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大荷物バリトンサックスの移動

 ふだん、バリトンサックスという割とびっくりするくらい大きな楽器を使っている。たまに、それ以外に持ち替え楽器としてバスクラリネットやらフルートやらの別の楽器、さらにそれを立てておくスタンドなども持ち運ぶこともあるので、どうしても運搬がそこそこの荷物になってしまう。

銀のケースがバリトンサックス、黒の手前のケースがバスクラリネットとフルート、SLIKのケースがそれらのスタンド

 ところが自分があまり運転が好きでないこともあって車を持っていないので、これらの旅の一座みたいな荷物を全部担いで電車で運ぶことになる。
 ただ、これらを担いで狭くて混んでいる路線を使うと大変に迷惑なので、そのルートなんかもかなり気を使って選んでいる。

 まず、できれば座りたい。
 座りたいというのは、別に楽したいだけではなく、その方が車内のスペースを安定的に確保できて、楽器も安定して置くことができるからである。
 そのために、一番理想なのは「始発の駅からゆっくり乗る」ことである。なにしろ、来た電車に空いている席があったとしたって、この荷物で走って席をとりに行くことなどできないのだ。
 始発ならば電車も止まっているので、バリトンサックスでない持ち替え楽器や他の荷物を網棚に乗せたりなどの作業も人目を気にせずできる。そしてシートの一番はじの席に座って、足の間でバリトンサックスを固定する。これが一番おさまりがよくスペースを有効活用できている座り方である。

 うちの場合は、幸運なことにこの条件を満たす駅として東横線(みなとみらい線)の「元町・中華街駅」がある。
 ただ、大前提として、歩いたら30分くらいかかってしまうので、この時点でここに行くのはもうタクシーが確定である。
 でもそんなの関係ない。前回の記事で書いたように、タクシーアプリをポチりさえすればものの5分でタクシーが来て、ものの10分で駅につき、しかも全然体力は消耗しないのだ。タクシー代なんて安いものである。

 さて、ようやく電車に乗り込み、ゆっくりと席を確保する。
 その際、次の目的は、目的地まで極力乗換をせず、今の電車で行けるところまで行くということである。なので、この元町・中華街からだと、東横線から副都心線に乗り入れて極力目的地の近くに行きたい。
 また、一番避けたいのが、人がアホほど多くて階段が多く狭い通路が多い駅での乗り換えだ。つまり、新宿とか渋谷のJRの駅などである。
 いわゆる乗換案内的な表示だとこれらの駅を使うことが最も早いルートとして出てくるが、これはなるべく避けたいので、そういうので出てこない特殊なルートを探すことになる。

 自分がこれまでに使ってきた代表的なルートは以下の通りである。
 新宿)通常ルート:東横横浜ーJR渋谷ーJR新宿ー西口のスタジオ
    改良ルート:東横横浜ー副都心線東新宿ー大江戸線新宿西口
 代々木)通常ルート:東横横浜ーJR渋谷ーJR代々木
    改良ルート:東横横浜ー副都心線北参道
 梅ヶ丘)通常ルート:東横横浜ーJR渋谷ーJR新宿ー小田急梅ヶ丘
    改良ルート:東横横浜ー副都心線明治神宮前ー千代田線代々木上原ー小田急梅ヶ丘
 大塚)通常ルート:東横横浜ーJR渋谷ーJR大塚
    改良ルート:東横横浜ー副都心線池袋ー丸の内線新大塚
 新大久保)通常ルート:東横横浜ーJR渋谷ーJR新大久保
    改良ルート:東横横浜ー副都心線東新宿ータクシー

 つまり、合計時間がどれほどかかろうが、なるべく雑踏を避け、週末は人通りのそれほど多くないマイナーな地下鉄の通路を通っていきたい。30分くらいなら早く出ても楽な移動手段を取りたい。
 自分のバリトンサックスのケースはキャスターがついていて、転がしていくことができるようになっている。地下鉄の駅というのは大体においてつるつるしたタイルの床の通路が多いこともあり、キャスター運搬に適しているのも魅力の一つである。
(キャスターの話をすると、そんなキャスターで転がして、楽器の調整に悪い影響はないのかと聞かれることがある。そんなの愚問である。悪いに決まっている。そんなことよりも重さ回避の方が優先に決まっているじゃないか。実際運んでみろと言いたい)

ケースの下にキャスター
実は酷使しすぎて過去何度も壊れてしまい修繕している

 副都心線や大江戸線は最近できた路線なので、エレベーターが完備されているのも魅力である。
(だいたい、荷物もないくせにエレベーターに乗りたがる種族のやつが一定数いるせいで、一回くらい待つことになる)

 副都心線から意外と行き先で難敵なのが中央線方面で、これはなかなか副都心線からの接続が良くなく、普通に考えると渋谷か新宿三丁目から新宿に移動して中央線、というどこも地獄のように人混みが激しく狭い階段の多い駅を経由することになる。
 この前阿佐ヶ谷の本番の時に荷物が多くなってしまい、どうしたもんかといろいろ路線を見ていると、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩圏内に丸の内線の「南阿佐ヶ谷」という駅を発見した。通常のルート検索ではまず出てこないルートである、
 ここならば、新宿三丁目から丸の内線に一回乗り換えるだけで着くことができる。これはいいのではないか。
 実際使ってみると、思ったよりもスムーズに乗り換えができ、さしたる障害もなく到着することができた。発見である。謎の達成感。大航海航路探索、みたいな文字が脳裏にちらつく。

 こんな感じで日々大荷物の移動をやりくりしているのだが、こんなの普段バンドを一緒にやっている人にもまったくわかられていないエピソードなので、ひっそりとこういうところで主張してみたりする。

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