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エッセイ④

幻覚

 立って寝て3回、椅子に座って寝て3回。アスファルトに頭ぶつけてます(笑)。眠ったまま倒れりゃいいのにさぁ、倒れる寸前に目が開くんだよね。でも身体の方は眠ったまま。金縛りってヤツ?
嫌だよー。コンクリが顔面に近付いて来るのに、防ぐ事も目を閉じる事も出来ずにゴチン!となる。
コッチから急接近してるんだけどさ(笑)。
1度、警備に起こされた時になって、立ち上がろうとするんだけど、思う様に身体が動かなくて、スッキリさせようと石の椅子に3回頭を軽くぶつけた事が…。二人の警備員は引いてた。二人共、一歩下がったから(笑)。
立ちから側頭部を打った時が、1番スピードに乗っていた。
立ち上がって歩いていても、何かフワフワして現実感が無くて(俺、死んだ!?幽体離脱に!? 戻ったら血だらけで俺の死体が転がってんじゃねぇの…)本気(マジ)でそう思って戻った。人間の頭って、結構堅いね(笑)。
 倒れた時じゃないけど、起きようとして足を伸ばしたまま上体だけ起こした時…
(あれ、どうやって立つんだっけ…)1度だけ、立ち方を忘れた…(笑)
 常に悩まされていたのが幻聴。雨が続いた時、突然始まった。
コッコッコッとハイヒールの音が後ろから近付いて、通り過ぎずに消える。(誰も通らない…て事は、これが幻聴ってヤツか)
 冷静に判断した訳じゃない。なんもかも面倒臭くて適当にそう決めた。
 ただ、それがズゥーッと繰り返されるのにはまいった。何をしていても聞こえてくる。頭の中じゃ耳をふさいでも意味無いからねぇ…。
 振り向いたらどうなるんだろうと気になりだした。振り向いても音は後ろから聞こえてくるのか、前から聞こえてくるのか…。
 1度試したら、自分の場合は「変な奴がいた」でした。音がしている時、必ずいるのかどうかはわかりません。
 顔も体も丸々としていて、ピンクのシャツに赤いネクタイ、体の割には異常に細い足には緑のズボンにハイヒールという男。コッコッコッと近付いては歪んで回転しながら消える。ただそれを繰り返すだけ。
 現実感も無ければ、恐怖心も無い。
 幻覚初体験がこれじゃ、面白くも無い。
 ただ、徐々に自分に近付いているのに気が付いて、見るのをやめた。以来、1度も振り向いていない。
 もう一つの幻聴の方が厄介だった。
左右どちらかの肘の辺りから聞こえてくる話声。この声の大きさが絶妙で、何を言っているのかはわからない、集中すればわかりそう、のギリギリ。
 イライラするし、気になって仕方ない。
 何て言っているのか聞きたい気持ちを必死に押さえつけた。
 頭にあったのは、交通誘導していた時の事。朝、集合場所に行く時、前を歩いていた人物。指を差しながらブツブツと何か言っている。
「ヤバイかも」
と、距離をとって歩いていたら、自分が曲がる所で曲がる。自分が入る所へ入って行く。
「違う会社だろ…」と思っていたら…制服一緒じゃん!
仕事の後、そいつが着いた作業員さんに聞いたら、「仕事はちゃんとやってたよ。俺たちに見えない誰かとしゃべってたけど(笑)。」

 新橋で寝ていた時、もう一人と出会った。
 大声で怒鳴る様にひとりでしゃべっていた。
 切っ掛けがあって話す様になったが、マトモな人でした。
「炊き出しくればいいじゃん」
と言ったら肩越しに後ろを差して
「こいつらが出て来たら皆さんに迷惑かけるから」
マトモなのか、マトモじゃないのか(笑)。 
この人は後に雰囲気が変わって、独り言を言わなくなったけど…俺は、前の方が好きだったなあ…。
この二人は話せばマトモな方だったけど、この二人の事があるから耐えられた。
 幻聴はホテルで爆睡出来たら消えた。危なかった…。
 TVで観た白黒の昔の不眠の実験映像では、3日位でおかしくなって幻覚を見ている様で、顔付も変わり、1週間で死んじゃったんじゃなかったっけ…。
 世の中には食わなくてもいい人、寝なくても大丈夫な人もいるらしいけど…出来る限り寝ましょう。目をつむってボケーッとしているだけで、大分違いますよ。

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