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PTAでのDX推進の副反応(新年度からPTA活動に関わる方々への申し送り)

令和3年度の1年間、小学2年生の娘が通う地元の公立小学校のPTAの副会長を務めさせてもらった。個人的にも多くの気づき・発見・学びがあって、とても楽しく充実した時間だった。役員としての任期を終えるにあたり、ちょっと思うことがあったので、少しここに書いてみたい。

PTA活動でも爆速で推進されるDX

世間ではDXの推進が叫ばれているが、PTA活動もその例外ではない。特にコロナ禍において、全国的にPTA活動のDXが加速しているように思う。たとえば、うちの小学校では、この1-2年のうちにこんな変化が起きた。

  • これまで集会室で行われていた月2~3回程度のPTAの会合はすべてZoomでの開催に(保護者のみの会合は平日の夜21:30からに設定)

  • これまで訪問または電話が原則だった学校側との連絡も、9割程度がメールベースに移行

  • PTA役員や委員での情報管理にはDropbox・Slack・LINEなどを駆使し、過去のアーカイブも含めてすべての情報のデジタル化

  • これまですべて紙ベースだった家庭への情報共有は、すべてデジタルで完結できる仕組みを構築

  • コロナ禍でリアル開催ができなかったラジオ体操をZoom開催で1ヶ月間やり通すなど、イベントや懇親の場にもオンラインツールを積極活用

  • 今年度からはデジタル専任の副会長のポストが新設されるなど、各種のDXはさらに推進される方針

Zoomで敢行したオンラインラジオ体操の様子

そこらの民間企業に引けを取らないくらいのスピードで、事業と組織のDXが進んでいるのではないだろうか。では、その結果どんな効果があったのか?

劇的に効率的になったPTA活動

まず、PTA活動は信じられないほど便利になった。

デジタルの活用で、コミュニケーションにかかる手間と無駄が大きく減った。平日の日中に学校に行かなくてもPTA活動が実施できるようになったのは革新的なことだ。

これまで手間のかかっていた大量のプリントを印刷するコストもなくなった。環境にも優しいし、家庭で子どもがプリントをなくして大騒ぎとかがなくなるのも大きい。

さらに予想外の効果も見られた。日中は仕事をしている保護者もPTA活動に参画しやすくなり、伝統的に女性がほとんどのポジションを締めてきた副会長は、昨年度は僕を含めて5人中3人が男性になった。これによりPTA役員会のダイバーシティが以前よりも高まったと言える。

コロナ禍の感染対策のために断行せざるをえなかったDXで、PTA活動はより便利に、且つ様々な立場の人が参画しやすいものになったわけだ。

いやはや、DXって本当に最高!躊躇せず、とにかく推進していこう!!

…と、そう叫びたい一方で、ワクチンと同じように、たしかな効能と同時に副反応も出ている気がする。そのあたりについても、触れてみたい。

関係性の質の低下というDXの副反応

少し僕自身の印象論の部分もあるかもしれないが、たとえばこんな感じのことが起きている。

  • PTA活動の名物でもあった井戸端会議的なコミュニケーションが激減。PTA活動に関係ないよもやま話をする機会は皆無となり、PTAの会議は業務的・プロフェッショナルな雰囲気に

  • デジタルツールを使えて効率的な会議進行をできる人が役員になるべきという雰囲気が漂い始めた。結果として働く父親のPTA参加が極端に進み、なんと今年度はPTA役員の全員が男性になることに

  • 役員ですら学校に訪れる機会が激減。学校の先生と話す機会も減り、以前に比べると、学校側と保護者側との関係性の質が下がっているような印象

  • PTA活動についてのアンケートを取ったところ、「DXはいいけれど、デジタルになれていない主婦がついていけない」という不満の声も

DXによる効率化と引き換えに、地域のコミュニティ活動の価値の根幹ともいえる「あたたかさ」「地域の関係性づくり」といった効能が下がっているのだ。また、一部の人に対しての「包摂性」やダイバーシティを失う危険性もあるように感じる。

僕個人の感想としても、1年間活動をしてみて「予想していたような面倒臭さはほとんどなかったものの、一方で味気なかった」というのが正直な感想だ。もう少し生産性を落としてでも、もっと無駄話をしたかった気がする。

令和のPTA活動は、効率とあたたかさの両取りを!

断っておくと、僕はPTAのDX推進には賛成の立場だ。

ただ、どんな変化にもマイナスの側面はある。そして、変化の効用が高ければ高いほど、こういう副反応を無視してしまったり、変化を良しと思わない人を無視してしまいがちだ。こういうときに大切なのは、さまざまな意見・立場の人たちの声も拾って、どうすれば副反応を最小化しながら変化を進めていけるかを各PTAで考えることだと思う。

PTA活動には無駄が多く、DXによって効率すべき点はたくさんある。一方で、その無駄のなかに、PTA活動が本来持っている地域コミュニティの活動としての価値の本質が隠れていたりもする。効率化を進めるあまりに、それらを消し去ってしまったら、あまりにももったいないと思うのだ。

PTA活動に限らず、2022年度はリアルとオンラインのハイブリッドで様々な活動をする機会が増えると思う。特に組織やコミュニティでの活動では、DXによる効率化を推進しながらも、「あたたかさ」や「関係性の質」などの見えない価値も大切にして欲しいなぁと強く感じる。

以上、新年度からPTA活動などのコミュニティ活動にかかわる方々への勝手な申し送りでした。

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