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子どもの居場所がなぜ必要なのか?

私が子どもの居場所作りに関わる前に受けた講義があります。地域に子どもの居場所がなぜ必要なのかを論じた内容です。それをここにまとめておこうと思います。

逆境的体験『Adverse Childhood Experience』(略してACE)研究というものが行われたことがあります。

まず逆境的体験とは・・

逆境的小児期体験(ぎゃっきょうてきしょうにきたいけん、英語: Adverse Childhood Experiences、ACEs)とは、18歳未満に遭遇した心的外傷を引き起こす可能性のある出来事のこと[1]。単に「逆境的体験」と呼称することもある。(wikiより)

簡単に言うと、心的外傷(トラウマ)を引き起こす体験のことです。主に被虐待児ですね。

その研究がカリフォルニアで行われたことがあるのです。

どのような研究かと言うと・・

『Adverse Childhood Experience』(逆境的体験)研究
・調査対象:9508名のカリフォルニア州住民
・逆境的(つらい)体験
〇慢性的暴力
〇単発的暴力
〇慢性的性的搾取
〇単発的性的搾取
〇ネグレクト(養育怠慢)
〇養育者の精神病症状
〇養育者の拘禁
〇養育者の喪失
〇貧困 
これらをどれくらい経験し、その後どのような生活を送っているかの調査。

ACE (逆境的体験)の累積影響

○50%が少なくても一つのACEを体験している。
○1/4が少なくても2つのACE体験している。
○ 4つ以上のACE経験者は、一つも経験ない人比べて下記のものが4~12倍ハイリスクになっている。
・喫煙
・50人以上の性交相手
・性感染症患者
・低い自己健康感

これが大人になってからどのような弊害があるか?

ACE(逆境的体験)の非体験者(心的外傷(トラウマ)を引き起こす体験を経験していない人)と比べて・・

○身体の病気になる確率
・虚血性心臓病 2.2倍
・ガン 1.9倍
・卒中 2.4倍
・慢性呼吸器障害 3.9倍
・糖尿病 1.6倍
・骨折 1.6倍
・肝炎 2.4倍

にも増えます。

これは私の憶測ですが、虐待している家庭というのは初等教育で行う生活習慣などの教育が行われていないケースが多いのではないでしょうか?だから、食育は行われず、危険行為なども認識出来ず、実際に失敗したり身体を壊してからしか知識を得ることができないのではないですかね?

それ以外にも・・

○心の病になる確率
・14歳以下の薬物使用 1.8~3.7倍
・アルコール依存 1.7~2.6倍
・14歳以下の喫煙 1.7~2.1倍
・自殺未遂 2~5倍

これは容易に想像出来るのではないですかね?
自己肯定感やコミュニケーション能力が低くなってしまい、学校をはじめとした社会に居場所を形成出来ずに自暴自棄になってしまう。だから、薬物やアルコールなどに逃げてしまう。(おそらくですが周囲も似たような環境で薬物やアルコールなどに早くから手を出しやすいのではないでしょうか?)

家庭と子どもの発達にはどのような関係があるか?
○人間(世界)とはどんなものかを学ぶ
○世界の理解と問題解決のやり方を子どもは家庭にて学ぶ

何をどう学ぶか??
1、心理社会的発達理論
2、アタッチメント理論

の2つがある。

エリクソンの心理社会的発達段階論
・第一段階 乳児期(~18ヶ月)
〇授乳
〇親が信頼性と愛情をもって子どもの世話を行うことで、子どもに信頼という感覚が育つ
⇒信頼 vs 不信

・第二段階 幼児前期(2~3歳)
〇トイレトレーニング
〇子どもは、身体的技能と独立性について自分でコントロールできる感覚を育てる必要がある
⇒自律性 vs 恥・疑惑

・第三段階 幼児後期(3~5歳)
〇探索
〇子どもは自己のコントロールと周りの環境に影響を及ぼす力を主張し始める。周りをコントロールしようとしすぎると、周りからの不承認・不賛成となり、結果として罪悪感を感じる。
⇒自主性 vs 罪悪感

・第四段階 児童期(6~11歳)
〇就学
〇子どもは、新たな社会的、学業的課題に取り組む必要がある。
⇒勤勉性 vs 劣等感

このように段階を踏んで人間社会や問題解決の仕方を学んでいく

アタッチメント理論
アタッチメントとは、乳児においては、危険を感じた時、保護と情緒的サポートが得られると期待して、馴染みのある養育者へと近づいていくように働きかける、動機的、行動的システムである。

