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王様戦隊キングオージャー感想…圧倒的な新しさで原点に還った名作

先日、王様戦隊キングオージャーが最終回を迎えましたね。

一年間の締めとして、メッセージに溢れた最終回でした。
何より毎回本当に面白く、楽しませてもらった全50話、拍手を贈りたいですね。

挑戦的な異色作、かつ「特撮の原点」を描いていた

スーパー戦隊シリーズは宇宙戦隊キュウレンジャーからリアルタイム視聴を始め、キングオージャーで7年目になります。「ルパパト」のようなフォーマットから外れた作品もありつつ、キラメイジャーまでは戦隊のお約束に則った番組が続いていましたが、ゼンカイジャーからドンブラザーズ、キングオージャーとここ3作は既存の形式を壊しにかかっている、そんな印象を受けます。
キングオージャーはまずCGにより異世界を描いている、という舞台から大掛かりな作品でした。途中キョウリュウジャーとの共演回では現実社会にやって来ましたが、一年間ずっとファンタジーであり続けたのは凄かったと思います。最初の数話で、舞台をこの地球に落ちつけたキュウレンジャーと比べてしまいますね。

メンバーがこちらの世界に居る写真は違和感があります
そんなレベルで、完璧な異世界を描いていたんですね

そして「王様戦隊」でありますが全員がそれぞれの国の国王なので、基本的に「戦隊」ではないんですね。状況的に共闘しているだけで、チームではない。序盤は特に我田引水という訳ではないですが自国優先で、とても5人、又は6人で手を取り合って…という雰囲気ではありませんでした。
前作ドンブラザーズもでしたが、同じ組織に所属し統率の取れた5人組、という基本を外して来ている近年の戦隊に、現代的な時代性を感じます。それが「王様」であるがゆえに自然に見える、というのも肝でした。半世紀近い歴史があるスーパー戦隊ですが、ここで「今までなかった」が沢山出てきたキングオージャー、やはり凄い番組だったと思います。

そんな王様達が結束を余儀なくされるのが、第二部となる27話から。
宇蟲王ダグデドという桁外れの力を持つ敵が登場し、国同士でいがみ合っている場合では無くなるんですよね。ヒーロー物としては明確な脅威に立ち向かう、というシンプルな展開ながらそれが新章の打ち出しとメンバーの成長を兼ねた描き方になっているのが巧妙でした。
実際、私も視聴により熱が入り始めたのが第二部からです。

キングオージャーについて書いたのは意外にもこの記事のみですが、番組が終わりに近づくとビュー数が飛躍的に伸びて、その人気を実感しました。お読みくださった方、ありがとうございます。

これは個人的主観なのですが…
かつて昭和のウルトラシリーズで数々の名作を手掛けた脚本家の金城哲夫氏、沖縄出身であり反戦意識の強い方だった事で知られています。その金城氏が、宇宙からの侵略を描いた物語に込めた思いとして、
「宇宙人が攻めてくれば、地球人同士の争いは無くなるだろう」
という、平和への願いがあったんですね。

キングオージャーは、そんな金城哲夫氏の思想に通ずるものがある物語だなぁと思っており、特撮テレビ番組の原点を、令和の世に体現した作品だったと捉えられはしないでしょうか。

「個」を尊び、「死」を描いた壮大な物語

この番組、6人目の戦士ジェラミーがナレーションとして語り部を務めていたのですが、最終回のエピローグがとても印象的でした。

「無理にひとつになる必要はない。姿形、心、一つとして同じものはない。交わらないから面白い。
好きな所は受け入れて、嫌いな所はそっとしておく。違う者同士、共に生きればいい。
手を繋ぎ、力を合わせるのはいざという時だけでいい。」

「いざという時」をここまで力強く描いた作品ゆえに、このモノローグは感動的でした

まさにこの「王様戦隊キングオージャー」を見事に表現した言葉だと思います。と同時に、やはり世の中へのメッセージでもありますね。令和も6年、時代の移り変わりが王様戦隊という全ての人々を一つにする物語を生んだ、と考えられてとても見事なものだと感じました。

「めでたしめでたしを決して諦めない、永遠に続く物語を、君に託す。」

なんと美しい結びの言葉でしょうか。流石ジェラミー、と敬服いたしました…とさ。

個人的にやはり中央に赤が欲しいので、クワガタオージャーが
このフォームで戦ってくれたのが嬉しかったですね、最終決戦


ところで、終盤の凄まじい盛り上がり、その要因はやはりダグデドという敵の圧倒的な「手に負えない」感がキモだったと思っています。
本当に最終局面になるまで余裕の姿勢を崩さずに絶望感を与えてきた敵です、それが作品のスケール感にも繋がっていました。
ここに、特撮ヒーロー物の基本を思い出させる要素があります。
それは、
「ヒーローと悪の戦いは、命のやり取りである」
という事なんですね。

ヒーローが敗れれば、地球は制服されてしまう。最悪、人類は皆殺しにされてしまう。
だからこそ、ヒーローは命を懸けて平和を守る。
それが、応援する気持ちに繋がる。

ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊。
またそれ以外でも、ヒーロー物の根っこにはそういう「生き死に」に関わる必死さがあって然るべきです。近年、表現に対する目が厳しくなり「死」「殺」という文字だけでも禁忌になっています。ゆえにそれらを連想させるものも避けられる様になり、結果として戦いから切迫感が薄れている…と感じているんですね。

ですがキングオージャーは規格外の敵を描くことで直接的ではなくとも昔の作品のように「死」への恐怖を抱かせていたと思います。49話で脱出ポッドが止まった時のギラの叫びには、民の死を感じた絶望・悲壮感が溢れていましたし、王様戦隊の覚悟の裏には現世との別れの意識が滲んでいました。グローディとヒメノ&ジェラミーの対決も「命」「死」がテーマでしたね。
かつては当たり前だった、「負ければ死」の意識を久しぶりに感じた特撮作品、キャスト陣の迫真の演技もあり、これも視聴者の心を掴んだ理由ではないかと思っています。

壮大なスケールに相応しい最後のロボ戦
ここに辿り着いたのは、ダグデドというキャラの賜物でもあります

ウルトラマンブレーザーに綺麗な石田彰、キングオージャーに汚い石田彰、などと言って揶揄していたこの一年ですが、ダグデドが強すぎて石田さんのイメージまで凶悪なラスボスになってしまいそうです(笑)。子供にとっては「怖い声」になってしまったのではないでしょうか。

最後の止めは6人で。
「悲鳴をあげろ」が清廉な台詞に聞こえました


そんな感じで一年間、ギラ達の戦いを見届けさせていただきましたが素晴らしかった、の一言に尽きます。
私は割とどんな作品もドライな距離感で観ているので、終わったからといってロスを感じたりすることはないのですが、このキングオージャーはロスる人の気持ちもおおいに解ります。来週から新番組ですが、私も気持ちが切り替わるかどうか怪しいと思っていますから(笑)。

何より、面白いと思いながら円盤が欲しいとはならなかったのがドンブラザーズですが、今作は手元に置いておきたい欲が結構、あります。
購入するか否かは未定ですが、つまり心揺さぶられる作品だったことは間違いない、って事なんですね。
ともかく、スーパー戦隊の歴史に残る名作として語り継がれるのは確かでしょう、キングオージャー。

お疲れ様でした、王様戦隊。
6人の王様、全員が格好良かった!

it's all right,  it's all right
You're King!

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