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思わず引き込まれた話のまとめ

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ついつい語り口に引き込まれて最後まで読んで感服した話のまとめ。
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2020年11月の記事一覧

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『氷点』で私の心は燃えた。

【読書メモ】首都圏に生きるアイヌ民族―「対話」の地平から

『首都圏に生きるアイヌ民族―「対話」の地平から』関口由彦著、草風館、2007年。 本書は、文化人類学者の関口由彦さんによる、首都圏で暮らすアイヌ民族の人びとのライフストーリーの語りを集めた本です。著者は、アイヌ料理店のレラ・チセでアルバイトをしながら調査を行い、本書をまとめたそうです。 僕は、本書の中で言及される「見る者のまなざし」に着目しました。着目するきっかけとなったのは、次の一文です。 多様なズレを伴った意味づけを生じさせる歩く者の柔軟な日々の営みを、見る者のまな

書くということの根っこにあるもの

編集者を長く続けている方とお話をしたことがある。 そのときあるベテラン作家さんの話になった。日本を代表する著名な作家で、本もたくさん書かれている。 「自分が書くエネルギーの源は、“怒り”なんだ」と、その方が言っていたそうだ。 その怒りこそが、書くという行為を長年続けさせてきたのだ、と。 「そういうもの、あなたにもありますか」 とその編集者さんは私に聞いた。自分がものを作りだす、書くという行為をさせる、そのおおもとにあるものは、なんなのかと。 かなしさでしょうか。そう答え