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satomigoro
単身でのお正月
上京中の大学生が帰省していたかのような年越しを実家で過ごして、3賀日もそこそこに東京へ戻った。とても1人で気楽に正月を過ごすような気分には、なれなかった。早く帰って仕事でも始めよう。2LDKのメゾネット住宅は、二階の作業部屋以外は徐々に生活感が薄れていった。時折、お隣さんの赤ちゃんが泣く声が聞こえる。この間まではこちらの部屋の方がさぞ五月蝿かったことであろう。隣の泣き声———隣人トラブルというのは、ある程度お互いの境遇を分かり合った同士ではあまり起こらないもので、あぁ〇〇ちゃん寝れないのかな、大変だな、というくらい。この家に引っ越してきたとき、お隣の奥さんは臨月を迎えていて、これから迫りくる夜泣きとその近所迷惑に恐々としていたようで、こちらはこちらで自宅仕事で夜な夜な騒音を出してしまう申し訳なさがあり…最初に菓子折り持参でそんな会話を交わしてからというもの、お互いを許しあう空気がうまく醸されていた。 ある日、お隣の旦那さんが日本酒を持ってうちへ訪ねてきた。最近こちらの家から泣き声がしなくなったことが気になっていたようで、里帰りしていてしばらく戻らないという話をすると複雑な表情をしていた。久しぶりの来客。何を話したかはよく覚えていないが、子供の話はあまりしなかったような気がする。奥さんが差し入れてくれたおつまみが家庭の味がして妙に懐かしかった。一升瓶があっという間に底をついた。
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