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フランス南西部の街(6)Portiragnes(ポルティラーニュ)

直近のフランス旅行では、基本的にここポルティラーニュに滞在していました。
ここを起点にアルルやレ・ボー・ド・プロヴァンス、アグドやセートに行ったわけですが、まあ日本人でこの町のことを知っていた方がもしいたら教えてほしい、というくらいの小さな町です。

場所は、ベジエとアグドの間ですね。ベジエからですと、ヴィルヌーブ・レ・ベジエ(Villeneuve-les-Beziers)の次の集落がポルティラーニュです(なんだか大久保-新大久保みたいな流れですが)。アグドからなら、ヴィアス(Vias)の次ですね。
小さい町なので、電車の駅などはありません。バスがあるんだかないんだか、ここを訪れるなら、ベジエかアグドの駅からなんらかの方法でたどり着くって感じですね。まあ最悪、歩いても数時間かければたぶん着きます。ひたすらミディ運河沿いを歩いていけばOKです。

小さいながらも、歴史は古く、街の中心部には16-7世紀頃のものと思われる教会が鎮座しており、シンボルタワー的存在となっております。

アグドと同じように、やや黒っぽい石でできていますね。

この町は、教会を中心とした旧市街的な小さなエリアがベースとして成り立っており、その周りに、昨今の南仏ブームによる建築ラッシュ(というのが、フランスにもあります)で、新築の家がどんどん造成して造られている、というつくりになっております。まあ、最近の典型的な南仏の小村です。

町の中にある看板の地図です。
色がついているところが旧市街ですね。ちっちゃいです。数分で一回りできるくらいです。
こちらは役場の建物です
街中のようす

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ミディ運河がすぐそばを流れており、運河沿いはのどかな散歩道になっています。
それ以外は特に名所も何にもなく、まわり一面ほぼブドウ畑、オリーブ畑のみ。なんともゆっくりした雰囲気です。
そのせいか、なんとなく、住んでいるひとびとも穏やかな感じしますね。
数キロ離れたところには地中海の海岸があり、こちらはPortiragnes-Plage(ポルティラーニュ・プラージュ=ポルティラーニュ海岸)という別の町になっております。

地中海沿い、世界遺産のミディ運河沿い、周囲を自然に囲まれて、町に歴史もあり、手近にベジエやモンペリエといった大都市もありということで、まあ暮らすには過不足のない好条件が揃ったいいところです。

ポルティラーニュのミディ運河

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こんなちいさな町でもときおりツーリストの姿も見かけます。
だいたいヨーロッパ人で自転車の人が多い印象です。もしくは、ミディ運河クルーズの途中でちょっと船泊めてごはん食べに来た、て感じでしょうか。
どちらにしても、ちょっと一休み的に寄った、という感じで、こちらに長期滞在している風ではありません。まあ、どう考えても、アグドとベジエといった見所満載の場所にはさまれたこの町に滞在する必然性がありませんよね。だいたい、この町、ホテルとかあるのかな・・・。

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なんでまたこんなへんぴなところに滞在していたかというと、亡くなった母の旦那さんであるアンドレの家がここにあるからです。こんな家です。

家の周りです。

この家はできてまだ数年、新築の家です。さっき書いた新築ラッシュのやつですね。まわりはこんな家ばっかりです。
こっちの家は、新築だろうと何だろうとこんな感じの家ばっかりですね。
周囲に建築中の家がいっぱいあるのでよく建て途中の状態を見かけるのですが、ブロックみたいのを積み上げて作って、最後にこんな色に塗ってできあがり、という感じのようです。
地震がないというのはほんとにいいものです。

壁の色は自由ですが、基本プロヴァンスカラーのどれかですね。ピンクとか、黄色とか、オレンジとか・・・。屋根はもうほぼこの仕様だけです。最近は日本でもこの南仏瓦はやってますよね。

家の庭にあるオリーブの木

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ちょっと悲しい話なんですが、旦那さんのアンドレがこの家に引っ越してきたのは、母が亡くなった一週間後なんです。
そう、母はこの家に引っ越してくるのを本当に楽しみにしていたのに、間に合わなかったんですね。
表札をよく見ていただくと「NOBUKO」と入っています。これが母の名前です。

