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イグ塩インクルーシブ対談後編【中巻】


後編の上巻では、音声アプリDabelのリードユーザーが、世界中の視覚障害者という事実を知った後、文化の違うリードユーザー達と、どのような関係性を持つか、そのもつれた糸をほぐすように、塩瀬さんとの対話が展開しました。今回は、その上巻の流れを受けて、いきなり、悩み相談が始まります。

さてさて、悩めるCEOタカさんこと井口尊仁氏は、救われるのか?


両股裂ける開発者の悩み!

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Shiose : 悩み相談みたいになってるよ、これ(笑)

Taka : いいっすねーー、お金払わなきゃ、いやほんとに(笑)。
結構シリアスに、日本のユーザーとアメリカのユーザーの使い方が全く違うのに困ってて。めっちゃ違うんすよ。めちゃめちゃ違ってて、それ両方統合するのってアプリ開発者として難しいですよ。

Shiose : そりゃそうやろうね(笑)

Taka : もう実は両股がさけてるんですよ。もう、僕は、完璧に。

Shiose : (笑)

Taka : 裂けちゃってまして。つまりその、簡単に言うと、アメリカの人はみんなオープントークです、はっきり言って。
ようするに「Want to talk」が常に全開ですね。だから入ったらまず「Want to talk」なんですよ。

Want to talkの説明
 ラウンジでは、誰でもスピーカーになることができる。その時に、英語バージョンでは「Want to talk」、日本語では「しゃべりたい」というボタンを押す。この対談が行われた後に、Dabelには「OPEN TALK(オープントーク)」という機能で、ホストがラウンジを立てる時に、全員がスピーカーに自動的になるラウンジにする選択肢が加わった。ラウンジに入る時に、入ったらスピーカーになるというお知らせがあり、それに同意するとラウンジに入れる。入った後に、リスナー(聞くだけ)に戻ることは可能。

しかも、一回、Want to talkで、スピーカーになるとどうなるかっていうと、しゃべろうが喋るまいが、(英語のユーザーの場合)オープントークがずっと続いてるんですよ。
で、日本の方はまず、デフォルトじゃないですよね、Want to talkが。だし、いきなりWant to talkされると嫌われるし、いきなりWant to talkしないんですよ。しかも、喋らなくなったら、またちゃんと丁寧に降りていただけるんですよ、リスナー側に。で、しゃべる時に、またWant to talkしてスピーカーになる、っていう行き来をちゃんとされる。で、それが悪いってこと言ってるわけじゃなくて、もともとそのコミュニケーションのモードとかスタイル違うので。


発言権をめぐる世界のコミュニケーション3パターン


例えば、(日本人ユーザーから)クレームが出てくるじゃないですか、その、いきなりWant to talkされると不快だ!やだ!って言われると、いやでもアメリカだと普通だしなぁ、と思うし。
その、なんやろ、その両方のコミュニケーションの育み方が全然違う中で、その両方をうまく融合するようなアプリを作らないといけないから、もうちょっと両股が裂けて大変です。

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Shiose:そういう意味で言うと、元々良いコミュニケーションのイメージが民族と文化によって違うので、それこそアメリカとかだと、どっちも主張して、いかに発話権を奪いあうか、といったところからスタートするじゃないですか。

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Taka : そうそうそう、そうなんですよ。

Shiose : で、中国だと一人がダーッと喋り切った後に、次の人がダーッと喋り切ってっていう、発話権交代の時系列変化がクリスプなんですよね。ガンッと行って来て。

Taka : それって、中国の三国志のドラマとか観てるとまさにそれですね。

Shiose : あ、そうそうそうそう。で日本は、発話権を譲り合うので。あの間にポトッと落ちてるんですよね(笑)。

Taka : 確かに確かに。火中の栗をひろう、みたいな言い方ありますもんね。 

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Shiose : お互い間が嫌なので、しかたなく受け取るっていう発話権の取り方をするから、その三つのモードが、特にそのコミュニケーションとしては大きく違う3つのモードだと思うので、後は要するに開発者としては、その3種類を足すんだか、掛け算するんだかっていう問題だと思うんで、それを拾った時にメリットがあれば、逆に言えば、日本型は捨ててしまうってのも、もちろん手だと思うし。それ、日本ユーザーからするとショックなことだと思いますけど。

