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思わず引き込まれた話のまとめ

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ついつい語り口に引き込まれて最後まで読んで感服した話のまとめ。
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2022年8月の記事一覧

生きている

お盆になると、提灯をもってご先祖さまを迎えに行く。 田んぼ道、子ども用のちいさな提灯をぶらぶらさせて、おしゃべりしながらお墓に行く。 そうして、子どもみんなおんぶのかっこうをして、ご先祖さまたちをわいわい連れて帰る。 その風習がとても好きだった。 見えないだれかをおんぶする。ことばにならないけれど、たしかにそこに、だれかがいたのだと思う。それを感じていた。 死者は死んでも生きている。 ◯ 戦争に行って、帰ってこなかった親族がいる。 奥座敷の長押にかけられた軍服姿の遺

もう海に沈めなくてもいいように

「コンクリートに括りつけて、海に沈めてしまいましょう」 同僚が言い放ったその物騒な言葉を、お守りのように胸に抱いていた時期がある。 その同僚と出会った職場は、博物館だった。 私は、大学を卒業してから、正職員の学芸員になったが、1年半ほど働いたのちに退職した。そのときの私は抑鬱状態だった。 半年ほど何もしない日々を送った末、私は、博物館の非常勤職員と大学の非常勤研究員として働くことになった。 博物館では、学芸員としてではなく、来客対応をする解説員として採用された。チケッ

絵画とファッション 「スコットランド国立美術館展」で描かれた衣装について。

土曜日の夜にスコットランドへ行ってきました! といっても実際に行って来たわけではなく、「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」展を観に行ったのです。(2022年9月25日まで神戸市立博物館にて開催中) そこで今回は、展示された絵画たちを「衣装」という切り口で鑑賞してみました! 北国を彩る巨匠たちサタデーナイト・フォトアワーですって!?会場となった神戸市立博物館では、「サタデーナイト・フォトアワー」というキャンペーンをやっていて、なんと、土曜日の1