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子供の演奏って泣ける

 一番泣けるシチュエーションっていうと、自分の子供が演奏しているのを見ている時じゃないだろうか。間違いない。

 まぁ正確には別に演奏に限らないかもしれないけれど、子供が部活で何か頑張っているのをみた時とか、何かの劇での晴れ舞台を見た時なんかは、無条件で泣けてくるものだと思う。それに、自分の子供と一緒に、友達の子たちが頑張っているのがまた泣ける。
 実際、いくら超絶技巧だろうと有名人であっても、純粋に音楽を聴くだけで泣くことなんて確率的には結構稀な気がするのだが、ここに自分が共感できるストーリーが乗ってくるだけで一気に涙腺が緩んできてしまう。

 うちの場合、息子がずっと吹奏楽部だったし、大学ではオーケストラもジャズのビッグバンドもやっていたので、比較的そういうのを目にする機会は多かった。
 今日も、大学のジャズビッグバンドの定期演奏会があり、息子は今回で引退ということもあり、聴きに行ってきた。いい演奏会だった。泣いた。

 代表の子がこんな挨拶をしていた。
「代表になって、みんなには言っていませんでしたが、2つの目標を立てました。1つは、うまくなること。みんな練習大変だったと思いますが、一年前では考えられないくらい難しい曲ができるようになりました。もう1つは、仲良く演奏すること。自慢ですが、一年前から誰一人欠けることなく、この日を迎えることができました。毎日毎日楽しくて、引退したくないと思っています」
 号泣である。
 月並みだが、息子と同世代のことがこんなにも堂々と、しっかりとしてがんばっている、そんな姿を見るだけで自然と泣けてくる。

 最後の曲、メンバーの子達も演奏しながらみんな涙を流していた。
 そんなの、こっちだってもらい泣くに決まっている。
 そんな、演奏しながらみんなで同じ涙を流せるなんて、本当に幸せなことである。まず、そんなこと人生にそう何度もあることではない。ていうより、自分はこれだけ演奏機会があるにも関わらず、これまでにそんなこと一回もないかもしれない。
 最後の曲はとても音に厚みがあり、気の乗ったよい演奏だった。迫力もあったし、言葉にするのは難しいけれど、思いや気持ちがダイレクトに伝わる演奏で、それもやっぱり聞いている方には刺さる。それも、演奏する方だってそうかもしれないが、聴く方だってそうそうあることじゃないのだ。感動する。

 それに、単に気持ちが入っているということだけではなく、物理的にその瞬間というのはいい演奏なんだと思う。
 演奏する団体において「これで引退」のステージはやっぱりその子たちにとって特別なことだし、絶対にその人の最高の演奏であるはずだ。技術的にも、気持ち的にも一つのピークであることには間違いない。これで演奏をもう辞めてしまう人もいるだろうし、これからもっと活躍する人もいると思う。でも、きっとその人にとって今この瞬間は、間違いなく最高の時間なのだ。

 そんな、技術的にも気持ち的にも最高の時間を迎えていることと、そして彼らがそれに至るまでの過程がうっすらではあるけれど、息子を通じて共感してしまうからこそ、全て重なってここまで心震えるんじゃないかと思う。いやこちらも幸せなことである。

 演奏が終わって、熱気の中でみんな涙をふきながら笑顔で称え合ったり、記念写真を撮ったりしている光景も尊い。本当に、この場に居させてもらえるのがありがたいなと思う。
 子供がどんどん大きくなると、こういう場にいる機会も少なくなるのかもしれないなとも思ったりするが、そうか、そうすると孫ができるのか。よくできたものである。孫はなんなら子供よりもかわいがるという話をよく聞いたりするが、なるほどそういうものかとだんだん理解できてきたような気もしてきている。


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