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【イケハヤモチーフ小説】炎上した男


3日前、僕は炎上した。

それはそれは、見事な燃えっぷりであった。


きっかけは、SNSでの僕の発言だった。

当事者でもない人間達から謝罪を求められる。

その感覚はとても奇妙なものだった。


謝る理由はないが、僕は謝った。

何故だか、炎の勢いが増した。

すぐに謝ることを止めた。

何故だか、更に炎の勢いが増した。

僕はどうしたらいいのか分からなくなった。


日の明るいうちに外に出るのが怖くなって

夜も更けた頃、僕は街へと繰り出した。


こんな所に新しくバーができたのか。

雰囲気の良さそうな店を見つけて入った。


カウンターの隅に腰掛けると、ある男が隣に座った。

その男は僕に挨拶すると、ビールを一杯ご馳走してくれた。

彼の物腰柔らかい態度も手伝って、我々が打ち解けるのに時間はかからなかった。


飲み交わしているうちに
私の悩んでいる様子を彼に見抜かれてしまい、
SNSで炎上した事を話した。


ほうほう。おや、これはすごいですねえ。ふふふ。

彼は興味津々に、私の差し出したスマホを眺めていた。


そして、一通り燃え具合を眺め終えると、僕にこう言った。


でも、あなたには燃える力がありますよね。

周囲を燃やせる力といってもいい。

それは才能ですよ。

他者に働きかけることができるのですからね。

力の使い方をちょっと変えてあげればいいですよ。


彼の言葉には不思議な力があるようで、
ひとつひとつが僕の心に直接染み込んでいくようだった。


「ビールごちそうさまでした。」


僕は彼に
この力を世のために使う決意表明をして、
その事をSNSにも投稿した。


すると瞬く間に、周囲から勢いよく炎が上がっていく。

「これは・・・反撃の狼煙ですね。」

どうやらまた間違えてしまったようだが、

可笑しくて、僕たちは笑いあった。


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