない間違いをしてしまったのかもしれないけれど……

 愛と弁護士に連れて行かれる純の姿を、ミエを迎えに来ていた志麻が見て驚くのだった。

 志麻は愛のことを知っていたのだった。

 家に帰るミエと志麻。

「あの人、○○エンタープライズのお嬢さんよ!」

 愛が超優良企業の会長の娘であるということを教える志麻だ。

 つまりその兄ということは、純はお金持ちの息子なのだ。

 その財閥の息子が、なぜコンビニでアルバイトをしているのかと不思議に思うミエである。

「あたし、あの人の彼女になる!」

 志麻は純をゲットすると宣言するのだった。

 純がけっこういい男だったので気に入ったのもあるが、純がエミを追いかけていたということを聞いた愛は、自分が純を手に入れたくなったのだ。


★意識の流れI

ほぼ登場人物たちが出そろったと思う。

冒頭の10分から15分でメインの登場人物たちを出すのも、鉄則だよね。

ここから先は、主人公にさらにトラブルが襲いかかっていくことになるんだよね。

それは物語の王道。

サブストーリーもスタートさせよう。

サブストーリーは、純のものになるはずだよね。

ここで僕がサブストーリーと呼んでいるものは、違う言い方をされるときもあります。

Bストーリーとか、サブプロットとか。


★ストーリーの続き⑤

 ミエは飯井の画策で、お客と警察沙汰になったということを問題化されて、占いの館を辞めさせられそうになる。

 ミエを狙っている黒井は、自分とそういう関係になってくれたら、辞めなくてもいいよと条件を突きつけてくる。

「僕はこの業界には顔が広いからねぇ。ここを首になったら、もう他の店でも雇ってはもらえなくなるんじゃないかなぁ」

 と、黒井は嫌らしく迫ってくる。

 幼い頃特殊能力のせいで相手の本音を言い当ててしまい、そのために気持ち悪いとして虐められていたトラウマがフラッシュバックするのだった。

 ミエは黒井を突き飛ばしてしまい、怪我をさせてしまう。

 店は首になり、黒井と示談するために、大金が必要になるのだった。

 うちひしがれたミエは、コンビニで憂さ晴らしの酒を買って帰りたかったが、店には純がいるので、寄れずに一人とぼとぼと通りすぎるのだった。

 ずっと抑え込めていたいじめのトラウマが蘇るし、仕事は首になるし散々だ。


★意識の流れJ

ミエの周りにトラブルメーカーを置いているので゛スムースにトラブルは起こすことができる。

黒井と飯井。

それに純とミエの妹たちね。


次はサブストーリーか。

純の方には、どんなドラマが始まっているんだろう。


★サブストーリーとは何か

ちょっとここで脇道に入って、サブストーリーとは何かというのを説明。

主人公の物語がメインストーリーだとしたら、主役と大きくかかわる登場人物の物語をサブストーリーと呼んでいます。

メインストーリーと平行して、サブストーリーも展開していき、その両方の物語が最後は一つに交わって行くというのがベストです。


★ストーリーの続き⑥

 純は妹の愛と弁護士に伴われて実家に連れ戻される。(いま住んでいるのはボロアパート)

 実家は豪邸。親が金持ちなのだ。

 父親は不在だが、母親がいる。

 母親は実母ではない。死んだ実母のあとに後妻としてこの家に来たのだった。(愛は連れ子だった)

 母親は息子のことを心配していて、一人暮らしなどしないで実家に戻るように懇願するのだった。

 妹からは、母親を心配させないでくれと責められる。

 しかし純は心を閉ざしていて、自室に黙って入っていく。

 純の部屋には、過去の写真がある。

 その写真の中の純は、戦場で戦友たちとともに笑っている。

 写真を見つめる純の心に、過去の悲惨な体験がよぎるのだった。

 自衛隊を辞めたあと純はボランティアスタッフとして東欧の戦地で活動していた。

 医療関係者たちのガードの任務だった。

 そのチームの中には、自分と恋仲になった女性もいた。

 そのとき敵から攻撃を受けてしまったのだ。

 純は反撃を試みたが、純が守ろうとしていた人たちは全員銃撃に倒れてしまう。

 純も重傷を負ったが、生き延びて帰国できたのだった。

 自分が何もできなかったという後悔と、自分だけが助かってしまったという悲惨な体験が、ずっと純を苦しめているのである。

 家を出て自分を責めるように一人で暮らしているのは、その罪の意識のせいだった。


 そんな純の部屋に、愛が入ってくる。

「お兄ちゃん、家に帰ってきてよ。お願い」

 と、純に抱きついてくる。

 愛は純を兄としてというより、一人の男として好きなのだ。

 そんな愛の気持ちがわかる純だが、純にとっては愛は妹でしかない。

 純は妹の身体を引き離して、黙って部屋を出て行ってしまうのだった。


★意識の流れK

事前には思いもよらなかった純のサブストーリーが動きだしたね。

そうか。

純には、そんな過去があったんだ。

なにか暗い過去を背負っている男のような気がしていたけど、そういうことがあったのね。


こんなふうにして、書き出す前は思いもしていなかったことが、不意に出てくることがあります。

これが無意識の作用。


キャラの設定を考えているときに、無意識が用意しているのかもしれません。

書きながら発見していくということがあります。


僕はそれが楽しい。

物語を見つけていく感じです。


心を閉ざし、恋などというものからは距離を取っている男には、とうぜんそれなりの理由があるはず。

行動には必ず理由があります。


逆に言うと、行動させたなら、そこには理由を付けなければならないというわけ。


この純の目的はなんだろう?

