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スキゾの魂が疼く。田舎へ逃げよう!(ベトナムの田舎に家を建てて暮らす・計画編)

以下は2024年1月から始まる物語。

ホーチミン市と行ったり来たりの時期が4-5年。その後ダラットに定住して12年くらいだろうか。
ダラットは標高が1,500mあって、クーラーも暖房も必要ない町だ。

ダラットの町並み

最初は日本食レストランどころか、インドやイタリア料理など、外国の風味は皆無だった。かろうじて、おっちゃんが一人でやってるバーと、怪しげな洋食を出すベトナム料理屋が2-3件。スーパーマーケットやファストフード、まともなカフェもなかった。
それが今では、大きなスーパーマーケット、ケンタッキーFCやロッテリア、通えるようなレストランやカフェも片手に余る程になった。
その分交通量は増え、中国や韓国からの直行便も就航し、週末や連休は観光客で賑わう街になった。

要するに発展したのだ。

発展するといろいろ便利にはなる。しかし、静かで自然豊かだった環境は、騒音と人工物へと変わっていく。

そんな中、この数ヶ月、山や森の中、不便で静かな環境に引っ越したい気分がフツフツと湧き出してきた。

とは言え、ことはそんなに簡単ではない。
一番大きな問題は、居住許可がとれるかどうかだ。
この国では、外国人は特に、居住地区の警察からの居住許可が簡単には貰えない。法律がどうなっているのかは未だによくわからないが、警察としても分けの分からない、言葉も通じないやつが管轄エリアに入ってくると何かと面倒なので、許可を出さないケースが多いようだ。

次に、物件。
田舎に住みたいなどという外国人は少ないので、外国人向け住宅が見つかるかどうか。
一人暮らしなので、大きな家は不要だ。しかし、家族単位で行動するのが基本の国では、なかなか手頃な物件に出くわさない。
もちろん掘っ建て小屋でも一向にかまわないのだが、そうなるとますます外国人が住む環境ではないと判断されるらしく、居住許可のハードルが高くなるのだ。

■まずは情報から。

うだうだと思い悩んでいてもしょうがないので、情報を集めてみることにした。

条件は

  1. 居住許可が取れること

  2. 小さな家(アパート)でキッチンあり

  3. 静かな環境

  4. バイクと車の駐車スペース

  5. 犬を飼えること

  6. 十分な速度のインターネット

  7. 市街地から離れた自然豊かな場所。車で1時間位でもOK。ただしあまり低地だと暑いので、できれば標高1,200mは欲しい。

  8. 予算は500万ドン/月程度。(2024年1月のレートで3万円程度)

といったところか。

まずはFacebookの住宅情報グループに書き込んでみる。
市内の情報にはいつもすぐに多くのリプライがつくのだが、田舎という条件だと反応がない。

次は独自のコネクションを活用して、知人、友人に片っ端から聞いていく。
そうしたら、いくつか反応があった。

一つは、町から40kmくらい、車で1時間くらいの場所。
知人がリラックスに行く家で誰も住んでいない。部屋が余っているので、そこを貸してもいいが、すぐ下に幹線が通っているので煩いかもしれない。時間があるとき2-3日泊まってみて決めればいい、と言われる。

知人宅。見晴らしは最高だ

もう一つはそこから車でさらに10分ほどの、別の知人夫婦が持つ蘭農家。農園横に空き地があるので、簡単な家を建ててはどうか、と言う。

早速時間を作って知人宅に泊まりに行き、農園横の空き地も見分に行く。

向こうの森との間に川が流れている

この空き地がかなりいい。川沿いで、川向うの丘は林になっている。前はコーヒー畑で横は蘭農園。コーヒー畑の向こうは役所や店が並ぶが、そこからの騒音がない限り、静かな環境は間違いない。
雨季に川があふれることがまれにあるらしいので、家を建てるなら少し高くする必要がありそうだ。

土地は不定三角形だが、40平米くらいあるし、2階建てにして川側にテラスをつくってはどうか、と勧められる。雨季にはテラスから釣りができそうだ。
標高は1,400mくらいだろうか。2,300m弱のBe Duop山とその周辺で構成される国立公園のすぐ近くだ。山間いなので、一番寒いときは5℃くらいになるらしい。
ダラットまで車で1時間強、海辺のリゾート地ニャチャンまで2時間程度という立地だ。月に1-2度、どちらかの町に1-2泊で出かけ、レストランやカフェを満喫して、スーパーで買い出しするにも手頃な距離と言える。
なにより隣に日本語がわかる知り合いが住んでいるというのが心強い。

そこを第一候補にして、さっそく地元の警察に問い合わせてもらう。担当者レベルでは好感触だが、その人では決められす、一番偉い人の最終判断待ちとなった。

町に戻る道すがら、小さな動物園に寄って昼食にする。この動物園はオーストラリア人がオーナーなので、息子に会って、近所に物件があったら教えてほしいと頼む。
その後さらに途中の、保護犬ボランティアの施設に寄る。犬が160匹ほどいるそうで、世話を手伝うなら無料で住んでいいと言われる。かなりいい感じの小屋があって、そこを使っていいとのことだが、犬の吠え声でずっと静かというわけにはいかないようだ。
将来、裏山に犬を移して、住まいの周りは静かにするそうだが、いつになるかはわからない。でも、見晴らしはいいし、周りは山と畑で、犬以外は静かな環境、なによりシンプルな小屋がとてもいい。

犬が静かならなあ….

