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「極悪人」

私が生まれたときに、お祝いのパーティーに招待されなかった13人目の魔女に、私は呪いをかけらえた。
「この子を一生、人と噛み合わない人生にしてやろう」

この日記はそんな呪いに抗いながらも懸命に生きる人間の記録である。

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ごくあくーにん【極悪人】
(名)非常に悪いことを平気で行う人。


我が家の子どもたちは、ユニクロのパジャマ2種類を交互に着ている。
ユニクロのパジャマはいいぞ。
可愛いし、丈夫だし、着せやすいし、安い。
夏用、春秋用、冬用、全部ユニクロ。
ユニクロのパジャマにすると決めてしまえば、他のお店を見たり、サイズに迷ったりしなくていい。
80サイズが小さくなったら90サイズを買う。
夏が終われば、長袖の中から好きなデザインを2種類買う。
ただそれだけだ。

夫は極悪人だ。
なぜなら夫は、こどもにパジャマを着せるとき、上下違う柄を着せてしまうのだ。

黄色のズボンに、青のトーマスのトップス。
この姿の息子を見たとき、私は膝から崩れ落ちた。
青のトーマス柄には、青のズボン。
黄色のズボンには黄色のミッフィ柄って、決まってるだろうがよおおおおおおおおおお・・・・・・


5歳の長男のパジャマ(110センチ)を2歳の次男(90センチ)が着ていた時は、優しく指摘できた。
あまりにもブカブカで、自分の視野の一番端っこに見えた時点で、すぐにわかった。
「それ、サイズ大きいから、着替えさせてね」
微笑む私。
「あ、ほんとだ、へへ」という夫。
110サイズのパジャマを脱がせられ、また同じ色柄の90サイズのパジャマを着せられる、困り顔の次男。(次男は生まれつき、下がり眉毛。)

その一部始終を、とても微笑ましい、愛おしいような気持ちで見守っていた。


そんな女神のような母であり妻であるのだが
上下の組み合わせが違う時にはやくざになってしまう。

自分でも、こんなことで怒るなんておかしいと思う。でも私の中のヤクザ屋さんが、右手に持ったナイフを左手にペシペシしならせながら言うのだ。

「おいおい、パパさんよお、勝手なことやってもらっちゃ困るんだよねえ。」

人間の脳に「フォルダ」のようなものがあるとする。
私は「長男」「次男」フォルダがあり、その中にさらに「パジャマ」フォルダがあり、開けると「青トーマス」というように名前がついている。何も考えなくても、光の速度でここに辿り着いている。

夫の脳のフォルダは「子どものパジャマ」で、ここに全てが乱雑につまってるんじゃないだろうか。
だから、子どものパジャマを大人が間違って着ちゃうとか、パジャマを外に着ていっちゃうとかは、流石にない。
・・・いや、あったわ。
ピラピラのタグが外に出ているキルティングのズボンを履かせたことがあったわ。でも、彼がトーマスを着ちゃったことは、今のところ、ない。

まとまってきたので、訂正しよう。
彼の脳内は「子どもの服」というフォルダなのかもしれない。
「子どもの服」のフォルダ内は全て同じだと思っているのかもしれない。

この仮説でまとめようと思ったが・・・もしかしたら。
もしかしたら、自分以外の服はすべて「だれかの服」というフォルダなんじゃないだろうか。
この仮説を振り払おうとも、もう難しい。
「そうだ、それに違いない!!!!」としか思えない。

「俺か、俺以外か。」なんだな!?????
だんだんわかってきたぞ!!
君は、「俺か、俺以外か。」なんだな!!!?????

俺か俺以外でも、別に構わないんだが
これだけは知っておいて欲しい。

上下セットのパジャマは組み合わせが狂ってしまうと、なかなか直せない。

2種類同時に洗濯した時にしか、直せない。
それまでずっと、チグハグ。
今日は青と黄色。明日は黄色と青。

許せない。絶対許さない。
許してたまるものか。

何度も言うが、こんなことで怒っている私はおかしいと思う。
たぶん、パジャマのことで怒っているわけでもなく、夫に対して怒っているわけでもなく、言ってしまえば別に「極悪人」とも思っていない。

だけどこうして心の中に潜むチンピラが、「チャンスだ!」と言わんばかりに暴れ出してしまうのは、なぜなんだろう。


これは本音を書こうと頑張るが、どうしても良く見られたいという欲が出てきてしまう人間の偽日常日記である。
(今回の自分解放率50%)


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