見出し画像

歴史小説のたのしみ

歴史をモチーフにしたフィクションが好きで、よく読む。司馬遼太郎作品はかなり読んだし、大河ドラマも毎年見ている。大河ドラマの時代の小説を読みがちで、今は幕末モードになっている。多分来年は鎌倉時代の本を探すのだろうと思う。

歴史上で起こったことは一つなんだけれど、それを私たちは知らないし、タイムマシンができない限りは、見に行くこともできない。時代が遡るほど史料は少なく、数少ない史料によって、そこに生きている人がどんな人生を送ったのか、私たちは想像するしかない。学校の歴史の勉強を経てから歴史の小説をたくさん読むようになって気づいたことは、数少ない史実をもとに、いろんな作家さんがいろんな物語を作り上げてて、その枠の中でどれだけ奇想天外な物語を膨らませられるか、それが歴史小説のおもしろさだよなあ、ということ。史実という決まりがあるからこそ、逆に想像が羽ばたく感じが、とても面白い。

司馬遼太郎さんの作品は司馬史観と言われてなんか定番化しているけれど、それが事実だったとももちろん限らないし、近年の発見で史実はいつもアップデートされている。史実なのにアップデート。それもおもしろい。そしてアップデートされた史実に基づいて、またフィクションが生まれていく。どの部分だったか忘れたけど、大河ドラマ「真田丸」では新たにわかった部分が採用されたりして、(これは池波正太郎だけど)「真田太平記」とは違う、新しい真田幸村が描かれていたはず。

なので、オーソドックスな定番を読むのも大好きなんだが、最近は、奇想天外な説が出れば出るほど面白い、って読み方になっている。そういう解釈か、ってなるのが、とても楽しい。例えば本能寺の変だって、物語によってはいろんな黒幕がいる。あの人はその時あそこにいたのは事実(アリバイがある)、でもそれでも信長を殺せるだろうか?そんな読み方、書き方をしたら、十分にミステリになりうる。

最近読んだのは木下昌輝先生の「絵金、闇を塗る」。幕末の絵師、絵金って人は私ははじめて知った。土佐出身、狩野派にも学んで古典も定番も身につけてから、血みどろの独特の作品を描き続けた。幕末の土佐だから、土佐勤王党とも関わりがある。絵金の絵によって、幕末(の土佐の人たち)はどう変貌していったのか、絵金が幕末の時代にもたらしたものはなんだったのか?そんな小説。とてもおもしろかった。

絵金について知りたい方はこちらご参照ください。

さらに面白いなと思ったのが、同じ作家が「人魚の肉」という時代小説も書いていること。これは「人魚の肉」に翻弄される幕末の土佐の人たちと、新撰組の人々を描く連作短編。絵金よりもちろんフィクションみが強いしトンデモな本ではあるんだけど、ちゃんと史実に「人魚の肉」をからませて説明がつくのが面白い。斎藤一とか。

そのどちらにも登場するのが坂本龍馬と岡田以蔵。同じ人物の人生なのに、もう、まったく違う描かれ方をしている。同じ作家であってさえ。

やはり歴史を書くのはおもしろいものだなあ、と思うのでした。

私も奇想天外なの書いてみたいけど、まずはものすごく勉強するところからはじめないと。枠を知ってこそ、外すことができるのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?