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エッセイ⑦

出会った人達

「ENJOY」

路上生活の第4の困難が、話相手がいないという事なんですね。
無口な者でも、一人ってのは嫌なもんです。寂しいじゃん。
聞こえる話声に耳を傾けてニコニコしてるのと、ひとりポツンとしてるのじゃ、無口でも同じじゃないでしょ。
 ただ、気を付けて欲しい事が一つ。
話を聞きたいんじゃなくて、話をしたいって事。
 自分の話を聞いて欲しいんです。冒頭に書いたでしょ。「僕は…私は」って。
話上手は聞き上手っていうからね。聞き役に徹してください。
 だいたい人ってのは、ホームレスがホームレスになる前に言っていた・考えていた程度の事しか言えないから,所謂、正論てヤツね。正しくないけどね(笑)。
通り一編の事しか言えねぇなら黙っとけ!と言いたいよね。耳にタコが出来る前からタコになってる。そんな事、いくら言ったって心には届かないよ。
 区役所も、自立支援センターも、弁護士も、行政書士も、牧師も…同じ事しか言えないなら、言うんじゃねえよ!
 自分は特殊だろうね。少なくとも一般的ではないよね。それでも、ホームレスの事は冷静に判断しているつもりだ。
 ホームレスになったのも、友達である漫画家に会う為だし、ホームレスになってからも何とか楽しもうとしているし、楽しみを見つけ出そうとしている。
 十代の時は暗かった。闇の中に居ても一生なら、光の中に居ても一生だ。同じ一生なら光の中で楽しんだ方がマシじゃん。
 そんな自分がシビレた一言を言った人がいる。
寝ている自分に大きな暖かい上着を着せ、自らマフラーを巻いてくれGパンとスニーカーまでくれた。
Gパンは足の丈はなんとかなったが、ウエストがでかすぎてベルトを買うまではけなかったが、長持ちしてくれた。スニーカーは30㎝!位あったので、足の大きい人にあげた。
赤いマフラーには「メルボルン・メンバー」とアルファベットで刺しゅうがあった。
 その白髪の白人さん、おそらくオーストラリアの人が最後に言ったのが
「ENJOY」(スペルあってる!?)イヤー、しびれた(^^♪ カッコイイ!
 後日その人が「おいしいから」と言って持って来てくれたのが、新橋駅ガード下の焼き鳥屋さんの詰め合わせ3人前。
おにぎりの炊き出しに行って「あ~ 肉食いてえ」と思わず言ってしまった(笑)ばかりの、ナイス・タイミング。
うまかったよー(^^)。
若い男女が一杯いて、手を振ってくれたんだよね。
大学の教授と教え子達って感じだった。
Thank you !  See you !!  …合ってんのか ⁉

これより前にもシビレた二人がいる。言葉はないんだけどね。
汐留でようやく寝る場所を確保!?した頃。
酎ハイのロング缶を二本持った若者が来て、一本を差し出す。20代前半と思われる白人の男性。
「飲まないから」と言っても、手を引っ込めない。日本語ダメかと
「ノー ドリンク! ノー アルコール!」
通じたとは思えないけど(笑)わかってくれたのか、手をあげて歩いて行った。
そこはT字路になっていて、右に行けば即ホテルがある。
(旅行者かな…)
と思って見ていたら、T字まで行ってから引き返して来る。
(?)
そばまで来ると一言
「スモーク!?」
簡単な単語をゆっくり言ってくれればわかります(笑)。
(日本でも煙って言う事あるけど、英語でもいうんだ)と、妙に感動しながら(笑)
「ノー スモーク」
残念ながら、この時は吸ってなかったんだよね…。
彼はとなりに座ると、紫煙をくゆらせながら一杯やりだした。
人生で最も英語をしゃべりたいと思った時間が過ぎていく。
6年も授業して全然話せるようにならない学校の英語教育を呪ったね。せめて、英語が好きになるようにしてくれてたら、勝手に勉強したのに…。
日本語をしゃべれない若き白人と
日本語しかしゃべれない白髪の黄色い猿
ふたりとも無言なのに、何故か心地いいんだよね。
立ち去る彼の後ろ姿を見ながら
(若いのに凄ぇなぁ)
と、シビレていました。
ふっと彼が座っていたところに目をやると…酎ハイ一本残ってる(笑)。
遠慮したとか思ったのかな…

