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自治体DXには10年かかるという話

菅首相は9月25日、自治体システムの標準化を2025年度末までに行うと述べました。

また、来年の通常国会ではIT基本法の改正が予定されているそうです。

自治体システムの標準化がIT基本法によって義務付けされるのかはまだわかりませんが、国が強制力をもって推進していくことは間違いなさそうです。
特別定額給付金をめぐる混乱の原因が、なぜか「自治体のシステムが標準化されていないから」と言われて久しいですが、自治体システムの標準化はこの流れで確実に行われていくでしょう。

では自治体システムの標準化以外のデジタル化、ここでは一緒くたに「自治体DX」と呼ぶことにしますが、これはどうでしょうか。
その前に、私が入庁した26年前、昭和の香りが残る平成ひと桁の役所の環境を思い出してみます。

パソコンは課に1台

私が初めて配属された課には、パソコンは1台しかありませんでした。業務システム用の端末は別にありましたが、それはダム端末と呼ばれるパソコンとは別のものでした。
したがって、文書作成や表計算などは課に1台しかないパソコンで行いました。職員のほとんどはパソコンに慣れておらず、パソコン作業は若手職員の仕事でした。議会の答弁書は管理職が手書きし、若手職員がパソコンで清書していました。

現在は少なくとも係長以上は一人一台ですので、答弁書は課長が自らパソコンで作成することもあります。でも作成した答弁書は紙に印刷されて議員との調整に使われます。メールでやりとりすることもありますが、ほとんどは紙に印刷して対面で説明します。パソコンが一人一台になろうとも、仕事のやり方が変わらない典型的な例です。

昭和の残り香は令和でも

タイムカードは数年前になくなりました。
旅費の申請もシステム上で行います。
でも決裁は紙に印刷して回議します。文書管理システムがあるにもかかわらずです。「いま○○の決裁どこにある?」と言いながら聞いて回ることが時々起こります。
会議の前に資料を十数部印刷することもしばしばです。
このように、平成が終わり令和になっても、昭和の残り香が漂います。なぜでしょうか。

幹部は昭和生まれの昭和育ち、平成生まれは係長にすらなっていない

若かりし頃パソコンで答弁書を清書していた私はアラフィフで新米管理職。ということは、私より上の世代は役所に入ってからしばらくしてパソコンに馴染んだ方がほとんどでしょう。代わりにホストコンピューターで動く業務システムをバリバリ使いこなしていたかもしれませんが、処理の結果はことごとく紙でした。
こうした環境で仕事をしてきた層が、今まさに幹部層なのです。昭和生まれの平成育ちはようやく係長になったくらいで、平成生まれは係長にすらなっていません。
私はなにも世代にレッテル貼りをしたいわけではありません。先進的な考え方をする人はいつの時代にもいます。しかしながら組織とは人の集まりです。一部のマイノリティが組織文化を作るのではなく、文化を作るのはマジョリティなのです。

役所は30年かけてゆっくりと進化してきた

電算化、OA化、ICT化と、役所は30年かけてゆっくりと進化してきました。利益を追求する組織ではないからこそ、自ら急激に変わる必要はなかったのです。
ゆっくりとした進化を経験してきた層は、今後もゆっくりとしか進化できないでしょう。その次の世代はもう少し速く進化することができるかもしれません。そのまた次の世代はもっと速く進化することができるかもしれませんし、そうでないと許されない状況にあるかもしれません。
2025年まであと5年です。今から5年前の仕事のやり方を振り返ると、今とほとんど変わりはありません。でも10年前とは多少は変わっていると感じます。
はっきりとした根拠はありませんが、これが自治体DXには10年はかかると思う理由です。「なんだ、ただの個人の感想か」と思われるかもしれませんね。でもあなたが自治体職員なら、この根拠のない話が腹落ちするのではないでしょうか。

私はこの根拠のない話が、外れることを祈っています。

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