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[コラム] ハゲを笑うことは、戦場で死んだ仲間を笑うことと同じだ ー 男はハゲを笑えない ー

今、人気のお笑いコンビ・『トレンディエンジェル』をはじめ、男の【ハゲネタ】は、昔から笑いのテッパンであった。

テレビや、芸能界でなくとも、学校や職場で「あの先生はハゲている」「部長はズラだ」などと言い合った経験は、誰にでもあるだろう。

僕の中学の担任(当時30代半ば?)は、髪のトップスが薄かったが、夏休みが明けると、明らかに毛量が増えていた。
だから、『「先生、増毛したんですか?」って誰か聞けよ』と、勇気ある大役を、当時のクラスメートたちと、醜くも擦り付けあっていた。

そうやって、ハゲを無邪気に笑っていた男の子たちも、男になった時に、ふと気づくのだ

あの人たちは、俺たちの、なれの果ての姿ではないのかと。

明日は我が身なのではないかと。

それに気付いた時、男たちは、【心からハゲを笑えなくなる】。

自分とは無関係の見世物ではなく、自分の延長線上にあるものだと気付くからだ。

しかし、必ずしも、そうなるわけではないことが、逆に覚悟を鈍らせ、恐れを生む。

男にとって【ハゲを笑うこと】、それは、【戦場で死んでいった仲間たちを笑う】ことと同じだ。

ハゲる原因は、遺伝、生活環境、年齢の三要素がほとんどだと言う。
しかし、その最も大きな要因が、「遺伝」なのだと言われている。

つまり、‘‘ハゲる‘‘かどうかは、【運】であり、【運命】であり、【宿命】なのだ

ハリー・ポッターが、生まれながらにして英雄だったように、【生まれもってハゲることが、ほぼ確約されている人間】がこの世には少なからず存在するのだ。

確かに、戦場で兵士としての能力や、意識が低い者が戦死する確率は高いだろう。

しかし、名も無き一兵卒として、広い荒野を駆け回るような戦闘の中で、敵の砲弾が当たるか、当たらないか、死ぬか生きるかは、ほとんど運だ。

つまり、それと、同じである。

だから、20歳も超えてくると、心からハゲを笑えなくるのだ。
一通り、ハゲネタで笑った後、ふと我に返るのである。

「ハゲを笑うこと」は、「散っていった仲間たちを笑うこと」であり、さらに、それは、逃れようのない、【自分の行く末】かもしれないからだ。

そして、自問自答をはじめる。

自分は大丈夫なのか

いや、自分だけは逃れられるはずだ

あいつらは運が悪かったんだ

オッサンになったらハゲても良いか

では、何歳から許せるのか

原因は遺伝?

父親は大丈夫か

え?隔世遺伝?

じいちゃん達はどうか

外国人はハゲても格好良いではないか

いや、それは欧米人の話か

もう、なるようになる

最悪、現代は、育毛、増毛、植毛、高品質カツラ...いや、ウィッグがある

さらに、俺がハゲたとしても、その頃は、もっとテクノロジーが進歩していていて救ってくれるだろう

待てよ、一番、良くないのは、ストレスらしい

じゃあ、この、ハゲることを恐れること自体が、ストレスになってハゲるのではないか

いや、逆だ、芸能人も見られることで美しさや、若さを保つという

絶対、ハゲないという強い意識は、細胞を活性化させ、頭皮の若さを保ってくれるのではないか

もう、何が何だかわからねえ

そこで考えるのをやめる。

男なら、未来は誰のもとにも平等に降りかかる。
逝くか逝かないか運命でしかない。
俺だけが上手く、救われたい。

散ったら、それは、そいつの運命だ。
哀しそうにしたら、その運命の輪に、絡め取られた奴が、もっと惨めで、可哀想になる。

だから、おれ達は笑う。

そうして、男たちは、そういった暗黙の了解のもと、恐れを振り払うようにハゲを笑い合う

しかし、誰も心からは、笑えない

それを、お互いが分かったうえで笑い合う

稀に、それに気付けない男もいる。頭、いや、頭皮の中は、お花畑なのであろう。

しかし、大半の男は、理解し、覚悟を決めたうえで、笑い合う。

もしも、逝ったらどうしよう。

ハゲを笑える人間になろうか

最後まで抗おうか

ハゲても魅力的な男になろうか

諦めてしまうのか

まだ、うら若き男たちは

様々な散っていった先人たちの姿から学ぼうとする。

運命を受け入れ、ハゲをネタにして周囲から愛される者

ハゲを認められず、後頭部の髪をもってきて誤魔化そうとする者

髪の話題について、周りが触れられないような空気を醸し、緊張感を絶えさせない者

あるがままの姿で、水のように囚われずに生きる者

努力と金を惜しまず、復活に賭ける者

このように、先人たちも、様々な人間がおり、十人十色の頭皮、毛根、そして、生き様がある。

その先人たちに、未来の自分を重ね、いつか、来るやも知れぬ日に思いを馳せる。

そこまで考えて、今を生きる決心をする。

重く、のしかかるような、雨曇りの空を駆け抜け、振り払い、

陽射しのもとへ、走り抜けていくのだ。

その先に何があろうとも。

俺は、頭皮のマッサージを今日も続け、日々、生え際と、トップスをチェックするだけだ。

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