Taka : (笑)
いや、理想としては、アメリカ型をもってきながらも、日本型の柔らかさとか、そのスムーズさを取り入れる、みたいな感じが今の僕のイメージ。

Shiose : そういう意味でいうと、デフォルト機能の自分のスタートの仕方をカスタマイズできればいいんじゃないかなと思う。機能として、さっきの「Want to talk」から入るってのと、「Want to talk」ができないんだったらやめてやらぁ!ってのがアメリカ型だとした時に、日本の場合は「Want to talk」ちょっと行こうと思うんだけど、なんかそれよりも強いのが来たら一歩引き下がるか、ってなるじゃないですか。

Taka : そうっすね、そうっすね。


コロナ禍の教育現場で露呈した日本の事情

Shiose : 日本って元々やっぱ学校の授業の作り方が、基本傍聴型なんすよね。授業も視聴するよりも傍聴の時間の方が大半を占めてるので。
今年すごいコロナ禍でオンラインがすごく増えたじゃないですか。4月ぐらいに学校の先生向けのオンラインワークショップをやった時に400人ぐらいアクセスしてはって、Zoomでレクチャーをしてたんですよね、オンラインのワークショップの作り方を。

で、その時の先生と教育関係者の人の質問で一番多かったのが、生徒がカメラをオンにしてくれませんと。
で、みんなカメラをオンにして積極的に授業に入ってくれないんですっていう相談だったんですけど、その400人中カメラオンだったの70人だったんで。言うてる先生が330人がカメラオフだったんですよね。

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Taka : なるほどなるほど面白いな。矛盾してるな。

Shiose : そうそう。それで、でしょ?って。なんで授業のときだけ生徒は顔出しを要求して、先生はしないのかって言うと、先生は先生で事情があるんですよね。
いいと思ってるけど家の中が映るから嫌だから奥さんから怒られるしって言うとも人もいれば、帰ってからアフターファイブでお化粧を落とした後に参加してるから、とかいろんな理由があると思うんですけど。

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Shiose : (笑)
その時に、カメラ、オンにする人もいれば、オフにする人もいて、マイクもミュートの人ももちろんいるしアクセスだけして、居留守を使って出席したことにする人がいてってグラデーションとかあるじゃないですか。関わり度があるじゃないですか。

Taka : ありますね。

Shiose : 本来それは、学校の授業の中にもそのグラデーションが元々あったんだと思うんですよね。それを教室にとじこめて居たことにしてただけだと思うんで。
そう考えると元々傍聴する人っていうのがたくさんいる中で日本ではコミュニケーションが成り立ってるから、多分このDabelにも傍聴として参加するってのは
最初の入り方としては多分いいんだと思うんですよね。

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Taka : そうっすね、そうっすね。そうなんですよね。いや、その通りで、かつ、日本で育まれた新機能を、今、実は作っていて、これ、結構グローバルにいけるんちゃうかなぁって思ったのが、あの、スルー機能ってやつで(笑)

Shiose : (笑)

Taka : ようするに、嫌な奴っているんですよ、一定。ちょっと圧の強い奴がね。
で、ブロックはちょっとキツイじゃないですか、する側にとっても。二度と会えなくなるんで。要するにブロックを戻さない限りは。
相手の「Want to talk」をスルーする機能っていうのを今準備していて。

Shiose : (笑)

Taka : 押せるんだけど相手に届いていないっていう状態が作れる、っていうね。
それは、日本で産まれた機能。

Shiose : 聞いてないフリ(笑)

Taka : そうそう、聞いてないフリができるっていう。

Akemi:(スルー機能って。。。(^_^;))


Akemi:今回の対談の最終章、下巻に続きます!

当日の音声はこちらで聞くことができます。

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