近い目的は見失った。

自分を罰したい。

本当は生きる目的を取り戻したい。

とか、そういう感じか。


よし、二つのストーリーを絡ませてみよう。


★ストーリーの続き⑦

 ミエは打ちひしがれ、人気のない公園のベンチで茫然としている。

 そこに自分のアパートに帰る途中の純がやってくる。

 純は見て見ぬふりをして立ち去ろうとするが、ミエのあまりの傷心ぶりが気になるのだった。


★意識の流れL

 ここですんなり二人を絡ませていいものだろうか?

 それだとあまりにも都合良すぎないか。

 自分の行きたいところに、かってに持っていこうとしてないか?


 危険信号が鳴っている気がする。

 会うにしても偶然ではなく、必然の流れで二人が再会するようにできないか。

 ここは大事な気がする。


★ストーリーの続き⑧

「キャ~~~~ッ!」

 純はミエの悲鳴を遠くで聞く。

 ハッと振り返り、ミエのいたベンチの方へと駆け出す純だ。


 ミエは飼い主のリードを離れた犬に飛びつかれようとしていた。

 その犬を特殊警棒で叩き伏せたのは、警官の新玉だった。

 ミエがピンチになったときに、どこからともなく私服の新玉が現れたのだ。

「大丈夫ですか、ミエさん!」

「は、はい……」

 ミエはなんともなかったが、犬は失神してしまっていた。

 そこまでひどく殴らなくてもと思ってしまうミエだ。

 だが新玉は、ミエを救ったことが嬉しそうだった。


 すこし離れたところからその様子を目撃した純だった。

 純は新玉が私服なのに、特殊警棒を持っていたことに不信感を抱く。

 そしてあまりにもタイミングよく彼が現れたことも気になった。

 しかしよけいなことは考えないようにしようと、頭をふって歩きだす純である。


★意識の流れM

 新玉が悪役として、上昇してきたぞ。

 実はストーカーなのは、新玉だった。


 新玉が『恋』のアンチテーゼとしての存在になるのか?

 なるとしたら、

 それはいいかもしれない。

 恋が良い方にではなく、悪い方に向かったのがストーカー行為なわけだし、大きな意味でメインテーマともつながるし、いいんじゃないか。


 ストーリーを作り始めた時には考えもしていなかった、アイディアが出てきた。

 これも無意識が仕込んでいたことなのかもしれない。


★追加の新設定を考える

 新玉は、占いの館に通いはじめてから、主人公のミエに恋をして、それをゆがんだ形でふくらませてしまったのだ。

 彼の中には独自の正義感があり、自分が絶対的な正義であると信じている。

 だからこそ警察官になるという道を選んだのだった。

 だが彼の正義感はしだいにゆがんでいった。

 それは度重なる警察内でのいじめなどによるストレスが原因だったのかもしれない。

 いや彼が警察官になると決めたのは、同じく警察官だった父親の影響でもあった。

 厳しい父親からDVを受けて育ち、彼の正義感はどんどん歪んでしまったのだった。

 父親の自殺が、それを決定的にした。


 新玉の人物像が浮かびあがってきたぞ。

 男がストーカーになるには、その理由が必要だもんね。

 歪んだ正義感をもった男が、警官という権力を持ち、さまざまなことを自分のコントロール下におくことで成長する。そして付き合う女も、コントロール下に置きたがるようになる。

 女を好きになったとしたら、その女を自分の思い通りにしようとするだろう。

 自分の父親が自分にしたように。

 新玉は、そうして何人もの女性を毒牙にかけて来ている。

 そして今ターゲットにしているのが、ミエなのだ。


 書き始めた時は、新玉がこんなに重要な役になるとは思いもしていなかったけど、これは必要な敵役だ。

 メインストーリーは新たな展開をしていくことになるが、この新玉という存在がキーになるかもしれない。

 この男は、何をしでかすのだろうか?

 主人公ミエや純の最大の障害になるのが、この新玉という人物でいいんじゃないだろうか。

 だんだんストーリーの輪郭が見えてきたぞ。


 書いている自分も楽しくなってきた。

 (この書いていて楽しいという感覚が大事です。自分が楽しくないと、人を楽しくさせることなど絶対にできないしね)