酒と煙草でコミュニケーション

元々酒は嫌い。付き合いで少しは飲む様になったけど、B型肝炎やって馬鹿やって…以来一切飲んでない。酎ハイは、漫画「酎ハイレモン」で知って飲んでみたら、サイダー感覚で飲めるから、もっぱら酎ハイになった。
 当時は一般には殆ど知られていなくて、居酒屋で注文したら今でいうサワーが出てきた。炭酸なし。知らないなら知らないと言え!
ひとりで、あげる者もいない。喉が渇いている事もあって、ジュース感覚で飲めるかな、と、飲む事にしました。
チビチビやれば、死ぬ様な事にもならないだろうと…。
飲めなかったね。1/4~1/3位がやっと。当時よりまずかった。もったいないけど、残りは捨てた。
彼とは、この後何回か会った。おじぎしたりする様になったよ。
2回位、酎ハイと煙草をすすめられた(笑)。
それで、T字の左へ買いに行き、右へ帰るとわかった。
わざわざ寄ってくれてたんだね。感謝<m(__)m>

 誤解されない様に、煙草の事も書いておきましょう。
ヤメタんじゃなく、金が無くて、ヒタスラ我慢。
吸いたくなくなるまで、一年半かかった。その間イライラしっぱなしで、時折大きな声を出す事も…。
十四年吸わなかった。元々吸わない者より、やめた者の方が嫌煙家になるとか聞いた事あるから、もう吸わないで済むかと思っていたんだけど…重大な事を忘れてた…
ある時、10本以上入った箱をひろっちゃったんだよね…誰かに売って飯代にしようと、持っていた。
火が無いから吸えないからね。
で、売ろうとしたら…ライターくれました(笑)
火が手に入ったら…吸っちゃうでしょ(笑)
やめた者は煙草の匂いが嫌いになる…忘れてた重大な事…自分は生まれてから一度も匂いを感じた事がない(笑)。わからないんだから、嫌いになりようがない。
一本吸って、一年半の苦しみを無駄にした(笑)。
やめて再開すると…本数増えるんだよね。これは経験済。ヤバイ位吸っちゃって、自分で本数減らしたからね。
わかった事もある。
タバコを吸えないイライラは、吸えば治まる。
他のイライラも、吸えば治まる。
自律神経失調症の自分には、むしろ薬と思える。
元々薬として世界に広まった物だからね。
長寿世界一とかも、吸っている人多い印象だし、百歳越えるヨギが長寿の薬として吸っていると読んだ事もある。
健康にいいとされる食物にだって、発癌性はある。
最近はちょっとうるさすぎ…脱線(笑)。
彼はまだ吸ってるかなー。一度一緒に吸いたいね。

20歳いってるかどうかの白人男性。
通る度にいくらかのお金を渡してくれる。
70円~400円ちょいまで。額からして、何かを買った釣り銭だと思う。
寝ている時の700円も彼かもしれない。
汐留にいた2か月強で、5日間食えなかったことが、3、4回ある。彼がいなかったら、どうなっていたか…。
年からしても、決して楽な金ではなかったと思う。

