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第三話 ~効率を重視する夫婦~

このお話は、一人の女性が投資を理解しながら、ウォーレンバフェットの考えに触れ、自分なりの投資スタンスを確立していく物語(フィクション)です。

効率を重視する夫婦

かおるは46歳。大手メーカーに勤め、家では2人の子供を育てている。夫の真司も大手IT企業に勤めており、2人は共働き夫婦として忙しい日々を送っていた。効率性を何よりも重視し、時間もお金も無駄にしないことが2人の共通の価値観だった。

「私たちは、これで間違ってないよね?」
ある日、夕食を終えた後、かおるはふと思った疑問を夫に投げかけた。

「何の話?」
真司は少し驚いた様子で聞き返した。


「お金のことよ。私たち、子供の教育資金も老後の資金も全部効率よく運用してる。NISAも企業型DCも使って、S&P500のインデックス投資をやってるじゃない。でも、最近それが本当に正しいのか、ちょっと不安になることがあるの。」


真司は笑ってかおるを見つめた。
「今さら何を言ってるんだ?僕たちは手数料が低くて効率のいい投資をしてるんだから、無駄がないし、理想的だろ?」

確かに、かおるもそう思っていた。

YouTubeやインスタグラムで学んだ知識を駆使し、家計を管理してきた。子供たちの将来のため、そして自分たちの老後のために、効率よく資産を増やすことが最優先だと信じていた。


「でも…」
かおるは言葉を続けた。

「S&P500のインデックス投資は確かに効率がいいけど、米国債券や国内株、金や仮想通貨なんかも、最近よく聞くじゃない?そういうものをちゃんと理解できてるかどうか、自分でもよくわからないのよ。ただ、手数料が安いからって選んでるだけで、本当に良い選択をしてるかどうか、時々不安になるの。」


真司は少し考え込んでから言った。「確かに、僕たちは理解できる範囲でしか投資をしてないかもな。でも、情報があふれてる中で効率よく進めるのが一番安全だろ?誰かの言葉に流されないためにも、自分で判断できることが大切だ。」

その言葉に、かおるは納得する部分もあったが、完全に晴れないものがあった。

彼女は「効率」にとらわれるあまり、誰かが与えてくれる情報に依存している自分がいることに薄々気づいていた。手数料が安いという理由だけで選ぶのは合理的に思えたが、それが本当に「自分の投資」なのか、心のどこかで疑問を感じていたのだ。


「もっと自分の頭で考えて、投資判断をするべきかもしれない。でも、どうやって?」

かおるの心の中には、効率ばかりを重視する生活に対する違和感が少しずつ積もっていた。そんな彼女に、ふと母・節子の話が思い浮かんだ。


「そういえば、お母さんが言ってた『つながりにお金を使う』ってどういうことなんだろう?」

節子が昔から通っているお店で、お団子を買う理由は店員さんとのつながりだと話していた。かおるはその話を思い出しながら、母が見ている「お金の使い方」に興味を持ち始めた。


一方で、今の自分の投資判断には哲学がないことにも気づいていた。

YouTubeやインスタの情報に頼り、自分で考えることを避けてきた結果、いつしか「効率」と「手数料の安さ」だけが判断基準になってしまっていた。
「真司も私も、ただ効率だけを追い求めてきた。でも、それでいいのだろうか…?」


かおるは、今の自分のやり方に疑問を抱き始めていた。

「次回予告:かおるが抱える違和感が、母・節子との対話を通じてさらに深まっていく。そして、効率優先の生活が、実は大切なものを見失っていることに気づき始める。真司との会話の先に待っているものとは?」


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