★ストーリーの続き⑨

 ミエと新玉はレストランにいる。

 新玉の誘いにミエがのったのだ。

「黒井って上司、ひどい人ですね。ミエさんは、何も悪いことないじゃないですか!」

 新玉はミエの話を聞いて怒る。

「でも怪我をさせちゃったのは、わたしですから……」

「ぼくにまかせておいてください」

 新玉はミエと一緒に食事ができたのが嬉しいようすだ。

 ミエも、この人と恋ができるのかと思ったりする。

 本音は占いの館で触ったときに感じている。

 彼の自分への恋心は本当のものなのだ。


 ミエの家の前まで新玉は送ってくれた。

 嬉しそうに帰って行く新玉を、妹の志麻に見られてしまうのだった。

「やったね、おねぇちゃん。ついに彼氏できたんだね。あの人、いい感じじゃない。公務員で安定しているし、お姉ちゃんにはぴったりだよ」

 と、喜ぶ妹だ。

 ミエは否定するのも面倒なので、志麻の話にあわせてしまうのだった。


 盛り上がっている志麻に、仕事を首になったうえに、多額の賠償をしなければならなくなったことを言えないミエだ。


 翌日、仕事に行くふりをして、ミエは新しい仕事を探しにでかける。

 しかしまったく仕事は見つからない。


 思いきってキャバクラに飛び込んでみようとするが、店の中は男たちの欲望の声であふれていて、ミエはすぐに耐えられなくなってしまう。

「あんた、首ね」

 と、ここでもあっさり首を切られる。

 精神的にも肉体的にも疲れ果てるミエだ。


 そんなミエの目にふと、「バイト募集」のチラシがとまる。

 それは純の働いているコンビニだった。


 純のいる場所で働くのはためらわれたが、金を稼ぐためにはしかたがない。

 ミエは、そのチラシを手に取るのだった。

 ミエと純は同じコンビニで働くことになる。


 はじめてのコンビニの仕事にミエはとまどうことばかり。

 同じシフトに入っている純は、ほとんど手伝ってくれない。


 とうとう切れたミエは、

「どうして知らんぷりばっかりしてるんですか。手伝ってください。教えてください」

 と、純に頼むのだった。

「ストーカーの俺が、手伝っていいのか?」

 と、純は皮肉を言う。

 しかたなくミエは謝罪し、仕事を教えてもらうのだった。


 ミエは純の本音が知りたいと思い、純の身体に触ろうとする。

 しかしなかなかうまくいかない。

「おまえ、何考えてるんだ」

 と、純に誤解されてしまうしまつだ。


 その様子をたまたま見た愛は二人がいちゃついていると誤解してしまう。

 ミエを外に連れ出して、

「うちの兄に手を出したら、許さないんだからね」

 と、脅す。

「誤解だよ、あなたのお兄さんのことなんか、なんとも思ってないから」

 必死に言い訳をするミエ。

 そこを純に見られてしまう。

 純はアルバイト先にきた妹の手を引いて、コンビニの裏に行く。

「ここには来るなって言っといたろ」

 と、純は愛を叱る。

 二人の声を聴いていたミエは、この兄妹には複雑な感情があることを感じるのだった。


 コンビニ仕事の最中、純に電話がかかる。

 その電話に出た純は、表情を一変させる。

 ただならぬ用事ができたらしく、ミエに店をまかせて深夜の街に消えて行く純だった。


 深夜。

 ラブホの一室。

 黒井と飯井がいる。

 飯井の思惑通りに二人はできてしまったのだった。

 黒井は飯井に対して、たいした怪我ではないことを教えていた。

 飯井にとっても目の上のたんこぶだったミエを追い出せたのは狙い通りだった。

 ずっと狙っていた黒井をおとせたのだ。


 だがこの室内に、突然覆面をかぶった謎の男が乱入してくる。

 驚く二人だが、謎の男は有無を言わせずに黒井をボコボコにして立ち去るのだった。


 翌日。

 ミエは家のテレビでニュースを見て、黒井が殺されたということを知り、声を出して驚く。

 家のチャイムが鳴るので、ドアを開けると、そこには捜査一課の刑事が立っているのだった。

「黒井さんとのことについてお話をお聞きしたいのですが、出頭していただけますか」

 前日に黒井ともめていたミエは、容疑者として警察に連行されてしまうのだった。


★意識の流れN


 物語が大きく動いてくれたね。

 新設定を付け加えた新玉が、動き出してくれました。

 主人公を追い込んでいくために、周囲でもトラブルを大きくしていくのは彼の役目ですね。

 いいんじゃない。


 作り手としては、この殺人を犯したのは新玉だということがわかってるんだけど、視聴者にはもしかしたら純なのかもしれないと思わせるのもいいかもしれない。

 ミステリーがあると、物語を引っ張っていく力になるから。


★ストーリーの続き⑩

 ミエは警察で取り調べを受ける。

 直前に黒井ともめているので、疑われたのだ。

 ミエが刺客を差し向けた可能性もあると刑事は疑っていた。


 担当刑事は、鳥飼慶子(35)。女性刑事だ。

 女性にもかかわらず、異例の早さで刑事になった警視庁のエリートだ。

 彼女は男性社会の警察の中で、なんとしてでも手柄をあげて出世しようと思っている。

 鳥飼に触れたミエは、彼女が自分を本気で疑っているのを感じるのだった。

 自分は何もしてないのに、どうしてこんな目にあうのかと悲嘆するミエだ。


 鳥飼は、犯行時間にコンビニの同僚の純が店からいなくなっているということも知っていた。

 ミエと純の間に何かつながりがないかをしきりと聞き出そうとする鳥飼だが、ミエはそんな意図があるとはまったく気づかない。

 どうやらミエと純は、それほど近い関係ではないと判断する鳥飼だ。

 しかし何故、純は深夜に店からいなくなったのか?