10月が終わるちょっと前、台風が連発して雨が止まない事があった。寝れない、食えないで、新橋駅へと移動した。

12月、寝れる時間になるまでタバコを探して、2本の傘を杖に歩いていた。
日テレの脇を通った時、日テレの方から来た者とぶつかりそうになった。
「あ~」
顔を見て、声が出た。
彼は何も言わず、手に持った物を、俺の胸に当てた。
透明のビニールに入った物を見て、
「ありがとう! サンキュー」
そう言うのが精一杯で、とっとと歩いていく彼を見つめるしか出来なかった。
中を確認して全てが理解出来た。1円、5円、十円、50円、百円の硬貨が大量に入っている。
自分の為に取って置いてくれたんだ。台風もあったし、いなくなった自分を心配してくれたんだろう。どこかで見かけるとかして、それを持って来ようとしたところで、会ったんだ。でなければ、手に持ってる筈がない。
感動して、しばらくその場に立ち尽くした。
1円、5円、十円玉での買い物を笑顔で応じてくれたドンキさんにも感謝です<m(__)m>
彼とは日曜の新橋の炊き出しに並んでいるところで何回か会ってます。父親らしい人と一緒でした。
目が合うと互いに軽く会釈する程度だけれど、嬉しかったね。
英語がしゃべれたら、行っていろいろ話せたのにねぇ…。
あ~~、英語しゃべりてえ!

ゆっくり言って

東京五輪でホームレス一掃するんじゃないかって噂が、まことしやかに流れてます。
日本人より外国の人の方が優しいのにね。自分だけじゃなく、みんな言ってるよ。
問題は、日本人の差別意識と外面重視だと思うけどね…脱線ですね(笑)

出会った何人かを紹介しましょうか。
ホームレスじゃないよ。ホームレスは…紹介できない人とか紹介されると困る事情がある人ばかりだから(笑)。

「アイ ラブ ユー!」
突然、大きな声で言われたらどうします!?(笑)
フィリピン(直感!)の女性。キレイな女性(ひと)に言われたら…ビビった(笑)
(何!?)
と思ったら…
「ジーザス クライスト アイ ラブ ユー!」
わかりました(笑)簡単な英語で、わかりやすく伝えてくれました。
 彼女は念を押す様に、この二つを繰り返していたけど…誤解するほど、女に縁は無かったからね…モテ期なんて存在してねぇよ(笑)
千円くれました。ありがとうございます。<m(__)m>
わかっているとは思いますが…念の為、書いておきましょうね。
「イエスキリストは、あなたを愛しています」です…
これが、ホームレスになって初めて、イエスに触れた時ですね。

フィリピン人と思われる男性(若い!)は、日テレ大時計のベンチで休む自分に
「アー ユー ハングリー?」
「イエス。アイム ハングリー」
反射的に応えてました(笑)
簡単な英語で、単語をゆっくり言ってくれれば、わかるんですね。英語が苦手な日本人も、6年の授業やCMとかで結構単語知ってたりするから。
 昔、白人の女性がTVで日本語で日本人に尋ねたら「アイ キャント スピーク イングリッシュ」と言って逃げた、というエピソードを言ってたけど(笑)。
 彼は、SUBWAYの大きなサンドウイッチをくれました。
うまかったな~。量も満足出来たし…。
彼は、余ったとか、買いすぎた、とか、英語で言ってたね。もちろん推測ですけど(笑)、多分、合ってると思う。自信の根拠は無い(笑)。

 50代以上と思われる白人男性と小さなお嬢ちゃん。父子というよりジィジと孫に見えた二人。男性が英語で喋っているんだけど、俺に言っているのではなく、お嬢ちゃんに言っている様。
男性が自分に五百円くれたので
「ありがとうございます。大事に使わせてもらいます」と言ったら、満足そうにうなづいて、お嬢ちゃんに何か言っている。
お嬢ちゃんは男性を見てから、自分に五百円をくれました。
「ありがとうございます。大事に使わせてもらいます」同じ事を言ったら、お嬢ちゃんに何か言って去って行った…。どう考えても、男性は日本語そこそこは喋れるよね(笑)。お嬢ちゃんに何かを教えたかったんだろうね。
何かは全くわからないけど…だってさぁ、単語一つもわかんなかったんだもん(笑)
かなり後、代々木の通路チャペル2に行った時、旧約付きの聖書をくれた、マークさんというアメリカ人牧師さんが、この人に似てるなぁと思ったんだけど…訊けないよね(笑)自信も無い…。

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