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オンライン投資読書会 第1回レポート(後半)

5月24日(日曜日)の朝8時から行ったオンライン投資読書会のレポートを続けます。この読書会では、原則として課題本を事前に読んでおき、参加者が交代に自分の感想や疑問点を発表していきます。

そんな中で、投資経験の長いCさんが山崎さんの「外貨預金は銀行のカモになるだけ」という視点にツッコミを入れてくれました

外貨預金は為替手数料が高いのはわかりますが、それだけでやめるっていうのはどうなんだろう。為替レートが円安になるまで根気よく待つという手もあるのでは?」と。

確かにそれも一理あります。私も山崎さんはこの点ちょっと端折りすぎているなと感じました。投資の初心者が外貨預金を避けた方がいい理由は他にもあるからです。

外貨そのものは資産ではない

それは為替差損。円に比べて金利の高い国の通貨は、預けている間に安くなる傾向にあります。つまり3か月満期の外貨預金ならば、3か月後に金利がチャラになるように為替でおおむね調整されるということ。高金利通貨の預金に預けて満期の時に円転することで、元本のリスクなしに金利分もうかるならば、誰でもやりますよね。つまり「世の中そんなに甘くない」ってこと。

円の預金が実質ゼロ金利だから、それより利率の高い外貨預金なら「確実に有利」と思ってしまいがちですが、預けた時より満期時の方が「確実に円高になる」「だから金利差分は円に直すと手に入らない」「むしろ為替の変動と、為替手数料の効果で結果として損をすることも・・・」というのが実態なのです。山崎さんの本では、話をシンプルにするためにこの「金利平価説」についての難しい説明を省いているようです。(下記に詳しい説明を、参考までに引用しておきます)

https://kotobank.jp/word/金利平価説-1525787#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29

投資初心者の方が見逃している点の一つに「為替はそれそのものがリターンを生む資産ではない」があります。為替は株や債券と違って、実態のある資産ではなく、何か「モノ」「サービス」の価値を図る尺度にすぎません。プロの世界では為替を売ったり買ったり、スワップやオプションなど複雑な手法を駆使して、異なる金利の通貨間で少しでも利益を稼ごうとする「金利裁定取引」も行われていますが、素人が為替で損を避けよう、なんとかして儲けようとすると「方向性を当てよう」とする、ギャンブルになってしまいます。投資経験の長い個人投資家の方でも、ここを理解されていない方は多く、「投資をするならなじみのある外貨」と勘違いし、結果として資産が成長しないか、時には大損をこうむることもあります。

「円安の時に外貨預金を始めてなかなか引き出せない・・・というのはあるけど、例えばドルならドルのまま使えないのかな?」という案も出ました。「ドルをドルのまま使えれば、円に換えて為替差損が出ることもないし、金利は円より高いし、いいんじゃない?」確かにそうですね。

「でも、クレジットカードを使って海外で買い物をしても、結局円で払うことになるんだよね」「そうすると円転した時の為替の損は避けられないんだよなあ・・・」外貨預金するなら、外貨のまま使う方法を模索するのがよさそうです。例えば海外に別荘を買ってそこで引退生活をするとか。(少なくとも私には無理そうです・・・)

でも、日本円だけでいいのかな?

そうは言っても、日本のこの先が不安ですよね。円で全部持っていていいのかな?ある程度ドルや、ほかの通貨に分散しておいた方がいいんじゃないですか?」とCさん。さすが、これも優れた視点です。

山崎さんはこの本の後半で「日本だけに投資するリスク」もとりあげています。「例えば日本の財政赤字が深刻になって、日銀がたくさんお札を印刷しなければならなくなったら、ひどいインフレが起こるかもしれない」と。ですが、山崎さんはそのリスクに対抗する手段として「外国株式へのインデックスファンドを通じた投資」を上げています。

山崎さんが推薦する外国株式のインデックスファンドは、日本で組成される投資信託なので、その基準価額(1万口当たりの時価)は円建てです。しかしその中身は世界の上場株式に分散投資されているので、株式に投資しつつ、ドルやポンド、ユーロなどの外貨へのエクスポージャー(リスクにさらされている度合い)がある、ということになります。そもそも、グーグルやアマゾンなどの企業は世界中でビジネスをしており、その収益は世界の様々な通貨によって得られるため、こうした企業にインデックスファンドを通じて投資をすること自体が外貨へのエクスポージャーを持つことになるのです。どうせ外貨へのエクスポージャーをとるのであれば、成長性がない外貨預金(短期の金利差は為替で帳消しになる)よりも、企業の利益成長に応じて長期で成長する株式に分散投資しましょう、というのが山崎さんの主張のキモではないかと思っています。

山崎さんの本は初心者向けにシンプルに書かれているので、その背景にある理論的なもの、難しい理屈は省略されています。省略されているけれども、決して適当ではなく、外貨預金を勧めないが、一方で外国株式のインデックスファンドは勧める、ということの裏には上記のような理屈があると理解できます。

さて、次回のオンライン読書会は7月19日(日)を予定しています。次回のコラムでは、第2回目の課題本についてとりあげます。どうぞよろしくお願いします。

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