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男着物なんて誰でもすぐできて簡単だという話

男性にしては珍しいと思うが、和装が好きで、普段着でよく着ている。
と言っても、お茶やお花が趣味だとかそういう仕事をしているわけでは全くなく、ただ単純にかっこいいから好きで着ている。
着物を着ようと思ったきっかけは、2019年の夏にバンドで落語家の桂夏丸さん(歌と楽器が堪能なことで高座では有名)とステージをご一緒した時、夏丸さんは普段から着物をお召しになるタイプの噺家さんで、その様子がとてもカッコよく、これは真似しようと思ったからである。

ただ、みんなそうだと思うが、着物といっても何からどうしていいのかさっぱりわからないので、やはり友人で音曲師(高座で歌や三味線を演奏する人)の桂小すみについてきてもらって、浅草の古着屋で最初の着物セットを買った。
それからは自分でちょいちょい買いに行ったり、ネットで買ったりしている。

自分は四六時中着ているわけでは別になくて、例えば、ちょっと浅めの知り合いと会ったり、仕事をしたりする時には着ることはない。
単純に、よっぽど気心が知れているならともかく、それほどでもない人と会う時に、パーソナルデータより先に「着物の人」が先行してしまうと、つまり単純に「ちょっと変わった人」とか「完全におかしな人」になってしまうからである。
別に着物を着ているからおかしな人ではないのだが、今となっては圧倒的少数派なのだから仕方がない。洋装だって、1800年代みたいな蝶ネクタイにハットで過ごしていたら、やはり少し様子がおかしい人になってしまうだろう。
逆に、買い物なんかだったらむしろ着物を着ていく。多少様子がおかしかろうが知り合いに会うわけでもないし、お店の人なんかは、こんな着物みたいなわかりやすい話のきっかけがあったら、絶対に褒めてくれるに決まっている。こちらは触れてもらった上にさらにまず間違いなく良く言ってくれるのだから、これはもうwin-winというものである。

着てみて分かったのが、和装は思っていたよりもだいぶハードルが低いと言うことである。以下に列挙してみたいと思う。

1.着るのが簡単

これは一番誤解されているのではないだろうか。
女性の着物は着たことも着せたこともないから分からないが、男着物は正直言って着るのはめちゃくちゃ簡単である。
教室で習ったりなどしなくても、YouTubeで動画を一回見れば大体誰でも着ることができると思う。着るのに要する時間だって洋服と大差ない。
よく、「着付けとかどうしてるんですか?」と聞かれることがあるが、着付けも何も、ただ帯で巻くだけ以上のことはなく、浴衣でない着物でも温泉浴衣を2枚着るみたいなイメージでそんなにずれていないと思う。
帯の結び方などもあるが、これだって別に緩まなければいいのだし、ちゃんとした結び方も大して難しいものではないので、2、3回やれば誰でも何も見ずにできるようになると思う。
男だから襟がはだけてきたって別に構わないと思うし(るろうに剣心とか、めっちゃはだけてるのがかっこいいし)、多少自己流でもなんとでも格好つくのが男着物だと思っている。

2.安い

これもよく言われるのが、「着物なんてあんな高いもの、どうやって調達しているのか」である。
これこそ誤解の最たるもので、ちゃんとしたものをあつらえたらそれはもちろん高いが、それは洋服だって同じことで、安いものはいくらでも見つけることができる。
実際安いと言ってもいくらくらいなのかと言う話だが、例えばこの写真の着物。

こちらは、着物と、上に着る羽織という上着と、中に切る長襦袢が全部セットで新品で3,000円だった。
えっ??と思いますよね。
ケタ一つ違うのでは?と。
3,000円で帯以外全部揃えられるって、ユニクロどころの騒ぎじゃない、西松屋じゃないんだから、いくらなんでも激安すぎじゃないかと思う。
だが、これは結構実際によくある価格帯である。
つまり、男着物は着る人がいなさすぎて、放出品的な感じで結構ネットなんかで安く出回ってしまっているのだ。探せば割とすぐこの手のものを、ヤフオクの業者なんかで簡単に見つけることができる。
一回、本当は5万円で売っていた帯が、あまりにも売れないので流れ流れて5,000円で購入したこともある。

古着屋があつい

ちなみに先ほどの例で「新品で」と言ったのには含みがあって、男着物は古着屋で探せば、まぁだいたい二束三文で手に入る。1000円台もザラである。
と言っても条件があって、①古着屋における男着物の割合は全体の5%もない②昔の人は背が小さい、という二つのハードルをクリアしなければならない。
①について、着物産業がそもそもマダム向けなので、男着物は何しろ着る人もいないし点数が少ない。だから男着物コーナーはどの店も極端に品揃えが少ないのだ。
②について、自分は168cmで、ほぼ昔の平均的な日本人の身長なので、恵まれていることにたいていジャストサイズで中古品も手に入れることができる。逆に身長が175cm以上の方だと、中古はサイズがなくて苦労するかも知れない。
ちなみに、自分は身長168cmに対して、145cm前後の長さの着物が一番ちょうどいいが、これはまぁよく出てくるサイズで、150cm以上だとあまり見なくなる。
ちなみに、有名な古着屋さんは「たんす屋」さんなど。行くと、男のお客さん珍しいので、だいたいすごく優しくしてくれます。

3.寒くない

これも意外だった。何しろ足元は足袋に草履だし、冬なんか激寒だろうと思っていたのだが、少なくとも足元に関しては意外なほど寒くない。雪でも降って濡れたりしたら寒いだろうが、晴れていれば全然問題ない。
あと、帯を締めるのがいいんだと思う。単純に着物と羽織だけで、ほとんど寒くない。
襟元、袖口は冷えるかも知れないので、真冬ならマフラー、腕にウォーマー的なものをつければそれでOKである。
実は、着物用のコートというものも持っているのだが(とんびコートと呼ばれるやつです)、正直着物の上にコートを羽織る必要がある時がないので、あまり出番はなく、着物じゃない時に着たりしている。
反面、夏は正直浴衣でも暑い。これはどうにもならず、短パンTシャツと比べたらやっぱりそっちの方が圧倒的に布面積も少ないし涼しい。ちなみに、夏浴衣で出かけるときは、保冷剤をふところに入れると涼しいです。

4.楽

楽、っていうと言い過ぎかも知れないが、思っていたより着物は着ていて楽だった。楽度合いで言うと、ジャージ>着物>スーツ&ネクタイ、という感じで、自分の体感ではスーツ着ているより着物の方が楽かなくらいである。少なくとも、女性がよく言う「帯の締めすぎで気分が悪くなる」とかそういうことを感じたことは一度もない。例えばで言うと、着物着たままソファで寝れるくらいのリラックス感である。腕まわり足まわりに締め付けがないせいだろうか。


以上、男着物の特徴は「簡単」「安い」「寒くない」「楽」の4つ。
どれもこれも、一般的に着物に対して持たれているイメージとは正反対ではないだろうか。特にこれらは男着物ならではの特徴だって多いのだ。なぜにこれほどみんな着ようとしないのか、むしろそっちの方が理解できないくらいである。
大体、3000円なら仮に失敗してもまぁそれほどのダメージでもないし、気軽にみんな試してみればいいと思う。

次回は自分の着物の着回しの仕方について書きたいと思います。

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