つまり、フランスに行くのは、「アンドレの家に遊びに行く」というのがメインの用事だったわけです。
母が亡くなってから、なかなか行くことができなかったんですよね。ぼくも、その前に来たときは母の葬儀が終わった段階で日本に帰ってきてしまったので、この家、そしてポルティラーニュに滞在するのは初めてでした。
とってもいいところで、ゆっくりできました。

テラスでゆっくり食事

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この家から、歩いて10分もいくと、もうこんな風景です。

なぜか馬やロバもいます

どうでしょうか。ほんとに、ただ畑と野原しかないんです。
もう、典型的な南フランスの田舎町の風景ですね。
我々が目的地にするどこかとどこかの途中にあるであろう、ただ通り過ぎるだけの小さな町、そんな町の周りは、だいたいどこもこんな感じです。

ぼくは、こういったなにもないブドウ畑の中の一本道を散歩したり走ったりしている時間が大好きで、必ず滞在中頻繁にこのための時間をとります。
これはほんとうに贅沢なことだなぁ、といつも思います。
車で通る、見かけるのではなく、実際に自分の足で、土を踏みしめて歩く。時間の制限がある中で、観光地を歩くのとは全く違った、実際に地に足が着いている、あの感覚。一歩一歩確かめるように、ざくざくと歩いていく。そして静寂。つつみこむようなやさしさ。
これが、ぼくにとっての南フランスです。

たまたま、家族がいたからこそできることかもしれません。幸運なことだと思います。
滞在中、どこかに行く日とは別に、「なんにもしない日」みたいのを2-3日おきになんとなくつくっているのですが、これだってふつうの家に滞在しているから気楽にできるわけです。
その日はみんなで料理したり、散歩したり、本を読んだり、昼寝したりします。
これがいいんですよね。

先ほど「ここに滞在してゆっくりしました」というようなコメントを書きましたが、これはなんとなく精神的に気持ちがおちついてゆったりしたということだけではなく、肉体的物理的ほんとうの意味でけっこうゆっくりしてるんですね。日本での週末や休日よりはるかに休養できてる気がします。

こういう時間を持つと、なんというか、いろいろなことをリセットして考えることができる気がします。ほんとうに重要なこととどうでもいいことがくっきり浮きあがってくるというか、そんな感じです。
人生の中で、定期的にこういった時間をとることは必要なんじゃないかと思ったりします。
だからフランスはヴァカンスが長いんでしょうか・・。

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車で数分の海、ポルティラーニュ・プラージュは、ただ海岸があるだけでなく、別荘だか家だかがいっぱいあるちょっとしたリゾートタウンになっております。豪華な家が多い印象です。
結構みんな普通に海水浴もしてます。
マルシェやお店もいっぱいあって、賑わっています。

「馬禁止」の標識。確かに、この辺たまに馬乗ってる人いますね。
近所の八百屋さん
八百屋さんの店の中です
マルシェもやっています。近いのでしょっちゅうきました。
ロティ買って帰ってお昼に食べる、とかよくやりました
マルシェって、食料品だけじゃなくてこういうチープな服なんかもよく見ますよね。
ポルティラーニュ・プラージュの街の広場。売店に浮き輪売ってたりして、またなんか雰囲気もいかにも海岸沿いって感じしますね。

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こんな小さな町ですが、ちゃんとワインのクーペラティブ(協同組合)があって、土地のワインを作って販売しています。もちろん、誰でも買うことができますよ。かわいいおみやげ用のボトルがいっぱいありました。
なお、うちはボトルでなくハコ買いです。ぼくはアルコール飲みませんが、奥さんが大変飲みますので、見た目よりも実をとりました。

サルバドール・ダリ通りの標識

※この文章は2009年に書かれたものをリライトしたもので、現在では状況が違っている場合があります。ご了承ください。でも多分たいして変わっていないと思います。

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