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メンタリストDaiGoの件を通じて思うこと②

その①はコチラ↓


昨日、日本中のホームレス支援団体等(81団体)が加盟している、NPO法人ホームレス支援全国ネットワークから、
DaiGo氏の発言に関する見解」が出されました。

僕が働くNPO法人釜ヶ崎支援機構も加盟しているとともに、支援機構の山田實理事長も、ネットワークの副理事長を務めています。
理事長は抱樸の奥田知志さんです。

この見解文作成にあたり、僕の意見も伝えさせていただきました。
(思っている以上に取り入れてもらえてびっくり)

さまざまなことを意見として伝えましたが、僕の中でもっとも伝えたかった部分が、

私たちはあらゆる人のチャレンジを応援し、伴走する活動を実施してきました。
本件を契機に、より多くの人がホームレス問題等について知り、考える
機会が生まれ、一人ひとりが豊かに暮らせる未来に繋がることを期待しています

です。

さまざまな人が、さまざまな意見を発信していますが、
今回のDaiGo氏の発言について、「ホームレス支援団体で働く僕自身」の思いとして、僕たちは誰かの人生の再チャレンジを応援する役割だと思っています。
その中には、それを阻害する要因をなくしていくことも必要であると思っていますし、命や尊厳を守ることは何よりも重要な取り組みの一つであると思っています。
ですので、「生活保護」「ホームレス」が差別や不当な扱いを受けないような啓発活動を行うことも役目であると思っています。

そういった点において、
・今回のDaiGo氏の発言が生まれてしまったこと
・DaiGo氏の発言に共感した人がいること
・DaiGo氏の発言により、傷ついた人がいること
は、我々の力不足であったことも一つ認めるべきではないかと自身では思っています。

たった一人のインフルエンサーの、たった数分の動画に自分も社会もこれだけ揺るがされてしまったことに、
その領域に携わる身としては悔しさを感じます。

もっと、多くの人が、事実に基づいた正しい情報や、「ホームレス状態に至る背景」などを知っており、それに納得できている世界だったならば、
そもそもDaiGo氏はあのような発言はしなかったのでは?
「は?あの人何言ってるの?あんまり知らん人なんやろなー」と、誰も取り合わなかったのではないだろうか?
という気持ちもあります。

釜ヶ崎に毎日いると、釜ヶ崎の外の世界への感覚やアンテナが少し偏ってしまうなーと、自分に焦りつつも、
こども時代からの友人や、民間企業で働いていた時の知り合いと久しぶりに会って話したりすると、認識のズレの大きさにいつも気付かされます。
「ホームレス」などに対しての世間の印象や知識が、自分とは大きく乖離している。

先日、僕の職場で大学生の実習生8人を2週間受け入れました。
会って一番最初に、「釜ヶ崎の印象」を聞きました。
ほぼ全員がネガティブな印象を持っていました。
・怖い
・治安が悪い
・汚い
など。
家から送り出してくれる親御さんに心配されて、ここに来た生徒も複数人いました。
大阪府の泉州地域で暮らす、南海電車ユーザーの学生さんは、ネガティブな印象を持っていたものの、「恐怖心」はなく、「汚い」などの「不快感」を有していて、他の生徒とはまた違った感覚があるな、と思ったのですが、
釜ヶ崎外の西成区民も「恐怖」ではなく「不快」が多いな、そういえば。とハッとさせられました。

恐怖心を持って、この街に来た学生たちに、釜ヶ崎の街歩きをした後に僕はいつも同じアドバイスをします。
「心に漠然と広がる恐怖心は整理してみよう」ということを。

「怖い」に至る理由をそれぞれに掘り下げてもらう。
「治安が悪い」に対して、そもそも本人の中で「治安」が何を指していて、自分が治安が悪いと思う状態、治安が良いと思う状態とは何を指すか?を確認します。

すると、
●治安が悪い
・ポイ捨てをする人がいる
・大声を出している人がいる
・歩きタバコをしている人がいる
・道路でお酒を飲んでいる人がいる

●治安が良い
・街灯が多い
・人通りが少ない
・ゴミが落ちていない

のような答えが返ってくることが多いです。

その上で、「釜ヶ崎の街を歩いて見て、あなたに直接何かしらの影響があったか」を質問すると、ほぼ100%で「何もなかった」と答えます。
「治安が悪い」に挙げたものを、なぜ自分がそこに挙げたか、実際にその風景を見た時に自分の中にあった感情などの根っこの部分に何があるかを考えてもらえればと思いながら質問を重ねていきます。

そんな実習生の1日目のレポートの一部を紹介させていただきます。

Aさんのレポート
今まで「西成区はこわい」「生活保護を受給している方は部屋の片付け、コミュニケーションが苦手」といった、偏見が自分の中にあった。しかし、その中でも、苦手な人もそうでない人もいることや、実はコミュニティがたくさんある温かい地域であることを知ることができた。今まで見たこともないのに「これはこうだ」と決めつけて偏見を持っていたことがあった。
Bさんのレポート
西成区に対してもっていた印象が1日で大きく変化があったので、偏見をもっている自覚を持つことの重要性を学んだ。家族や友人に心配されていた様な街ではなく、西成区に住んでいらっしゃる人達や地域の取り組みから人間の温かみを感じました。

実習生たちには、偏見を持たないことはきっとできない。だから、常に「自分は偏見を持っている」と自覚することが、大切だと思っていると伝えました。


認定NPO法人抱樸の奥田知志さんが、
DaiGo氏の差別発言に関する見解と経緯、そして対応について」を先日公開しました。
もう、すごいとしか言いようのない文でした。
その中で、

「学ぶ」と言うことは、自分を一旦切開し自分の闇を見つめることから始まります。単なる知識の上塗りではなく自己批判を伴う営みだと考えています。本当の「学び」は知識を得ると言う事では全くなく自分のしてしまったこと、あり方を一旦否定することから始まると考えます。

と書かれていて、自分の中でなんとなく感じていた「モヤモヤ」が見事に言語化されていて、少しクリアになりました。

今回の件は、DaiGo氏の発言に対しての問題点についての批判や今後の責任の取り方だけではなく、
我々にとっても「学び」として受け止める必要があると思いました。
目を逸らさず、「自分を一旦切開し自分の闇を見つめたい」と思いました。

(続く。めっちゃ続く。多分めちゃくちゃ続く)

釜ヶ崎で稼ぎ、釜ヶ崎でほぼお金を使い切るライフスタイル。余ったお金は基本的に釜ヶ崎の支援団体に寄付してます。なので、応援していただくと、結果的に地域内の飲食店か支援団体にだいたい届くことになります( ^ω^ )