アタッチメント関係の発達

○健全な社会的、情緒的発達には、特に、自分の情緒を効率的に調整する方法を学ぶためには、乳児において少なくとも一人の主たる養育者と関係を築くことが必要である。
○子どもが自分について学ぶこと
⇒自分は愛情を受けたり可愛がってもらうに値する存在であると信じている。
⇒親といった自分にとって大切な人は自分を愛し、可愛がっていると考える。

乳幼児のアタッチメント型
○回避型⇒不安になっても母親を求めない。
○安定型⇒不安になったら母親を求め、不安が低減したら探索を始める。
○両価型⇒少しの不安で母親を求め、母に抱かれても不安が中々低減しない
○無秩序/無方向型⇒アタッチメント行動が組織だっていない
例:近づいていくが回れ右をする、近づいていくが止まって固まる、背中を向けて近づいていく

傷ついた子どもと関わるためにはどうするべきか?

逆境体験をして傷ついた子どもの特徴
○人間社会的発達の躓き
・人間不信
・自分を信頼できない
・罪悪感
・一生懸命頑張れないから劣っている
・自分は可愛がってもらえない
・大人は自分を好きじゃない

これらが生活上どのような困難を引き起こすか?
〇学習・勉強の困難さ
〇対人関係の困難さ
〇自己の不安定さ
〇非行

これらの特徴が見られる子どもの本当の姿はどういうものか?を考えると・・
〇自分に自信がない
〇自信がないことがバレないか心配している
〇能力がないことがバレないか心配している
〇誰も自分のことを好きじゃないと信じている
〇自分は生きている価値がないと信じている
〇本当の自分を知られたらみんなに嫌われると信じている
〇自分が何かしたいかなんてわからない
〇自分はどんな人間かなんてわからない
〇自分は他人に必ず批判されると信じている
〇自分は他人に必ず利用されると信じている
〇自分が周りを変えることはできないと信じている
⇒普通になりたくて、いつもドキドキ、オドオドしているビビリちゃん
⇒異常だと思われたくないから、虐待を受けてもいじめられても周囲の人にはニコニコ笑って何事もないかのように演じる!!

だから、表面上しか見ない人間には子どものSOSが届かない‼️

もし、そんな子ども(人)だと気づいたらどうするべきか?
〇まずは、安心できるようにする
〇相手の話をよく聞く
〇褒める
〇好きだと伝わるように接する
〇楽しい時間を共有する
〇子どもに潜在的な力があることを信じる

私は思いますが、自分の子どもですらどんな精神状態か把握出来ないと悩んでいる親御さんはいらっしゃいます。これがたまにしか見ない他人の子どもなら尚更だと思います。だから、どんな子に対しても周囲の大人が上記のような接し方が出来れば、多くの子どもは救われるのではないでしょうか・・

児童福祉の限界は?
福祉システムにかかる前とかかった後の差が大きい
→福祉システムにかかるということは、貧困だと生活保護になる(スティグマが発生してしまう)。虐待だと児童養護施設に入れられるといった感じで、今まで暮らしていた環境と一気に変わってしまう。

なので、地域でグレーゾーンのサポートが求められるのです‼️
だからこそ、地域ネットワークを活性化して、子どもの居場所を民間で作るような動きが必要なのです。

支援における課題は何か?
○本当に困っている人を救ってあげたいなら、余計な手は出さない
⇒出来るとき、出来る量で構わないので、助けてあげる。人は小さな親切が本当に心にしみるときがある。
・本当に困っている人は、助けを呼べないので、おせっかいなおばちゃんのように、自信をもって、困っているかもしれない子どもに手を差し伸べるべき!!
・断られても、しつこく何度でもアプローチする勇気を持つ

最後に講師の方がおっしゃっていた、子どもと接する時の注意点
〇あるがままに⇒無理をしてもすぐバレル
〇嘘はつかない⇒無理に褒めてもすぐバレル
〇反応か対応か意識する⇒貶されて言い返すのは反応!!(これでは同じ土俵に乗り、喧嘩になってしまう)考えてから行動するのが対応!!
〇生き死に関しては譲らない!!⇒無断外泊したとして、友人宅に泊まっているなら、怒らなくていい・・土手とかに野宿してたなら、事件に巻き込まれてたら対応できないのでしっかりと注意するべき!! 命の危険のあることは絶対にさせない!!
〇逆に命の危険のないことは大したことじゃないと寛容になるべし
〇兎に角子どもとの時間を楽しむニコニコ

この講義を受けた感想として・・
私も経験がありますが・・幼少期にトラウマをもってしまった人間はなかなか素直に行動できないのです。だからこそ、優しい目で寛容な心で接するべきなんだなと思います。そして、そういう態度で接してくれた人が一人でもいてくれたことは、その時に気づかなくても、必ずその人の人生の財産になります。その一人に自分がなれるように努力して生きていきたいと思いました・・

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