 彼を呼び出したのは誰なのか?


 姉のミエが警察に連行されたということを知った志麻は、コンビニで夜中まで一緒にいたはずの純に、姉の無実を証明してくれと頼みに行く。

 純は夜のシフトを途中から抜けていたので、証明することはできないと言う。

 ふと純は気がつく。

 コンビニの監視カメラにミエが映っているかもしれないと。

 それを警察に見せれば、彼女のアリバイは証明できるはずだ。


 映像を持って純は警察に向かうのだった。


 疑惑が晴れて、警察から出てくるミエと純と志麻。

「ありがとう……」

 と、ミエは二人に礼を言う。

「純さんにお礼をしなきゃ。ふふふ。お食事をごちそうします」

 志麻はこれを口実に純に迫るつもりなのだった。


★意識の流れO

 登場人物が勝手に動きはじめ来た感じ。

 これは登場人物を作り手が自分のなかにはっきりと手にいれているということ。

 ここからは人物たちが、どう動くのか、それにまかせてみようと思う。


 しかしこのあたりで、ミエと純をもっと近づけたいね。

 この物語はラブストーリーを目指しているわけだし。

 恋ができない女が、恋をすることにならなきゃ。


 ミエが恋をするには、何があればいいんだろう。


 自分が恋をしていることに気づくことが、最初だよね。

 それは思わぬ嫉妬かもしれない。


 どうしたら、その状況ができるのだろう?


 主人公とその相手(純)は、出会い、かかわり、同じ職場で働き、助けられたりした、どんどん接近してきてはいる。

 最初は不気味に感じていた相手だが、次第に好感に変わってきていると思う。

 ここでもう一押し、決定的なことが欲しいよね。


 なにがあるんだろうか?