ここを第二候補として、ここも地元の警察に当たってもらうことにした。

数日経っても第一候補の警察からは音沙汰がないので、諦めかけていたら、なんとOKとの連絡が入った。これで場所は決定だ。他のところに場所が見つかった旨を連絡した。

ここで一つ懸念材料が出てきた。
この国では農地には作業用の小屋しか建てられず、そこに人が住むことはできない。第一候補地は農地ではないのか?
大家さんに確認したら、農地だが、自分たちの家も農地に建てているし、木造などの簡単な家なら問題ない。許可もわりと簡単に取れる。との情報を得る。
農地に建てる家の解釈は、場所によってかなり違いがあるようだ。

■家を建てる準備

◯どんな家にしようかな

第一候補地は単なる空き地なので、自費で家を建てなければならない。とはいえ、シンプルな木造なら1ヶ月程度で経つし、費用も50-60万円くらいとのこと。家賃は格安という好条件なので、数年住めば借家にすむより安上がりになる。
将来引っ越すときは、家は買い取ってくれると言うのだが、それはあまりに悪いので、無料で全部置いていくと宣言した。

大きな家は不要なのだが、2階のテラスと1階外のウッドデッキは欲しい。2階が大きいと掃除が大変だが、将来明け渡すことを考えるとある程度大きさも確保して、家具の作り付けは最低限度にしておきたいと思う。キッチンやトイレ、シャワールームは作り付けるしかないが、他の家具は自由に動かせるようにしておきたい。

ドローイングアプリで平面図を描く。一番楽しい作業だが、土地が不定形三角形なので、家具の配置が難しい。
家具類は基本的に今使っているものを運び込む予定なので、実寸を測って、パズルのように組み合わせを考える。3案ほど考えたが、下記の案が一番良さそうだ。
ただ、素人図面なので壁の厚さや柱の位置などがわからない。原案を専門家に見せて設計図面を描いて貰い、確実に家具が配置できるようにする必要がある。

一番良さそうな案1F

◯建築家に相談する

友達に若い建築家を紹介してもらった。
年寄はレンガのちゃんとした家を作ろうとするし、アイデアが古い可能性が高い。小屋みたいなテイストは若い人に任せたほうがいいのだ。

まずこちらの考えを伝え、手描きスケッチを見せる。家の家具類は持っていくつもりなので、サイズを実測してもらった。

建築家の名前はTin君。
彼の話によると、鉄骨を使わず、全部木造がいいとのこと。また、コンテナハウスは費用は抑えられるが、今回は土地が不定形なので無駄が出るから見合わせたほうがいい、とのこと。
費用は概算で最低でも320,000,000ドン(2024年1月のレートで200万円程度)くらい。ん?聞いてたのと随分違うが、と、大家さんなどに確認したが、どうやら私の勘違いっぽい。まあ、その価格でも出せない金額ではないし、5-6年住めば十分に元は取れる。
建築期間は1ヶ月くらいだというので、遅くても4月上旬には完成する見通しだ。
彼は図面だけでも、図面プラス管理でも、丸受けでもいいというので、もしもっと安い施工業者がいるのなら、そちらに頼む選択肢も残っている。
できれば、ということで、日本風バスタブ(小さくても深いやつ)を頼んでみた。お湯の体積を考えてヒーターの容量を決めれば、作れそうだ。

第二候補だった保護犬ボランティアの施設で犬舎を新たに作りたいというので、現場に行く時寄って、そちらの設計も頼むかどうか保護犬ボランティアの施設のおばちゃんとの相談も依頼した。
こっちのプロジェクトはスピンオフという形にして、別途noteを立ち上げようと思う。こっちは寄付も募りたいしね。

◯暖房はどうする

ダラットでは暖房が必要なのは年間で10日くらいだし、最低気温は明け方あたりで6-7℃なので普通の家には暖房器具がない。あっても、簡単な電気ヒーターがほとんどだ。
Da Chaisはダラットより寒く5℃くらいまで下がるそうだが、氷点下になることはないし、冬でも寒いのは夜間だけだ。
でも電気ストーブではつまらない。だから前に改装した家には暖炉を作ったのだが、今回は薪ストーブにしたいと思っている。

