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窓が映す誰かの日常

喫茶店では窓際の席に座って、街ゆく人たちを見るのが好きだ。窓というスクリーンを通して、誰かが主人公の映画を見ている気分になれる。

眺めていて目が合うと気まずいので出来れば2階とかから見える所がいい。


最近気に入っている場所がある。

その店の窓際の席からは駅から繋がるデッキを眺められる。駅から出でくる人、駅へ向かう人が行き交う。まさにベストポジション。

デッキの中央の開けた空間には、公園の時計のような時計や、ベンチが配置されている。ベンチには代わるがわる人が座っていく。

今日はTikTokを撮っているのか高校生がスマホを置いてポーズをとったりしていた。3組くらいいたのだけど、学校でそういう課題でもでているのか?単に撮影スポットなのか?

他にも、子供連れの家族や腕を組んで歩くカップル、旦那の愚痴(かどうかは定かではない)を語り合う奥様方。みんながそれぞれの休日を過ごしている。それを作業しながら時々ぼーっと眺めて過ごす。

今日は作業は程々に進めて、夕飯を取るのとゆっくり本を読みたくて別のお店にも行った。そちらは初めてだったけど、2階に店舗があり、窓際の席もあった。とりあえずまた窓際の席に座ってみることにした。

窓の外は細い路地を挟んで向かいの建物が見える。建物の1階はレストランのようだ。しかも、おそらくフレンチのコース料理が提供されるしっかりしたお店で、テーブルに次々と美味しそうな料理が運ばれてきている。

僕が座った席からは、客の手元しか見えなかったのでどんな人かは分からないが、赤ワインが入ったグラスを片手に、楽しげなディナーが繰り広げられている様子が伺えた。家族で集まってなにかお祝い事だろうか。

そう言えば家族で揃ってお祝いに食事、なんてもうしばらくしていない。両親の還暦祝いを数年前にやったきりだ。

ほんの少し前まで、といっても僕や姉が成人する前だからもう15年くらい前。我が家でも家族揃って食事に行く事はあった。特に姉が好きなお店があり、姉の誕生日にはそのお店に行くのが定番となっていた。

そんな時期もあったなと、窓の外を眺めながらひとりご飯を食べる。食事を終えて持ってきた本を読みつつ、時々窓の外を眺める。

しばらくすると窓の向こうのレストランでは、ウェイターが客が去ったテーブルの上を片付け始めた。

ちょうど僕がこの店に来てから110分くらい経っていた。今日の映画はここで終わりのようだ。

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