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#俳句

十七音の視線のひろがり 山岸由佳『丈夫な紙』(素粒社)一句鑑賞

十七音の視線のひろがり 山岸由佳『丈夫な紙』(素粒社)一句鑑賞

 今年の初夏に京都でひとに薦めてもらって、山岸由佳という俳人の句集『丈夫な紙』(素粒社)を読んだ。歌集とくらべると句集を読む機会はすくないので、俳句という形式が有する表現そのものへの発見や気づきばかりに意識が向いて、まだ振り回されている感じがする。
 たとえば後半の「鳩のゆめ」という章のなかで「春日部さくら霊園八句」という詞書が置かれたうちの二句目に、こんな句がある。

 この句に私は不思議なほど

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