 純の内面をミエが知ったらどうだろう。

 同情とともに、純の誠実さを感じると同時に彼により惹かれるのではなかろうか。


 うん。

 それで、行こう。


 ただどうやってそれを知ることになるかだ。

 すんなり行っちゃ面白くない。


★ストーリーの続き⑪

「俺、まだ用事あるから」

 と、言って純は立ち去ろうとする。

「あ、待ってください」

 と、志麻は純を追って行くのだった。


 ため息をついてミエが違う方向に歩きだそうとしたとき、刑事の鳥飼が声をかけてくる。

「刑事さん、あたしの疑いは晴れたはずでしょ?」

「もう少しだけ話を聞かせてもらいたいの」

 鳥飼がミエに聞こうとしたのは純のことだった。


 公園のベンチに座って、鳥飼はミエに純の昨夜の行動を聞く。

 鳥飼は既に調べていた純の過去を、その会話の中でミエに教えてくれるのだった。

 それはミエの思いもよらないことだった。


 純が元自衛隊員で、しかも傭兵として戦場に行っていたということ。

 そこでの戦闘で仲間たちを失い、生き残ったことで、精神的なトラウマを抱えているということ。

 ミエは最初に純に触れたときに感じた、怒りや悲しみの感情は、そのせいだったのだということに気づくのだった。

「彼、あなたが黒井さんから暴力を受けたことを聞いて、どういう反応してた?」

 鳥飼が、純のことを疑っているのを感じるミエだ。


 ミエは自分のために純が黒井を襲うなんてことあるわけないと思うが、もしそうだったとしたら、自分はどうしたらいいのかわからない。

 とまどうミエだ。


 もう一度純に触れば、本当のことがわかるはずだ。

 そう思ってミエは、純のあとを追うのだった。


 ミエは妹の志麻が純につきまとっているはずだと思いつき、妹に電話で連絡して居場所を突き止める。

 そこに向かって駆け出すミエだ。


 志麻は純をレストランに連れて行き、食事をごちそうしていた。

 しかし純があまりにも無愛想でつっけんどんなので、とうとうぶち切れてしまう。

「もう、がっかりだわ。期待して損しちゃった」

 と、呆れて出ていってしまうのだった。


 相手がいなくなったテーブルで一人食事を続ける純の前に、ミエが来る。

 ミエは思いきって純に訊ねる。

「昨日の夜、どこに行ってたの?」

 刑事は純のことを疑っているのだということ話すミエ。

 しかし純は何も答えない。


 本音を知りたいが、触るチャンスもない。

 焦ったミエは、お酒を飲み始めてしまうのだった。

 お酒が好きなくせに弱いミエは、あっというまに出来上がってしまうのだった。

 純は食事を終え、さっさと店を出て行ってしまう。

 やけになったミエは、一人でお酒を追加注文するのだった。


 酔っ払ってくだを巻いたミエは、店からたたき出されることになる。

 そこに純がいた。

 純は残した見えのことが気になって、戻ってきていたのだ。

「あ~~、いたいた。どこに行ってたのよぉ~~」


 純に、つきまとう酔ったミエ。

 なんとしてでも純が昨夜何をしていたのかを聞こうとする。

 触ろうともするが、かわされてしまうのだった。

「飲もう、飲もうよ!」

 と、ミエは無理矢理純にも酒を押しつけるのだった。


 純は酒が弱かった。

 しだいに純は表情を崩して行く。

 ついに酔っ払った二人は、夜の公園で盛り上がってしまう。

 当初の目的をすっかり忘れて、子供のようにはしゃぐミエである。

 純も、ひさしぶりに笑う。


 酔ってバランスを崩して倒れそうになったミエを支えようとする純。

 二人は偶然に触れあってしまう。

 そのときミエには、純の本音が聞えてくることはなかった。

 見つめ合う二人。

 ミエは、ふいに胸がたかなっているのに気づく。

 衝動的に、ミエは純にキスをしてしまう。


 そんな二人を公園の隅から見つめている男がいる。

 警官の新玉だ。

 新玉の表情が怒りに変わる。

「ちょっと、きみ」

 と、新玉の背後から声をかけたのは、女刑事の鳥飼だった。

「はっ」

 新玉は刑事に敬礼をする。

 鳥飼はミエをつけてきていたのだという。

 だから余計なことはするなと、新玉に釘を刺す。


 酔い潰れてしまったミエを純が背負って行くのを、鳥飼と新玉がつけて行く。

「情報通りだわ。やっぱりあの二人、つきあっていたか……だまされるとこだったわ」

 と、鳥飼は黒井殺しを、あの二人が共謀してやったのかもしれないと言う。

「そんなことは、ありません」

 真顔になった新玉が言うのだった。

 新玉は純の単独犯だと言う。

「もしかして、あたしに情報をくれたのは、あなたなの!?」

 不信感を抱いた鳥飼が振り返ると、いきなり新玉が強力なスタンガンで彼女を気絶させてしまう。

 驚愕の表情のまま倒れる鳥飼だ。


 純は酔っ払いながらもミエを彼女の家まで届けようとするのだが、力尽きてしまう。


 翌朝、目をさますミエ。

 そこは豪華なスイートルームのベッドの上だった。

 どうしてこんな部屋にいるのか、さっぱりわからない。

 そして純の姿は無かった。


 昨夜自分のしたことを思いだして、恥ずかしさで真っ赤になってしまうミエだ。

 断片的な記憶が残っていた。

 キスをしてしまったこと。

 強引に純を占ってやるといって、無理矢理手を握ったこと。

 彼のトラウマの原因を聞いたこと。

 しかしはっきりとは思い出せない。

 もしかしたら彼と寝てしまったのか?

 いや、やってしまったという感触はない。

 本当はどうなんだろう。

 もだえているところにルームサービスが朝食を届けてくれる。

 支払いも済んでいると告げられるのだった。


 自分の中に恋する気持ちがあったということにあらためて気づいて、胸がたかなるミエだ。

 こんな気持ちははじめてだった。

 いてもたってもいられなくなったミエは、純の姿を探してホテルを飛びだしていく。


 コンビニではいつものように純が働いていた。

 その前に行き、もじもじするミエは、まるで初恋をした中学生のようだ。

 しかし純は、何事も無かったように無視するのだった。

 恥ずかしくなったミエは、逃げ出してしまう。


★意識の流れP


なんか韓国ドラマみたいな展開になってきたぞ。

でも良い悪いはべつにして、最後まで書いてみよう。

書き出したものは、最後まで書く!


新玉は暴走しはじめた。

彼の目的は、ミエの愛を手にいれること。(歪んでいるが)

そのための障害は、ぜんぶ排除しようとするかもしれない。

新玉に倒された鳥飼はどうなったんだろう?

殺された?

監禁?

黒井を殺したのだから、やはり殺したのだろうか?

鳥飼は、なにか使い道があるような気がする。

新玉はもともと黒井を殺そうとしたわけではなく、結果的に殺してしまい、その後始末をどうつけようか、必死で考えているのかもしれない。

そして衝動のままに、鳥飼にも手をつけてしまったのかも。


先のことは考えずに、書いてしまったけど、こういうのも無意識がやらせている気がする。

無意識を信じよう。


愛の動きは、どうなる?

兄の純が、父親がオーナーのホテルに女(ミエ)を連れ込んだということは、彼女の耳にも入るはず。

そうなると、彼女はどうする?


志麻は、どんな動きをする?

純をあきらめたら、もしかしたら新玉を手に入れようとするかもしれない。

新玉がミエを好きなのは感じ取っているから。

でもこの志麻のキャラクターは、そういうことをしそうになさそうな気がする。

案外、おねぇちゃん思いだしね。


終盤に向かって、要素はそろっている気がする。


それぞれの人物が、自分の目的を果たそうとして動き出す。


純に深夜にかかってきた電話の相手はだれだったのか?