インターネットを駆使していろいろ調べてみると、暖炉も含め薪ストーブは不完全燃焼で発生する一酸化炭素が危険で、中毒死の可能性があるらしい。
暖炉使ってた時は気にしてなかったが、家の気密性も高くないしあまり深刻にならなくても良さそうだ。
とは言え煙に巻かれて死にたくはないので、いろいろと考えてみる。

  1. 外気注入式にする。

  2. 次燃焼式にする。

  3. 一酸化炭素警報機を付ける。

これでいいのではないかと思う。さらに
4. 砂電池を組み合わせる。
ができないだろうか。

参考にする薪ストーブは、ほとんどが調理器具を兼ねている。ストーブで調理はしないので、上部の調理部分に砂電池を設置して、火が消えてもしばらく温かい、みたいなことができないかと考えている。

ホーチミン市には調理用のスモーカーなどを作ってるところがあるようだ。幅60cm、高さ80cm、重量190kgの薪ストーブもあるが、外気注入ではないし、2次燃焼システムになっているのかどうかもわからない。価格も35,000,000ドン(2024年1月のレートで21万円程度)と結構高い。
Tin君に相談して図面を描いてもらい、オーダーすれば、希望のストーブも作ってくれるとは思うが、まずは町の鉄屋さんに相談だろうか。

Figmaで構造を描いてみる

結局、私が紙で模型を作ってTin君に見せることになった。さて、うまくできるかな?

◯建築家が図面を描いてくれる

現場を見に行く前に、最初のラフ案が送られてきた。
概ねいい感じが、いくつか直したいところがある。例えば、1階にある木造の壁は不要だ。なるべく制約がない空間にしておけば、後からの模様替えが簡単になる。目隠しや仕切りが必要なら、可動式のパーテーションで対処したい。
窓も大きく、数も多くしたい。

最初のパース

ラフ図面とパースをデザインソフト(Figma)に取り込んで、こちらの希望を書き足して送った。

◯実測に行った

Tin君を連れて、現場の実測に行った。
途中で車からオイルが漏れているのに気づき、大慌てで沿線の田舎の修理屋に駆け込む。オイルはエンジンからではなくハンドル系だったので、傷ついたゴム管を交換して終了。事なきを得る。

Tin君と大家さんを引き合わせ、現場を実測してもらう。大家さんによればTin君ってけっこう有名な建築家らしい。
実測の結果、2階のテラスは3-4m張り出せることがわかった。これならテラスでゆっくり朝のコーヒーが楽しめる。
1週間くらいで改めて図面を描いてくれるそうなので、後はお任せとなる。

◯パースと平面図が送られてきた

パース。いい感じだ。

パース2枚と4方向からのサイズ入りのスケッチおよび平面図2枚、屋根伏せ図が、期日通りに送られてきた。
期日通りに物事が進むことが珍しい国なので、これは凄い。実際の建設もまともに進みそうで期待が持てる。

構造としては、やはりもっと窓が欲しい。
あとは棚やキッチンまわりのレイアウトなど、気になる部分をフィードバックした。
1週間後には、最終図面が出来上がる。

◯薪ストーブの模型を作った

画用紙とセロテープで

紙工作をして、模型を作った。
中の構造がわかるように、中を取り出せるようにしてあるので、形が崩れている。
これと適当な図面と、youtubeなどの参考動画や参考写真があれば構造が伝えられるだろうか?
3つのストーブのいいとこ取りで、自分で考えた代物だから、この通り作れたとしても機能するかどうかはわからない。その時、面白がって工夫してくれる鉄屋を見つけられればいいのだが。さて。

◯最終図面のハズだったんだけど

最終図面が送られて来たので、対面での打ち合わせをした。
薪ストーブの模型を渡して、構造を説明。こちらは家の完成後に鉄屋に発注することになった。

家の図面はほぼOKなのだが、洗濯機を置く位置がおかしい気がする。図面だと裏の小道の上に洗濯機を置くことになるのだ。
念の為、図面に描かれていなかった小道の位置を確認したら、やはり小道の上になっている。Tin君はどうやら、小道を少し移動させるつもりだったようだ。
小道の部分は、2階のテラスは張り出せるけど、1階にはなにも作れないし、小道の移動もできないという認識なのだが。どうも誤解がありそうなので、大家さんに連絡して確認する。
やはり小道は動かせない、という事実が判明し、最終図面は手直しが必要になってしまった。

◯いよいよ最終図面

小道を反映した最終図面が送られてきた。
外観と内観のパースも添えられていてわかりやすい。小道問題も解決したので、構造は決定となる。
棚の構造や水道の位置など細かい部分は後から詰めていくことになった。

2階の内観パース

おおまかな見積もりも届いた。
通常は、工事の進み具合や施工の様子を確認しながら、分割で支払う。しかし、いちいち銀行に行くのも面倒なので、一気に支払った。
その支払でTin君は材料を買い、ワーカーを手配する。いよいよ施工の始まりだ。

最終図面の詳細と見積もり詳細はこちら

施工編に続く



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