理学療法士~キャリアを考える~


 はじめまして。理学療法士歴12年の大地です。職場では後輩・学生指導、病棟運営などマネジメント分野の仕事が増えてきました。そのような背景もあり社会人として”理学療法士の仕事”について考える機会が多くなりました。考えてみると当たり前のように思うことですが、これまではこのように考えること自体が少なかったので気づかなかったことが多々あります。
 今回の内容は『学生』『若手スタッフ』に是非読んでいただきたいと思います。できるだけ早く気付くことで皆さんの選択肢が広がれば幸いです。


はじめに


 理学療法士は国家資格をとるために決められた養成校で決められた教育をうける必要があります。その内容は専門的なことがほとんどなので、必然と関わる人も専門家が多くなります。言い換えると”高校卒業後、専門家以外と関わる時間が少なくなる”ということです。医療・介護分野で就職すると、よりこの現象が顕著になります。

 その背景もあるのか『理学療法士の世界・医療業界は狭い世界である』『医療関係者は一般知識やマナーが不足している(自分含めてですが…)』と感じる場面が多いです。この限られた世界にいる私たちは知らず知らずのうちに偏った見方をしているのではないでしょうか?

 自分らしいキャリアを築くためには理学療法士にとらわれない視点をもつことが必用になります。


キャリアとは

 最近「キャリア」という単語を良く聞きますがそもそも「キャリア」とは何でしょう?

 この単語を聞いてまずは仕事を想像する人が多いでしょう。そのイメージ通り厚生労働省では「職業生涯」や「職業経歴」などと訳されると説明しています。一方、文部科学省では自己と働くことの関連付けや価値づけの累積と説明しています。

 「キャリア」という単語は、狭義では仕事広義では生き方を捉えていると言えます。
 理学療法士としてのキャリアをどのように過ごしたいかを考えることも良いと思います。私自身、理学療法士という仕事は良い仕事だと思っています。しかし、自分のキャリアを考える上で理学療法士の仕事をどのように過ごしたいかを考えることも必要だと思います。


仕事とは

 キャリア(ここでは広義の)を考えるうえで大半の時間を過ごす仕事(ここで言う仕事は”理学療法”である必要はありません)は避けて通れないテーマになります。皆さんにとって仕事とは何でしょうか?

 私の職場では毎年4月に上司とスタッフが面接を行い1年間の目標をたて、その達成度を半年ごとに見直すという取り組みを行っています。私は年間6人程度と面接を行っていますが、仕事について多くの人と話すと「それぞれが仕事に対して持つ価値観」の違いを感じます。

 人によって仕事に対する目標の立て方は様々です。”理学療法士としての責任を果たしたい” ”理学療法士の仕事を楽しみたい” ”理学療法の知識を活用して他者に貢献したい” ”子育てや趣味のために仕事で少しでもお金を稼ぎたい” ”仕事を効率的に行い趣味や新しいことに挑戦する時間をふやしたい” などです。言われてみると当たり前のことですよね。必ずしも全員が仕事優先で人生プランをたてるわけではないですし、そうする必要もありません。また、結婚などの家族事情、転勤・転職などの職場事情など環境の変化や考え方の変化で現時点での優先順位が今後も同じとは限りません。

 自分のキャリアを考えるうえで「仕事」をどう考えるかは個々の自由だと思います。私自身、キャリアを考えるうえで仕事が最優先ではありません。それぞれが仕事をどのようにとらえるかを意識して考えることが必要です。


理学療法士

 では仕事(職業)のひとつとして理学療法士を考えてみましょう。

 理学療法士は必要で魅力的な仕事だと思います。病気になり困っている人は必ず存在しており、その困っている人を助けられる可能性をもっています。

 では現在の理学療法士が働いている職場や人口推移についてみていきましょう。職場は2018年時の調査で医療施設が6割、介護施設は2割、その他が2割となっています。人口の推移からみる”理学療法士の供給(有資格者)”が”医療・介護施設における理学療法士の需要”をすでに上回っており2040年ころには供給が需要の1.8倍になると言われています。(厚生労働省の調査)さらにリハビリに関わる診療報酬は年々減少しています。これらの背景を踏まえると、キャリアを築くために理学療法の資格を有しているだけでは不十分だと言えます。言い換えると『理学療法は必要な仕事だが数は足りている』ということです

 上記の背景を踏まえると理学療法士として活躍するためには今後、「医療・介護分野で必要とされる人材になる」「医療・介護施設以外で活躍できる人材になる」ことが必要になってきそうです。上記を達成するために理学療法士として必要なスキルに関しては今後お話します。


まとめ

 今回は広義で捉えた”キャリア”から”理学療法の仕事”を考えてみました。注意していただきたいのは「仕事の優先順位が低いから適当にやればよい」ということではないということです。優先順位が低くても「責任」や「義務」はあります。それらを踏まえ『自分のキャリアを上手く築いて』ほしいと思います。

 患者さんやスタッフをみて、考え方が多様化し答えがない社会だと強く感じます。PT学生、PTの皆さん、もう一度PTにとらわれず『自身のキャリア』について考えてみましょう。そこで理学療法士のすばらしさに気づいた方は理学療法士をより楽しみましょう。