見出し画像

ソーシャルビジネス×web3

22年8月31日、僕が代表をつとめているNPO法人ドットジェイピーからニュースリリースを出しました。

→ 日本初、既存NPO組織のDAOへの移行に着手!

ソーシャルビジネス×web3というと、「暗号資産を寄付する」ということを連想することが多いと思いますが、本質はそこではありません。それだと既存の寄付者が寄付するだけ、既存のプレイヤーが受け取るだけなので大きな変化は生まれません。

ソーシャルビジネスにとってのweb3とは、「資本調達の可能性が広がる」ということと、「社会課題の解決にはDAO化が不可欠で、それをブロックチェーンのテクノロジーを使えば加速できる」ということ。

たとえばNPOは株式を発行できず、事業規模を拡大するために必要な資本を調達する手段が限られています。はっきり言えば大口寄付に頼るしかありません。もしNPOがトークンを発行し、資金を調達することができるようになれば、これまでリーチできなかった層からの協力を集めることができるようになります。

国内でトークン発行することの問題についてはすでに様々な指摘と議論が重ねられていますが、つい先日「資金調達のために発行する暗号資産のうち、自社で保有する分にかかる法人税の課税方法を見直す方針を固めた。」という報道もあり、環境は整いつつあります。

また、ソーシャルビジネスが向き合う社会課題はその団体1社だけが成長したところでとうてい解決には至りません。ドットジェイピーは若年投票率の向上という社会課題に取り組んではや25年になります。この間おかげさまで団体としては継続的な成長によって事業規模も拡大してきましたが、ご承知の通り肝心の若年投票率はまったく向上しません。

「一つの団体の成長だけでは社会課題は解決されないのでは」ということに注目し、コレクティブインパクトという手法に注目が集まり、行政・企業・NPOなどいろんなセクターや団体が連帯して課題解決に取り組む事例が増えてきました。コレクティブインパクト説明を聞くと、ほぼほぼDAOの説明と同じです。

©2016 PubliCo inc.

「社会を良くする」という共通目的に対して、社内・社外、個人・法人、国内・海外問わず集まってきてDAOを形成し、運営側とユーザー側がだんだん溶けて行き、完全に一体となって課題に向き合っていく姿かたちは、いわばコレクティブインパクトの究極の形といえるのではないでしょうか。

社内も社外も一緒に取り組む


イシューを真ん中に

ソーシャルビジネスが発行するトークンを多くの人が手にして、貢献した証明として活用することもできるだろうし、コミュニティ連帯の絆として活用することもできます。さらには貢献を可視化し、経済的なインセンティブとして活用することもできるかもしれない。課題が解決に近づけば近づくほどトークン価値が高まって、保有している人も経済リターンを得ることができるとしたら、課題解決のスピードはきっと加速するはず。

これまでweb3というと暗号資産やdefi、NFTに注目が集まり、最近は「投機でしょ」とか、「冬の時代でしょ」とか言われていますが、DAOとトークンエコノミクスはソーシャルビジネスととても相性がいいと思います。

そもそもソーシャルビジネスのなかにはすでにDAOになっているケースも多いです。NPOは企業と比べて人的リソースに限りがあるため、ボランティアや協力者によって運営されていることは珍しくありません。ボランティアたちは最初は事務局から説明を受けますが、すぐに自発的・自律的に活動していきます。

ドットジェイピーも運営事務局はありますが、主体となって前線で活動しているのは学生スタッフと呼ばれるボランティアたちです。事務局がいちいち細かい指示出しをせずとも、何をやればいいかは彼らがわかっています。大事なことは投票で決めているし、35都道府県それぞれの支部代表は「ドットジェイピー統一地方選挙」と呼ばれる選挙で決めています。

「議員事務所でインターンをすれば投票に行くようになる」という仮説のもと、エビデンスデータを集めながら、若年投票率の向上のためにインターン事業運営に取り組んでいる学生スタッフたちの貢献について、まずは活動を証明するNFTを受け取ってもらって「誇り」としてもらうことや、すっかりリモートワークが常態化していることを活かして、担当領域ごとに入れるミーティングルームを用意するなど、既存の運営体制内での導入から始めます。試運転のようなものです。

そしていずれはトークンを発行し、外部に開いていきたいとおもいます。若年投票率の向上のためにやれることは議員事務所でのインターン参加以外にもあるはずです。ドットジェイピーの外にいる人にもトークンを持ってもらってアイデアを出してもらい、協力してもらって、みんなで課題解決に取り組む姿を目指します。

ドットジェイピーのDAO化推進ステップ(イメージ)

通常、NPOは「①現場での事業活動(第1の顧客)」と「②ファンドレイジング(支援してくれる顧客)」というふたつの顧客に向き合い、仕事を行っています。ソーシャルビジネスのDAO化が進めば、いずれファンドレイジングやマーケティングなどについてはDAOが行い、蓄積されたノウハウや専門性が求められる直接の支援活動については、DAOから専門NPOへ委託が行われるというかたちになるかもしれません。NPOは支援活動に集中することができるようになります。

ただし、自分で作ったDAOから委託先として必ずしも選んでもらえるかどうかは別なので、NPOは引き続き成果報告や情報開示も求められるでしょう。緊張感が消えるわけではありません。

DAO化した後のNPOの役割(イメージ)

もちろんうまくいくかはやってみないとわかりません。これまで献身的・率先的にやっていたしんどい業務について「NFTをもらえないならやりたくない」という人が出てくるかもしれませんし、外部に開くと色んな思惑や思想の人が入ってくるわけですから、運営が難しくなるのは間違いありません。すべては試行錯誤。

新しい分野であるweb3ではまだ正解やセオリーが定まっておらず、いわば世界総ブレスト状態といえます。社会の課題を解決するために、このテクノロジーを活用して具体的にどんなアクションや可能性が広げられるか考えていきたいですし、実際にやってみてどうだったかもシェアしたいと思います。

今回の取り組みについてはガイアックスさんに大変お世話になりました。まだ始まってもいませんが、感謝申し上げます。改めてこれからよろしくおねがいします。

本件についてご関心ある方や、コラボできそうな団体の方からのご連絡お待ちしています。ご取材も可能な限りお受けします。

ご連絡お待ちしています

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?