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詞たち

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昔から書いている詞、歌詞を供養する場所です。
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天気雨(Deafening Blue)

Writer: Koki 嘘のような群青 寝ぼけた歩道橋 雨上りの匂い きみは知っている 虹なんて 見たくはなかった今日 きみはまるで人魚の様 透き通る 街並みが融ける前に 明日のぶんのさよならをしよう 嘘のような群青 気だるげなひかり 今のぼくにはもう 眩しすぎるかな 虹なんて 見たくはなかった今日 きみにはもう触れないよ 七色の鰭を陽に翳した 生きたくて仕方ないから 泡の中の世界から もし時間が戻せるのなら 嘘のような澄んだ空に 木

夜間飛行

飛行機から街を目で追った 東京が雲の下を滑って居る コリオリに乗って摩天楼を掠めた  月色の宙の下 此処にはないけど 何処かにあるものを これから探しに行こう These wings are made to fly Beneath the moonlit sky Just fly me to a place where I’ve never been before Drifting on the clouds While chasing city ligh

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十九の朝 震える時間 鯨が唄う 湖の底 十時前 森の梟 透明な 深い平原 ねえ 莫迦みたいに温い 曖昧に持って産まれたから 気取るそばから剥がれてゆくんだ ひかりがきょうは憎い 白夜のような貌をするから 呼吸のないくらい 静謐な日々だ それでも生き急ぐ 平凡な日々だ 三時半 黄昏を待つ 燃えてゆくフィヨルドの小屋 ねえ 死んだような昼 曖昧に持って産まれたから 気取るそばから剥がれてゆくんだ ひかりがきょうは憎い 白夜のような貌をするから

ぜんぶ

夏ってなんだろう 恋ってなんだろう 覚えているの いつ覚えたの ぜんぶぜんぶ きみが教えてくれたのに どうして ぜんぶ忘れてしまったんだろう 息の甘さも チョコの苦さも 夜の長さも 夏の短さも ぜんぶぜんぶ きみが教えてくれたのに どうして ひとつも歌えやしないんだろう

不死鳥

羽根の赤がくすむ頃に 僕はもう休めるかい 僕はひとり浮き上って やわらかな焔になる 生命が灼けていく匂いがする もう時間がないから おまえの人生をすべて食わせろ この肉に変わるまで 急いで、急いで 燃やして、燃やして 熱くて揺らいでくるよ 羽根の赤が消えてきたら 十分に休めたかい 僕はひとり浮き上って 虹色の焔になる 生命が溶けていく匂いがする もう時間がないから おまえの人生をすべて食わせろ この肉に変わるまで 急いで、急いで 燃やし

旧天文台

壊された遺跡 街を燃やす 知らずにぼくは鈍くなった あのころのきみは もうここにはいない きみの目がもし流星だったら ぼくの上に堕ちればいいのにってさ もう一度歌っていい 嗚呼 いつか消えてしまうなら いま失くしたって同じさ それならもう知らないな 盗んだ霧 崩れたサイロ  確かに花には色があった ぼくはきみに 何もかえせなかった きみの目がもし流星だったら ぼくの上に堕ちればいいのにってさ もう一度踊ってほしい 嗚呼 きみはきっと居ないかな

彼女

少し寒くなったね 今年は違うね もうきみは居ないね 言えなくてごめんね 少しずつ色の落ちた振りして 気づいたら重ねている 雪は降らない12月の夜 アスファルトと彼女 暫くぶりだね 変わっていないね 隣には居ないね 言えなくてごめんね もしいつかまた会える日が来たら 我儘を聞いてよ 雪は降らない12月の或る 夜が似合う彼女 さよならを言えるほどぼくは 優しくも強くもなくって また掛けるべきじゃなかったね 後悔しても遅いんだね もしきみが寂

Ventana

カレンダーを捲る 陽の当たらない壁際で 太陽は走る 埃を被った机に揺れる 雲の輪郭をなぞる 光を束ねて急いで 悪戯な声は 秋が来ることも知らずに笑う 懐かしいままでいて 怖いのをすこし隠して 季節外れの歌を 流れるまま愛しながら ぼくときみが住んでた街の話をしよう カレンダーを捲る 約束の日は近づいて 僕らは明日も 終わりゆく春を売りながら歩く 歩いて行く 選ぶことを忘れて 失ったものも有った 季節外れの歌に 焦がれるまま溺れながら

空想

茹る暑さに少し顔をしかめた そうだきみは夏が好きじゃなかった 数年ぶりに海でも観ようか 氷を二かけポケットに入れて 次の自販機でちょっと止ろうか サドルの後ろがふっと軽いんだ 少しくらい温くなってもいいかな きみがぼくで満たされるなら 高架下をなけなしの日除にして 雲の濃淡をなぞって走っていこうよ 数年ぶりに海でも観ようか 未練も古い自転車にのせて 次の交差点でちょっと止ろうか たまには素直なのも悪くないな 少しくらい塩っぱくてもいいかな きみが

Small Windmills

Petals fall into a river One after another There was a line that left unsaid It wasn't like she betrayed him “And so we fell apart We fell apart We fell apart “ She was standing still inside his dream Among those small windmills Sh

螢火

古くなった概念は 彼方に置いてきた 言葉に溺れそう ピントがぼやける このまま 朝 揺らぎ出した青春で 一息で終わる夜を駆ける いまは唯々 追いつけない螢火を辿る 剃刀と赤い山椒魚 螢の丘 きのうはまだ 切ないほどに火照る掌 憶えているよ 見上げてご覧 花火の上がる空のほうが町だよ 研ぎ澄ました感覚を 一本に束ねる 世界に呑まれそう 歯車が噛まない このまま 嗚呼 掻き乱した青春の 一息で終わる日々に唄う 僕は唯々 追いつけない螢火を辿る 白熊と