そのあたりのことはまだ回収されてない。

それは恐らく純の過去にかかわることかもしれない。


電話の相手は、病院の医師で、純と一緒にボランティアに行っていて銃撃戦に巻き込まれた仲間の一人が意識不明のまま病院に収容されていた。

そして彼が危篤状態になったという知らせだったとしたら……。


いやいや、そんな設定は、前振りなしてはだめだろう。


やはり電話をかけてきたのは新玉で、純を呼び出すことで彼のアリバイを無くさせて、黒井殺しの罪を着せようとしていたというのがいいのではないか。

うん、それならうまくいきそう。


新玉にとって、もっとも邪魔な存在は突然現れた純だ。

その純を除外するというのが、目的になっているはず。


新玉はミエの側にいつも現れる純を邪魔に思っていて、黒井を片付けると同時に、その罪を純に着せようとしていたのだ。

鳥飼が純に目をつけたのも、裏から新玉が情報を流していたからで、そしてあとをつけていたのだが、新玉に自分が裏で手を引いているということに気づかれたので片付けたということで、うまく全てがつながる。


うん、いいかもしれない。

行ける気がする。

このまま行ってみよう。


まてまて、主人公がせっかく自分の恋する気持ちに気づいたんだぞ。

クライマックスに向けては、その主人公をどん底に落とさなきゃならない曲面が絶対にくるはずだから、そのまえに主人公が絶好調になるところを用意してあげなきゃ。

恋する気持ちが絶好調になるところ。

主人公が恋で浮かれるところをやらなきゃ。


セイブザキャットを書いたブレイク・スナイダーのいうところの「おたのしみ」の部分だね。

主人公が絶好調になるところ。

ミエを楽しませてあげよう。


ラブコメとしては、ここは楽しくみることができるシークエンスになるはず。

なーんか、ラブコメからサスペンスの方に流れている気がするけど、まぁいいんじゃなかろうか。


★ストーリーの続き⑫

「お姉ちゃん、昨日はいったいどこに行ってたのよぉ!?」

 朝帰りしたミエを、志麻が詰問する。

 ミエは正直に答えることができない。

 勘がいい志麻は、ミエに何かがあったことを察知するのだった。

「お姉ちゃん、まさか……相手はいったい、誰なのよ!?」

 もちろんミエが本当のことを言うはずもない。

 ただ自然とにやけてしまうミエだった。


 自分にも恋する気持ちがあるということをはっきりと意識したミエ。

 ミエはまるで初恋をした中学生のようになる。


 純がしらぬふりをしたのは、キスをしたことをおぼえていないのかもしれない。

 自分も酔っていて、記憶があいまいなのだから。

 純もおぼえていないのかも。

 でもキスしたときには、嫌な感じは伝わってこなかった。

 脈はあるのかもしれない。

 そんなことを考えるミエである。


 好きな人ができたときに、どうしていいのかわからないミエは、ネットで調べて男が喜ぶことを実行することを決意する。


 純にお弁当を作って、届ける。

 おしゃれをして純の前に現れる。

 そんなときミエは仕事を無くしたことも、お金を稼ぎたいと思っていたことも、すっかり忘れてなんだか毎日が輝いて見えるのだった。

 ふつうの恋する女の子としての喜びと不安を感じるミエだ。

 恋する乙女状態の姉を、妹の志麻は微笑ましく見守り、アドバイスをしてくれるのだった。

 志麻はまさか相手が純だとは思っていないのだが、姉がはしゃぐ様子がうれしいのだ。


 ミエの純へのアタック作戦は続くが、純はことごとくそれを無視する。

 しかしミエはへこまない。

 なんといってもずっと恋などできないと思っていたのに、初めて人を好きになったのである。

 それを手放すわけにはいかないと思っているのだ。

 

 ミエは自分が変わったことに、自分でも驚いているのだった。


★意識の流れQ

 ミエが初めての恋に浮かれて絶好調なところは、こんな感じでどうだろう。

 普通の子なら中学生くらいで体験することを、25歳の女がいまさらやっている姿は、それだけでコメディチックなものになるのではなかろうか。

 嬉し恥ずかしの恋する乙女大作戦だ。

 それは笑えるものがいい。微笑ましいが、ちょっとやりすぎてしまうようなおかしさね。


 純の方は、どうか?

 こんなに正面から想いをぶつけてくる女性に出会うのは、もしかしたら初めてかもしれない。

 純も過去の事情から恋などをするつもりはさらさらなかったはずなのに、いつしか彼女のペースに巻き込まれはじめている。

 それは純にとっては、悪い気持ちはしない。

 だがそんな気持ちにはなってはいけないと、自分の心に蓋をしている。


 純の方のサブストーリーにも、なんらかの動きがあるはず。


 引きこもっていた彼の前に、父親が現れて、仕事を継いでくれと言ってくるのはどうだろう?

 それを受け入れたら、ミエが生み出してくれている、このひとときの安らぎの時間は終わるかもしれない。


 いや、そういうのは必要なのだろうか?


 純がミエのことをもっと知り、自分にとって大切な人なのだということに気づいていくということがあれば良いのではないだろうか?

 純にとってのドラマは、心を痛めた男が、その傷から立ち直っていくことであるはず。

 それならば自分の傷を癒やしてくれる存在が、目の前にいたということに気づいていくことが、サブストーリーの着地ポイントになるのではないか。


 そのことに純が気づく瞬間というのは、どういうものになるだろうか?


 それは見つかるのか?

 書いていくうちに見つかればいいな。

 きっと見つかるはず。


 そうだ、新玉はどう動くのか?

