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佐賀バルーナーズ〜B1で戦えることを証明するために〜 vol.3 鍵を握る95世代の躍進 前編

 昨シーズンB2優勝、B1昇格を果たし、B1初シーズンを迎えた佐賀バルーナーズ。ここまでの戦いは多くのバスケットファンに驚きを与えた。しかし、彼らの挑戦はまだ4分の1が終わったに過ぎない。佐賀バルナーズがさらなるインパクトを残し、B1で戦えることを証明するためには何が必要か。今回はダブドリ宮本が「鍵を握る存在」だと感じている95世代の3人にこれまでの振り返りとここからの戦いのポイントを聞いていく。(インタビュー:宮本將廣/写真:本永創太)

vol.1&vol.2の宮永雄太HCインタビューはこちら

宮永さんが思い描くバスケットの構図の中に、僕はまだ入れていない

宮本 「今シーズンの佐賀バルーナーズにおいて鍵を握るのは?」と問われたら、僕は「95世代の躍進」と答えます。そこで今回は、そんな95年世代の3人にお話を伺っていきたいと思います。まずはここまでの14試合を1人ずつ簡単に振り返ってもらえますか?
井上 個人的にはめっちゃ楽しいです。単純にB2よりもレベルが高くて、昨シーズンまでは打てていたキャッチアンドシュートが打てなくなったり、今まで見えていたところが見えないぐらいのプレッシャーをかけられたり、今までの守り方では守れなくなったり。試合をするたびに、自分が成長しなくちゃいけないなと感じて、自分もちょっとずつ成長できている実感があるので、本当に楽しいです。
宮本 ありがとうございます。岸田選手はどうですか?
岸田 B1で通用するのかっていう不安というか、イメージができないところは正直ありました。そんな中で14試合が終わって、自分たちがやることをしっかりとやって勝てた試合、もしくは勝てていただろう試合がたくさんあったので、自信を持つことができました。バイウィーク明けはやるべき仕事をこなして、もっともっとハードにプレーして、自分たちはできるんだっていうことをより証明していきたいと思っています。

シュート確率が上がってきた岸田選手に期待(撮影:本永創太)

宮本 ありがとうございます。葛原選手はどうですか?
葛原 チームとしては初めてのB1で、強豪の多い西地区で6勝8敗という成績を残せたことはよかったと思います。個人的には昨シーズンが全然ダメで、今シーズンこそはという気持ちで臨んだんですが、シュートの確率も良くないし、ディフェンスでも存在意義を示すことができていない。正直焦っていますけど、残りの46試合で巻き返していきたいなと思っています。
宮本 ありがとうございます。葛原選手はなかなかもどかしいところがあるだろうなと思っていました。富山と北海道で宮永さんと一緒にやっていて、今シーズンから佐賀に加入しましたが、チームの雰囲気や久々の宮永バスケはどうですか?
葛原 また宮永さんとやらせてもらう中で、チームの雰囲気はすごくいいですし、コミュニケーションが取りやすいです。ただ以前も宮永さんと一緒にやってはいましたけど、富山と北海道を合わせても僕は2年ちょっとなんですよね。
宮本 確かに。イメージ的に宮永バスケの申し子的な印象を持っていました。
葛原 佐賀でずっとやってきた選手に比べると、正直宮永さんと関わってきた時間は少ないですし、個人としても佐賀のバスケを全く体現できていない。今はそれがプレータイムに反映されています。宮永さんが思い描くバスケットの構図の中に、僕はまだ入れていないことは自分が一番よくわかっていて、見返すじゃないですけど、まずは練習から結果を出していかないといけないなっていうのは14試合を終えて、正直に思ったことですね。
宮本 危機感がありつつも、試合に出られていない理由もわかっているから、ひとつずつって感じですね。
葛原 そうですね。宮永さんとまた一緒にやることになって、しっかりとコミュニケーションをとれていることはすごくありがたいです。気づけたことが多くて、今までだったら「出してもらえないや」って自分が不貞腐れちゃっていたところもあったんだなって。そこは僕にとって大きな学びでした。
宮本 ちなみに言える範囲でいいんですけど、葛原選手はどういう風に声をかけてもらって佐賀に来ることを決めたんですか?
葛原 正直、昨シーズンの成績ではどこからも話は来ないだろうなって思っていました。そんな中で最後の最後に宮永さんから、「佐賀に来てやれる自信、存在意義を証明できる自信はあるのか?」と連絡をいただきました。すぐに「やらせてください!」とお返事して、佐賀に加入させていただきました。

持ち味のディフェンスに期待したい葛原選手(撮影:本永創太)

