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第七章の67◎妖艶な「ジャポニズム」

 もともと浮世絵は、浮世を描いた絵、風俗画として登場しているのです。
浮世とは、「江戸時代の粋で、きもちいい時代と生活そのもの」なのです。
浮世絵師には狩野派、土佐派出身の絵師が数多く見られます。そのため、室町時代から桃山時代の風俗画の影響が見受けられます。
 日本を代表する美術として、浮世絵は西洋に大きな影響を与えました。
そして、江戸時代の浮世絵は、1867年にフランス・パリで開催された万国博覧会への出品にはじまり、19世紀後半にフランスに発した印象派に多大な影響を及ぼし、日本の伝統芸術の一大ムーブメントが巻き起こりました。
 画家のモネやゴッホは、日本に憧れてやみませんでした。これがいわゆる「ジャポニズム」なのです。
広重ブルーに代表される、浮世絵の鮮やかな色使いや丁寧で繊細な描写と表現力、そして何より、描かれた題材が、富士山や歌舞伎役者、美女等のエネルギー溢れる「江戸時代の粋で、きもちいい時代と生活そのもの」だったのです。
日本では、浮世絵が価値ある美術品であると意識すらされなかった時代で、20世紀のはじめにかけては特に多くの浮世絵が海を渡ってしまいました。
このジャポニズムの流れは、19世紀半ばから20世紀初頭まで半世紀以上にわたって展開し、印象派などの西洋絵画や工芸品に大きく影響を及ぼしたのでした。
 富士山を描いた、葛飾北斎の「富嶽三十六景」や、歌川広重の「東海道五十三次」は今でも日本人にとって、心が落ち着き、とても親近感も強く、馴染みやすい作品となっています。
 最近また復活したようなのですが、私も子供の頃は、永谷園のお茶漬けのおまけについていた「東海道五十三次」のカードを集めていた事を思い出してしまいます。
 それらの作品は、海外での評価も高く、流出してしまったものも多いのですが、今なお日本の多くの美術館で本物の鮮やかな広重ブルーを鑑賞する事が出来るのです。
 特に、東京原宿にある「太田記念美術館」や両国にある「北斎美術館」は、浮世絵専門の美術館であり、お勧めのスポットなのです。
 最後に、「春画」についても触れておきましょう。
春画とは、男女の秘戯を描いた絵の事なのです。
古くは〈おそくず(偃息図)の絵〉〈おこえ(痴絵,烏滸絵)〉といい,〈枕絵〉〈枕草紙〉〈勝絵(かちえ)〉〈会本(えほん)〉〈艶本(えんぽん)〉〈秘画〉〈秘戯画〉〈ワじるし(印)〉〈笑い絵〉などとも言います。あからさまな秘戯の図ではなく,入浴の場面など女性の裸体を見せる好色的な絵は,別に〈あぶな絵〉と称して区別しているのだそうです。
《古今著聞集》にも〈ふるき上手どもの書きて候おそくづの絵〉と記すように、落書のようなものではなしに専門の画家による春画の歴史はかなり古く、中世に入れば《小柴垣草紙(こしばがきぞうし)》(13世紀),《稚児草紙》(14世紀,鎌倉末期)など絵巻物の傑作を生んでいるのです。
 最近では、再び春画が見直されて来ましたが、卑猥でリアルな描写の為に猥褻罪にあたるという判断もあり、日本では物議を起こしていますが、イギリスなどの海外や国内でも女性層に高い評価を受けており、春画に対する今後の扱いが注目されて来ています。
 単なる猥褻画では無く、江戸時代の粋な生活スタイルや、おおらかな日本人の風情が感じられる芸術品としての美を感じさせてくれるのです。

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