 それがキーになる気がする。


 新玉は歪んだ愛でミエをしばりつけようとしている。

 その矛先は、純に向くのではないか。


★ストーリーの続き⑬

「いいかげんにしてくれ! 俺にもうつきまとわないでくれ!」

 純はミエを突き放す。

 それでもミエは、もう引き下がらない。

「いやです。あたし、あなたが好きになっちゃったの」

「それが迷惑なんだって言ってるんだ」

 突き放そうとする純の手を、半ば強引につかむミエ。

 純の本心が聞こえてくる。

『好きだ……でも、僕には人を好きになる資格がないんだ』


「どうして好きになる資格がないなんて思うんですか?」

 ミエは純の心の声に応えてしまう。

 驚く純に、自分は触ることで人の思いが聞こえるのだということをカミングアウトする。

 とっさにミエの手を振りほどく純。

 ミエが今までしきりに純に触ろうとしていたことに思い当たったのである。

 自分の本心がミエに見られたこと、心の扉を強引に開けられてしまったことに戸惑い、その場から逃げ出してしまう純だ。


 次のアタック作戦を志麻と立てるミエ。

 純を戸惑わせてしまったが、純の本心は自分を好きでいてくれているということを知って、ミエは浮かれているのだった。


 だがそのとき、ドアを蹴破る勢いで入ってきたのは、純の妹の愛だった。

 愛はものすごい剣幕で、ミエを非難する。

「純に、手を出すなんて、絶対に許さない!」

 あたふたしてごまかそうとするミエだが、ごまかしきれない。

「あたし純さんが、好きなの!」

 ついにミエは、純のことか好きになってしまったのだと宣言してしまうのだった。

 それを聞いた愛は逆上して、ミエにつかみかかる。

 必死にそれを止めようとする志麻。

 三人はもつれあう。


 しかしもつれ合うなかで、愛に触ったミエは、心の声を聴いてしまっていた。

 彼女は純のことをずっと愛してきたのだ、それを諦めなければならないと思っていても、それができずにいるということを知り、彼女のことを理解するのだった。

 涙ぐむ愛を抱きしめてやるミエだ。


 夜のコンビニで働く純。

 店のあちこちにミエからのラブメッセージが仕込まれている。

 つい微笑みを浮かべてしまう。

 ミエに言われた言葉が純の脳裏によみがえる。

 その言葉は、純の心の扉をさらに押し広げていくようだった。


 そのとき純は自分をどこからか観察している視線があるというのを感じる。

 戦場のトラウマがフラッシュバックスする。

 それを振り払おうとするが、それは消えてはくれない。

 純は防衛本能から、コンビニにあるいくつかのものを身につけたり、リュックに入れたりする。(意外なものを、あとの状態を切り抜ける時に使う)


 夜道を歩いて自宅に帰ろうとしていた純は、いきなり現れた大型バンから降りてきた屈強な男たちに殴られて拉致されてしまうのだった。

「黒井さんを殺ったのは、てめぇだろ!」

 否定しようとしても無駄だった。

 この半グレたちは黒井を殺したのは、この純だという情報をどこからか得ていたのだ。


 一方、ミエの方にもスマホに連絡が入っていた。

 警察からで、純が大変なことになっているというものだった。

 迎えをやるので、すぐ来て欲しいと言われる。

「すぐに行きます……!」


 ミエが表に出ると、そこにはパトカーに乗った新玉が待っていた。

 車が向かった先はとある倉庫の前。

「ここに純がいるんですか?」

 不審に思うミエだが、新玉を疑うことはしない。

「ミエさんには、非常につらいことかもしれませんが、彼はいま刑事殺害犯として逃走中です。彼を説得していただきたい」

 目の前の大きな倉庫の中に純が潜んでいると言われるのだった。


 古い倉庫に連れ込まれた純は、そこでボコボコにされそうになる。

 そこでコンビニから持ってきていたもので、拘束を解いて反撃を開始する純。

 元傭兵の純の戦闘能力は高い。

 しかし半グレたちは数で勝る。

 多勢に無勢で押されるが、次々と相手を倒して行く純だ。


 半グレたちとの乱闘の中で、純は建物の中の一室に追い込まれる。

 驚いたことに、そこには数日前に純を事情聴取した刑事、鳥飼の変わり果てた死体があった。

 愕然とする純だ。


 そのときサイレンが聞こえてきて警官隊が近づいてきているのがわかる。

 このままでは自分は刑事殺しの犯人にされてしまう。

 しかし何故こうなったのか!?


 ミエと新玉がいる近くに、警官隊が駆けつけてくる。

 警察の特殊部隊SATも来る。

 刑事を殺した犯人が、この中にいると新玉が通報していたのだ。

 倉庫を取り囲んでいく警官隊だ。

 ミエは、目の前で起きていることが信じられないのだった。

 

★意識の流れR

さぁ、いよいよ、大詰めが近づいてきたよ。

主人公が最大のピンチを迎えなきゃならないところだ。


今回の主人公ミエにとっての最大のピンチってなんだろう?