「チームで作ったシュートは絶対に打て」と言われている

宮本 岸田選手と井上選手はB2から宮永さんと一緒に作ってきたベースがあってのB1という流れ。そこに加わった葛原選手というコントラストは、今の佐賀バルーナーズを紐解いていくためにもすごく面白い論点だなと感じています。B2時代から作り上げてきた2人としては、宮永バスケのポイントはどの辺と捉えていて、B1でも継続しているところはどこだと捉えていますか?
岸田 やっぱりディフェンスですね。宮永さんとは3年目になりますけど、基本の部分は変わっていないです。その中で毎年求められる強度が上がっています。僕もB2とB1の差は強度にあると感じていて、今シーズンの最初にも「ディフェンスの強度を上げていこう」という話がありました。大智を含めて、ずっとB1でやっていた選手が入ってきて、練習の強度もすごく高くなったと思うし、試合ではそれ以上やらなきゃいけないんだと感じられたことは大きかったですね。もちろんシーズンに入って足りない部分も感じていますけど、おそらくみんながディフェンスに関しては、自分もできるっていうイメージが作れたんじゃないかと思います。
宮本 ここまでの14試合を振り返ると、岸田選手がステップアップをしたのは秋田戦のGAME2だと思います。言い方がストレートになりますが、おそらく秋田は岸田選手のところをオープンにしてもいいという判断で、ボールマンやキープレーヤーにプレッシャーをかけていました。そこで岸田選手が3ポイントを決め切ることができて、ディフェンスも自信を持ってプレーしていた印象を持ちました。
岸田 そうですね。それまでの試合で3ポイントを決めることができていなかったので、決めないとなって思っていました。宮永さんからは、「チームで作ったシュートは絶対に打て」と言われているので、秋田戦で決めることができて、自信を持てた。そこからは確率も上がってきたので、継続していきたいと思っています。
宮本 井上選手も最初に言っていましたけど、B2とB1だとクローズアウトのスピード感だったり、ローテーションの質が高くなると思います。秋田戦で手応えを掴めたのは、単純に慣れてきたっていう部分なんですか?
岸田 最初の方の試合も僕の中ではいいシュートが打てている感覚がありました。ただ入ったなって思ったシュートが外れていて、それがやっと入り始めたことで自信が持てるようになったって感じですね。
宮本 井上選手とは渋谷戦の後にちらっと話しましたけど、タイミングが取れてきたのはやっぱりそこですか?
井上 そうですね。渋谷戦より前の映像を見ると、普通にシュートを打てているように見えるんですけど、自分的には打てないって感覚でした。相手との間合いとかクローズアウトのスピードを体感して、「これがB1か」って感じましたね。そこからコーチと一緒により速いタイミングで、そしてコンテストされても打ち切ることを意識して練習をしたんです。渋谷戦でたまたま自分のタッチが良くて、このタイミングで打っても入るんだっていうことに気づけて、すごく手応えを得られました。本当に渋谷戦は僕の中で大きかったです。
宮本 なるほど。じゃあ、それ以降はある程度スムーズにアジャストできている?
井上 いや、最近はまたハマり始めたというか……。
岸田 ハマり始めたってなに(笑)。
一同 ハハハハハ。
井上 打ててはいるけど、逆にワイドオープンのところで余計な思考が出て来ちゃって、千葉戦も確率が上がらなかったんですよね。また一つ考えていることがあるので、バイウィークに色々試してみようかなって思っています。

彼のシュートが何度も佐賀を救ってきた(撮影:本永創太)

ディフェンス強度は、僕らも学ぶ必要性がある

宮本 強豪チームはチームとしてのクオリティがここから上がってくるということも事実で、そもそもB2とB1だとクオリティ自体にも差があります。さっきも話に出たけど、個のスピードもそうだし、駆け引きのところで言えば、キックアウトからコーナーでボールをもらって、ウイングにエクストラパスをした方がいいかなって思ってサイドパスを出したら、うまく誘き出されていただけでスティールされるとか。そういう見ているだけじゃわからないB2とB1の違いに関して、井上選手と岸田選手は何か感じたところはありましたか? 
岸田 琉球戦で違いを感じましたね。開幕戦だからっていうのもあったんですけど、ディフェンスローテーションがすごく速いなって。昨シーズンだったら、味方のドライブからキックアウト、そこからエクストラパスを1回出せば絶対に打てたなっていうシュートが、確実にコンテストショットになっていたんですよ。ノーマークで気持ちよく打たせてもらえるシーンがほとんどなかったですね。
井上 琉球さんには僕も同じことを感じました。あとは広島さんもうちの潰すべきポイントへの圧力がすごかったですね。レイナルド(ガルシア)のところにすごく寄っているから、僕らがオープンに見えるけど、全く気持ちいいシュートを打たせてもらえませんでした。潰すべきところをしっかりと潰しているけど、その後のワイドオープンも作らせないというディフェンス強度は、僕らも学ぶ必要性があると思ったし、そういうディフェンスをされたとしても、シュートを決め切らないといけない。もしくはその先ですよね。クローズアウトのアタックだったり、バックカット、ポンプフェイクからのステップサイドとか。そういう個のスキルも高いものを求められるなと感じました。
宮本 そういう意味では、比べるわけではなくてそれぞれの個性として、葛原選手はそういったオフェンス能力の自由度が高い選手だと僕は感じています。逆に自由度が高いということは、正しい判断をすることが難しいということでもあるけど、クローズアウトアタックでレイアップに持っていけるし、そこからさらにキックアウトとか。ワンドリのプルアップもスリーポイントもいろんな選択肢を持っているプレーヤーだと思っているんですけど……。
葛原 (笑)。
宮本 あ、そうではない(笑)?
一同 ハハハハハ。
葛原 いやいや、ありがとうございます。その辺は自分も自信を持っていたところなんですけど、ちょっとバスケット感覚がズレてきてしまっているというか……。そこを戻すのに時間がかかっている感じなんですよね。僕の持ち味は、まずディフェンス。そこは間違いないんですが、オフェンスはなんだろうって正直わからなくなってしまっていて……。2人は話していた通り、渋谷戦や秋田戦で掴めたものがあると思うんですけど、僕は全くチームの力になれていない。むしろ相手の考えとしては、僕をわざとオープンで打たせて、リバウントをとってファストブレイクに繋げていこうというターゲットになってしまっています。僕自身は2人と違って、シューターというポジションではないと自負しているところもあるし、チームとして必要なことをやりつつも、他の選手とは違いを見せなくてはいけない。身体の強さを活かしたアタックからあわよくばエンドワンを取っていく、みたいな形でチームのためにスコアをしていかないと……。そこはこのバイウィークでいろいろチャレンジして、大阪戦でいいイメージを掴めるように頑張っていきたいなと思っています。

北海道以来となる宮永バスケで葛原選手はどんな進化を見せるか(撮影:本永創太)

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