古今叙事大和本紀 第三章 服部一族の秘密 2
静まる森の影に潜むように服部一族の集落は小さく存在していた。
村に充満している何とも比喩できない薫りは、多分ここで機を織る為の染粉の薫りだと岳は思った。
嗅ぎ慣れない匂いではあるが、どこか懐かしく思えるのは、田舎に住まう民達の息吹を肌で感じているからだと直観すると同時に、思わず涙が零れ落ちそうになった。
「ここが服部ね、意外としょぼい集落じゃないの…。」
何を期待していたのかは分からないが、天鈿女はどこかつまらなさそうに呟くと、それを窘めるように吉備津彦が言った。