やっと恋をすることにできたのに、それを無くしてしまうという局面がそうだろう。

それをどうやって乗り越えるのかがクライマックスになっていくはずだよね。


そしてメインストーリーとサブストーリーがしっかりと交わることが必要。

主人公によって、その相手役である純が大きく変化しなければならない。


★ストーリーの続き⑭

 純は自分を追い詰めたのが、新玉だということに気づく。

 いままでのいくつかの瞬間が、パズルのピースがはまるように感じるのだった。

 新玉こそがミエの真のストーカーで、黒井を殺し、その罪を自分におしつけ、さらにこの刑事まで手にかけたのだ。

 そして全ての犯行を自分になすりつけようとしているのだと。


 新玉はミエに自分を信じさせようとしていた。

 「あなたは、かならず僕が守ってみせます。だから勇気を持って、彼を説得してください」

 と、スピーカーのマイクをミエに渡すのだった。


 ミエが新玉からマイクを渡される時に、新玉の手がミエに触れた。

 そのときミエは、新玉の本音を聴いてしまう。

 『これでこの女は、おれのものだ』

 ミエは新玉が邪悪な存在で、自分を騙そうとしているということに気づく。


 このままでは純が危ない。

 いてもたってもいられなくなり、ミエはマイクを捨てて、倉庫の中に走り込んでいくのだった。

「くそっ!」

 呪詛の言葉を吐いて、新玉も倉庫内に入って行く。


 大きな倉庫の中は、反グレ、警察の特殊部隊が入り乱れるカオス状態だ。

 その中で必死に純を捜して走るミエだ。


 倉庫から外に抜ける通路を純は見つけていた。

 そこから脱出しようとしていたときに、先回りした新玉が立ち塞がる。

 新玉はすべてを自分の手で決着をつけようしていた。

 純をここで撃ち殺して、正当防衛で処理をしてしまえば、自分は二人を殺した犯人を捕まえようとして射殺したことになる。

 ミエにばれてしまったが、ミエの証言には何の根拠もない。

 新玉は純に向けた引き金に指をかける。

「黒井も、あの刑事も、あんたがやったんだろう」

 純の問いかけに、新玉は「そうだ」と答えた。

「だが、おまえがやったことになる。すべての証拠は、おまえが犯人だと示しているんだからな」

 そう言うと新玉は引き金を引く。


 ガーン!

 銃弾が純の胸に命中。

 純は倒れる。

「純!」

 そこにミエが駆けつける。

 同時に特殊部隊も乱入して来る。

 新玉は両手をあげてひざまずくのだった。


 純の身体にしがみついたミエは半狂乱で泣き出す。

 純が死んだと思ったのだ。

 だがそのときあの声が聞こえてくるのだった。

『けっこうおっぱい大きいんだな』

「え……」

 ゆっくりと純が目を開く。

 その手には録音状態になったスマホが握られていた。

 再生ボタンを押すと、

 さっきの純と新玉の会話が流れる。

『あんたが黒井と刑事をやったのか?』『そうだ』

 それは自白と同じだった。


 そこに死んだと思っていた鳥飼刑事がふらつく足で現れる。

 鳥飼は純に救命措置を受けて蘇生していたのである。

「新玉元、あなたを逮捕します……」

 一斉に特殊部隊の銃口が新玉に向けられるのだった。

 新玉は観念し、両手を挙げる。

 鳥飼が新玉に手錠をかけるのだった。


「もう、へんなこと考えないで!」

 ミエが手を離すので、純は地面に頭をぶつけてしまう。

「いてぇ……」

 と、頭を抱える純だ。


★意識の流れS

 クライマックスはこんな感じでどうだろう。

 ラブコメ書くつもりが、アクション物になっちゃった。

 ラブコメアクションだね。


 設定で主役の一人を元傭兵なんて設定にしていたから、こういうことに向かってしまったのかもしれない。

 無意識って、すごいね。


 このクライマックスまでの展開は、他にもいろいろなことが考えられた。

 いくつかの案が浮かんだけど、これがもっともスムースに終われるように感じたのだった。


 たぶん穴があるとは思うけど、とりあえずは勢いのままに行けるので、これにしようと思う。


 残すはエピローグだね。


★ストーリーの続き⑮

 戦地で医療ボランティアとして働く純の姿がある。

 そこにミエから電話がかかってくる。

 ミエは黙って戦地に行ってしまった純に、すごい剣幕で文句を言うのだった。

 喧嘩ができるというのは、それだけ二人が親しくなっているということだ。

 叱られながらも嬉しそうに笑う純である。


 あたらしい占いの館で、恋に悩む女の子を励ましているミエだ。

 そこに占いの客として純の妹の愛が来る。

 どうやら彼女にも好きな人ができたようだ。


 ミエは自分の力が人に役立つことを幸せに感じるようになっているのだった。


★意識の流れT

大きなストーリーの流れはできました。

でもこれはほとんどプロットみたいなもの。

本来の順番ならば、短いストーリー案をつくってから、プロットを書き、それを箱にして、脚本の構成を組み立てて行きます。

今回は無意識の作業にまかせてストーリーを作るということをしてみました。


でもこれを人に見せるためには、もっと短く、わかりやすいものにしなければなりません。

企画のプレゼンのためには、その作業が大事です。


今回サンプルとして、ストーリー(プロット)を作ったけど、サンプルだけにするのは惜しくなりました。

どなたかこれを映画化してみようという方、いませんか?


脚本家志望のみなさま、僕自身の意識の流れという形で、ストーリーを作っていく過程を見てもらいました。

みなさんの創作のヒントになれば、幸いです。

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